ゼバス・グラン
20120304
炎が燃えさかる大地、ファイアベルト。内部では人間はもとより全ての生物は活動できず、魔導装甲で覆った魔甲機か魔甲車のみでしか行動もままならない。
ファイアベルトに囲まれ、大地は痩せ水もわき出ない。そんな故国から出て行きたかった。プライドが高く無能な貴族王族により他国に助けを求めない。無為無策によって家族は皆死んで、未練も何もなくなった。だから、彼は軍の兵器である魔甲機を盗んだのだ。
運良くファイアベルト内での隠密行動を可能とする機体だったらしく、彼はなんとか追ってから見つかれないでいれた。しかし、自分は素人。どちらの方向に行けば他国に逃げられるか分からない。隠密性能を使えば、追っ手を倒せるんじゃないか? そんな甘い憶測が、彼に行動を決意させた。
まっすぐ、わざと音を出すように行動し、追っ手に位置を特定させる。後方には暗い青と緑の影が見える。ファイアベルト内では赤い炎によって視界を制限される。だから、大抵の魔甲機は暗目の色で自分の位置を知らせるようになっている。彼が乗るゼバス・クランは薄い橙色で、ファイアベルト内での視認性を著しく下げる、隠密系魔甲機ではもっともポピュラーな色だった。
彼は炎に紛れるように今まで進んでいた方向から右にずれ、音を立てずに炎の影に潜む。炎が吹き上げる大地に伏せ、炎が自分を隠す様に。
音が彼に、複数の魔甲機が接近することを教えている。ゼバス・グランは燃える大地を後方に這いずさる。近くにあった武器を持ってきたのはついでだったが、この場合に於いては正解だった。その武器は今、機体の下に隠している。
3機の魔甲機が、逃亡者が音を出すのを止めた当たりで立ち止まった。左右を確認するように見渡すが、彼のゼバスには気付かない。
彼は潜み、少しだけゼバスの腕を動かした。魔甲機の装甲が音を出すが、ファイアベルトの炎が空気を焼き大気を震わす音に紛れているのだ。
3機の先頭にいる青い魔甲機が前の方を武器で示す。ゼバスは見つからなかった。だからもう少しだけ前に行く。そんな所だろうかと彼は考えた。
3機の追っ手は3方向に別れ、走り出した。2機いる緑色の追っ手の内、片方がゼバスの直ぐ脇を走り抜けた。炎が噴き上がるのをゼバスで妨げられていることに、彼も緑色の追っ手も気付かなかった。
彼はゼバスを立ち上がらせ、武器を両手で抱え、静かに迅速に、緑色の追っ手を追い始めた。
今年の1月1日に制作した「ゼバス・グラン」です。
http://blog.livedoor.jp/tohka_1day1chara/archives/5641320.html
ファイアベルトという特殊な設定を用いているため、薄いオレンジ色というあり得ないカラーリングの迷彩機体です。
まぁ砂漠迷彩はベージュだし、炎の中でならオレンジ色もありでしょう。
追っ手を倒す所まで書いた方が良かったかな?