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こんな夢を観た

こんな夢を観た「通勤ハンバーグ」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/07/18

 新宿で乗り換えようとすると、どういうわけだか、必ず迷子になる。埼京線乗り場を探し求め、さっきから3時間も構内をうろついていた。

「あの、どなたか埼京線のホームがどこかご存じありませんかぁ」忙しそうに行き交う人に、そう声を掛けてみる。

「さあねえ、どこだったっけかなあ」

「見たことあるよ。あれは確か、10年ほど前の雪の日だったよ」

 なんてわかりにくい駅なんだろう。


 あてどもなくさまよい歩き、ようやくそれらしい電車に乗ることができた。

「ああ、よかった。これでやっと帰れる」わたしはほっと胸をなで下ろす。

 それにしても混んでいる。背の低いわたしは、爪先立って、吊革につかまらなくてはならない。けれど、押し合い、へし合い、たちまちバランスを崩してしまうのだ。その度にまたうーっと背伸びをして、吊革にぶら下がる。


 駅で停まるたび、降りた客の倍、またどっと乗り込んでくる。ただでさえいっぱいなのに、ぎゅうぎゅうと、押しくらまんじゅう状態である。

「埼京線って、いつも満員だからやだなぁ。しかも、こんなに蒸し暑いのに、冷房なしだなんて」思わず洩らしたわたしのつぶやきに、誰かが答える。

「埼京線? ああ、それなら乗る電車を間違えましたな。これは最凶線ですよ」

 ああ、やっぱり! どうりで最悪だと思った。

 

 あんまり揉みくちゃにされているものだから、頭の中は「手ごねハンバーグ」のことでいっぱいだ。

 ファミレスで食べた、ハンバーグのセットがおいしかったなぁ。ソースはデミグラで、ナイフで切り分けると、じわっと肉汁が染み出てくる。


 残念ながら、今度は自分がハンバーグになる運命らしい。今までは食べる側だったけれど、とうとう食べられる番か。

「あなた、あきらめちゃダメよ。意志を強く持つの。いい? 絶対にハンバーグになんかなっちゃダメだからねっ」そう励ます声がする。

「そうだぞ。頑張れっ。君の人生はハンバーグになることだったのか? いや、断じて違うぞっ!」

「ハンバーグになんてなるもんじゃない。食べられて、それっきりだぜ」

 身動き1つできない中、周囲の人々がわたしを応援してくれた。


 どうにか耐えようともがいたが、あっからもこっちからも揉まれ続けて、わたしはついにあきらめる。

 お尻の辺りからハンバーグになっていくのがわかる。やがて、腿やふくらはぎへと広がり、あっという間に全身が手ごねハンバーグになってしまうのだ。


 わたしは車内にいる人たちに向かって、最後の願いを請う。

「どうか、ファスト・フードなんかには卸さないで下さい。びっくりドンキーとか……せめて、ロイヤルホストへ……」

 今まで食べてきたハンバーグ達も、こんな気持ちだったのかなぁ。薄れゆく意識の中、わたしはぼんやりとそう考えていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 笑いが止まりません。ギャグセンスがすごいですね。 あしたの仕事中。 思い出し笑いをしないか、心配です(爆)。 [一言] 埼京線じゃなくて、最凶線とか(笑)。 めっちゃ笑いました。 ぼく…
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