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第04話

 そこは以前、門下生の結婚式で見た教会の礼拝堂に似ていた。

 ただ、違うのは十字架はなく、イエス像のかわりに、慈愛に満ちた雰囲気を醸し出している男性の像がある事だった。そう、まるで祭壇に立っている、エスターク司教と紹介された黒衣の男性に似ている。


「つまりは、こちら側の戦争のとばっちりを受けた。そう解釈していいんですか?」

「ま、まぁ。そう言えますね」


 アネットと名乗った黒衣の女性はやや引きつった表情で返答した。その横ではリーリスと呼ばれていた赤毛の少女が、うんうんと頷いている。

 彼女達の説明では、50年前に大陸の二つの大きな勢力が争っていたらしい。

 それは光と闇の大戦と呼ばれ、光の勢力が使った超兵器により闇の勢力は敗北を喫したが、その兵器の影響でこの世界の時空に歪みが生じ、稀に他世界の住人がこの世界に迷い込む事があるらしい。

 この世界の住人は、この世界そのものをアースと呼び、他世界からアースへ迷い込んだ者を異界のマレビトと呼ぶらしい。


「まぁ、でも運が良かったじゃない。光の側の領地にでも出てたら最悪の場合、命がなかったかも知れないし」

「なんでっ?!」


 リーリスの言葉に反射的に聞き返す。

 とばっちりでこの世界に飛ばされたというのに、なぜ命まで狙われなければならないのか?


「そりゃ、光の側の兵器のせいで、異界のマレビトが来るようになったからね。

 被害者なのは確かだけど、今の所は時空の歪みを直す術も、異界のマレビトを送り返す術もない。向こう側としちゃ体面が悪い訳よ。

 だから、建前上は異界のマレビトは、一時的にアースに迷いこんで来るだけで、時がくれば自然と元の世界に帰る。でも実際は」


 リーリスは親指で喉を掻っ切る仕草をする。

 その頭をアネットがこぶしで軽く叩く。


「止めなさいと言ってるでしょう。その仕草」

「いいじゃないですか、固い事言わなくとも。当の本人が気にしてないんだから」

「そういう問題じゃありませんっ」


 二人は言い争いになりそうになったが、祭壇を軽く叩く音で二人はぴたりと止まる。

 エスタークは相変わらず笑顔のままだが、二人は姿勢を正した。


「ま、まぁ、とにかく。少なくともこちら側で保護できて幸いでした」

「あの、こちら側というと闇の勢力という事ですか?」


 まどかの質問にアネットは嘆息した。


「ええ、そうです。といっても、もはや勢力と呼べるような状態じゃありませんけどね。

 散り々々に辺境に分かれ、それぞれが光の側を刺激しないように暮らしている状態ですね」

「そもそも光と闇ってどういう意味ですか?」

「そうですね。種族の違いもありますが、一番の違いは信仰でしょうね」

「信仰?」

「あなたの世界ではどうか分かりませんが、アースでは複数の神が存在し、ほとんどの人々が何かしらの神を崇めています。そして――」

「その代表的なものが太陽神アポミア、暗黒神アルミス様という訳よ」

「リーリス」


 咎めるようなアネットの口調だったが、リーリスは譲らなかった。


「やつらの崇める神に敬称なんて必要ないでしょ。正義の名の元にどれだけの事を行ってきたか」

「全てがそうではないはずよ」

「それは分かってますよ。アルミス様を崇める全ての人々が善人だなんて思い上がってませんし。

 それでも奴らが正義を名乗るのは気に入りませんね」


 アネットは仕方ないと嘆息し、続けた。


「少し話がそれましたね。先程複数の神が存在すると説明しましたがそのほとんどがアポミア様、あるいはアルミス様を主神とする従属神です。

 そして、アポミア様とその従属神を光の神々、アルミス様とその従属神を闇の神々と呼びます」


 まどかは少し考えた。


「つまりは、光の側とか光の勢力というのは光の神々の信者で、闇はその逆ですか?」


 エスタークが拍手をしていた。

 アネットも頷いて


「素晴らしい理解力ですわね。アースの事をほとんど知らないはずなのに。まさしくその通りです」


 エスタークが教壇から降りて来た。

 そして一礼をする。

 アネットが代弁する。


「改めて。ようこそ、異界のマレビトたるマドカ殿。アースの辺境が街、エスファのアルミス教会へ」


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