バレットボーイ
20120223
20120223 バレットボーイ
薄暗い部屋に、彼はいた。
殴られ、顔を痣だらけにし、据付の粗末な寝台に座りうなだれている。上半身は裸で、傷だらけである。
『はいはーい。おっちゃんたちー出番だよ-』
狭い部屋のドアが開き、廊下の灯りが部屋の中に入り、照らす。
『ドアからでて矢印に沿って急いでね-』
男の体が震える。これから始まる狂気の予感に、恐怖しているのだ。
男は床の矢印に従い、自分と同じような格好の男達と共に廊下を歩く。重力制御された廊下は冷たく、そして彼らを天上に据えられたレーザー・ガンが狙っている。カメラ越しの殺気と圧迫感に自然と男達の歩調は早くなり、冷え冷えとした金属が裸足の彼らから熱を奪う。
5分も歩かずに目的地に到着する。そこは空のパワードスーツがずらりと並ぶ格納庫だ。
先ほどと同じノリの軽い若い男の声だ。それがスピーカーから発せられる。
『はー、おっちゃんたちー、そのパワードスーツ来てコフィンに入ってねー。コフィンってのはそこにある丸いやつだからヨロシク』
マイク越しに笑い声が聞こえる。ノリの軽い男性の声とは違い、野卑だ。
誰かがのそのそとパワードスーツを着込み始めた。分かっているのだ。着なければ、どちらにせよ殺される。着て、戦果を上げれば解放されるかもしれない。一縷の望みに託したわけではなく、ただ逃避の結果で行動を始めたのだ。
誰かに続き、男達はパワードスーツを着、コフィンと呼ばれる丸い金属の空に入る。パワードスーツを着込んでも余裕で入れるほど大きく、先っぽは平たく成っている。爆発レンズの効果により平たい部分が飛び出し円錐形の貫通弾を形成する形だ。
男達はこれから撃ち出される。標的となった哀れな艦に向かい、哀れな男達は撃ち出される。カミカゼじみた非道の兵器、バレットボーイ。それが彼らの今。
『じゃ、ちゃっちゃと制圧してきてね。逃げたら爆破すっから』
死地に見送るのは安全な艦の中枢で彼らの戦果を掠め取る者。彼の指がボタンを押した。それで、男達は射出ゴー宇宙。
ある者は、目標にたどり付かない。
抵抗によって迎撃される。そのまま宇宙のゴミだ。だが、まだ幸せだ。
ある者は、目標に当たらない。
外殻に備えられたカメラが目標の船底を写す。
「ひっ!」
自分が当たらなかったことが分かってしまう。
「いやだ! 助けてくれ! いや殺してくれ!」
20分もすれば喉がかれ、飢えて死ぬまで宇宙の旅。
ある者は、艦に当たる。
が、そこが通路だとは限らない。
目標になってしまった艦が爆発する。6基ある超煌子力エンジンが爆発した。バレットボーイ外殻先端に取り付けられた自己鍛造弾は装甲を見事貫通、そのままエンジン基部に命中。
通路にたどり着けても、殺戮が出来なければ殺される。
バレットボーイ。余りの非人道さと効率性により、犯罪組織で大いに使用されている対艦兵器である。
20120223
一個前のマススナイパーとは打って変わって今年の二月四日からバレットボーイです。
もうちょっとしっかり書いて上げたかったけど時間的に断念。
機会があればもうちょっと短編でしっかり書いて上げたいです。




