アエルジークン
20120226
20120226 アエルジークン
四角い、船が夜の海を滑っていた。魔法紋による浮力を得ているため、喫水線は浅く船底も平らな船だ。真っ当な船に魔法紋は使わない。だからこの船は真っ当な船ではない。正面から見れば普通の帆船に見える偽装はしてあるが、見た目だけだ。帆には大きく帝国の旗印である一七の首を持つ海竜が描かれている。甲板には武装の類は一切無く、側面に開けられた櫓用の穴が規則正しく二列に並んでいる。
七つの大海と中小三十の海、そしてその中にある大小合わせて千を超える領域を持つ大帝国の軍船だった。帝国の偽装コンテナ船。小さい集落なら一隻で占領が可能とされている。
東の空が白み始め、コンテナ船の鐘楼から目的となる島が見えた。規模としては中程度。集落も二〇〇人程度だろう。情報通り、この船だけで事足りる。
大砲も何もない、人員も一〇〇人そこそこのコンテナ船が何故島を占領できるのか。その意味は運んでいる物にある。
コンテナ船の側面に開いた穴から一斉に櫓が飛び出し、平らになった先端が着水する。魔法紋に魔力が供給され、櫓の助けもあってコンテナ船は急速に回頭し、船尾を島に向けた。
船尾に拵えられた扉が開いた。喫水線より僅かに上にある丁番を支点として船尾の板が海側に倒れたのだ。
船内から木製の全身鎧が現れる。鎧ではない。歩水人機、と呼ばれる木造の兵器だ。胴部に人が入れるようになっており、紐と歯車と滑車、そして魔力で動く。
戦闘の歩水人機がコンテナ船船尾の敷居をまたぎ、板の上に立つ。前方の島を確認し、右脚を前に。数歩歩いて、海の上に脚を降ろした。海水が跳ね、水音が立つ。だが沈まない。
歩水人機は浮くのだ。脚部に掘られた魔法紋により圧倒的な浮力を得、水の上を歩く。魔法紋は魚の骨や貝殻によって装飾、保護されており、人の手では削ることが出来ない。
先頭に続いて、合わせて17体の歩水人機が海上に歩みを進める。手には歩水人機の全長を越える長さの長槍をそれぞれに持ち、指示を待つ。
先頭の歩水人機が右手の槍の石突きを海に刺し、左手を頭上に挙げ、降ろす。合図を待っていた歩水人機が、先頭にいた歩水人機の脇を過ぎて島へと一斉に走り出した。地引き網によって水揚げされた雑魚の群れのように海面をしぶかせて侵略が始まった。
帝国が作り出した世界初の量産型歩水人機アエルジークン。その出撃は日の出と共に始まり、鶏が啼く前に終わった。
アエルジークンは2011年の5月2日に制作したロボットです。
この頃は「主人公機に対応する主要なザコまたはライバル機縛り」というものをやっており、その4機目となります。
対応する主人公機はまだブログでもロボットコレクションSSでも公開してませんが……まぁ大丈夫でしょう。
ザクと一緒ですよ。アレもザクの方がガンダムより先に出たし。
ところでコンテナ船は適当に設定しましたが、物凄く揺れそうですね。




