ピッケメルクーリオ
黒い人型が走る。片手に剣一本だけを携え、弾丸の嵐を避ける。右に左に上、ときには空中で軌道を変えて下、崖を蹴って斜め。
黒い、ピッケメルクーリオが走る先に大量の火器を乱射する白いロボット。両肩のチェインガン、両腕のマシンガン、腰両側の機銃、さらには背中に背負ったミサイルまで撃つが当てられない。六本もある脚をロクに動かさず、その場に立って。
『あたれ、当たれよ! こんなに撃ってるんだぞ!』
ある種の恐慌か、ヒステリックな声を上げて白いロボットのパイロットが喚く。対するピッケメルクーリオは無言。一切発言をせずに敵の独壇場であったはずの距離から大地を走る。
ピッケメルクーリオは敵の手前100mから大きく跳躍する。バーニアを全力噴射し、前へのベクトルを大きくする。
跳ぶ黒い影を追うように白いロボットは撃ち続けるが、照準よりもピッケメルクーリオは速い。白いロボットの上空を飛び越し、すぐさま反転して着地。剣を地面に刺し両足を擦らせブレーキング。白いロボットの旋回が90度になったところで再び駆け出し、右側から剣を振り駆け抜ける。白いロボットの右肩と右腕の武器がまとめて両断され、爆発する。
『うわぁ!』
勝負は決まった。トドメは消化試合だ。
「ふぅ」
飛矢剣介はボクスボットの筐体から出て伸びをした。
「やっぱこいつ使いやすいわ」
剣介が抱えているのはボクスボットの収納ボックス、ボットボックス。サイズは一番小さい小型だ。ボクスボット本体と武器が2,3個しか入らないが、彼のピッケメルクーリオには問題無い。初期装備では実体剣が一本しか付属していないのだ。カスタムした後ならともかく、機体の慣らしのために初期装備で遊ぶ分には全く問題無い。
「しかし今の相手、弱かったな。全く動かないから的を相手にしてるみたいだった」
彼はまだボクスボットを始めたばかりの少年だった。最初はプロメテウスハーツという、遠距離砲撃戦を得意とする高級機を使っていたが、彼には合わずに使いこなせないでいた。
「きっと、保治と戦う時の参考には、ならんだろうなぁ」
彼は友人である少年のピッケメルクーリオと自分のプロメテウスハーツを交換したのだ。初心者モデルだが、性能が尖っている。しかし剣介には、この上なく合っていた。
「よし、じゃあカスタムを試してみるか。機体名は、ソードメリクリウス。うんそうしよう。その方が俺のロボットって感じがする」
ボクスボット。最低ランクの機体でも一体五千円から。一プレイ200円、カスタムするなら機体と同程度の金を掛けるのが当たり前。
剣介のような中学生には、金の掛かる遊びである。
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