イダテンX-4
俺の名は下妻悟。人型トラック乗りだ。
人型トラック乗りは給料は高いが時間が掛からない仕事で、よく金食い虫と揶揄される。だが俺は誇りを持ってやっている。
ここ火星地下都市ネオアンダートーキョーでは街の高低差が激しすぎて、また高層建築が多すぎて普通のトラックでは配送しにくい。そこで皆様のお宅に荷物を届けるのは人型トラックの役割、ってわけさ。
人型トラックは扱いが難しい。だから免許取得も厳しいし、給料もいい。難点は運搬できる量がトラックより遥かに少ないって事かな。軽トラより少ない。
人型トラックには人型トラックにしか出来ないこともある。こんなふうに。
「ダウンフォースナウです! お届けに参りました!」
元気のいい声に応え、マンションの玄関ドアを開けた。目の前に運送会社の人は、いない。マンションの通路にしがみついている人型トラックがいた。呼び鈴を鳴らしたのは長い腕を使って、マニピュレーターの先でちょこんと押したのだろう。
「安形啓介さんのお宅でよろしいでしょうか?」
操縦席には若い男。人型トラックの運転手にしては、若い。
安形啓介は運転手の問いに肯定すると、玄関の棚に常備してあるスタンプ印鑑を取る。
人型トラックは片腕を後の荷台に伸ばし、大きめのダンボール箱と掴んで安形啓介の目の前に持ってくる。
「ザマゾンさんから、ですね。ここにハンコかサインください」
マニピュレーターから枝分かれした指示棒がサイン欄を指した。安形啓介は返事もせずにサインをし、ダンボール箱を受け取る。
運転手はサインを確認し、マニピュレーターを操作してダンボール箱に貼られた受領票を器用に剥ぎ、操縦席に持っていく。
「はい、ありがとうございました。それではまたご利用ください」
運転手がそう言うと、人型トラックはマンションの通路をはしごのように使って降りていった。
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