ディザスターマン
夜の街をディザスターマンが駆ける。駆け行き先には噴煙を上げ炎の舌が覗く高層ビル。
人型トラックの技術を流用して作られた人型緊急救助車両ディザスターマン――その活躍の場は限られている。
『トニー、ちゃんと付いて来てる?』
通信。過酷な現場に行く前の軽口だ。
『後見ればいいだろー? ちゃんと付いてるよぉ』
『後なんか見てらんないよ』
現場のビルの直下に到着。しかし休んでいる暇はない。
『外壁は、ガラス張りか。吸盤が使えるね。じゃ、いくよ』
腰の辺りに両腕を持っていくと、オペレーターの簡単な操作でディザスターマンの両腕に登攀用吸盤が設置される。オペレーターは吸盤を確認すると、ディザスターマンを大きくジャンプさせた。
片腕を振り上げ、ガラスの壁面に吸盤が吸い付くようにそっと下ろす。吸盤は与えられた性能を満たすために強固な吸着力をもってガラスに張り付いた。オペレーターはこれだけでは満足しない。空いた片手を張り付いた吸盤の位置よりうでに持っていき、貼り付ける。次は吸盤内に空気を入れ、吸盤を剥がし、片手より高い位置に張り付く。
繰り返す。
繰り返す。
地味な作業ではあるが、消防車も救助ヘリもまだ到着していない。ディザスターマンはどんな緊急車両よりも先に、いの一番に現場に到着する。時には二足で道では無いところ走り、時には四輪になって車道を走る。誰よりも早く、速やかに。
繰り返し繰り返して目標の高さに付くと、腰にマウントしてあったガラス削りを手にとって壁をガリガリと削る。高いのでガラスを落下させてはいけないのだ。
必要な分だけ丸を描くように削ると、ガラス面を叩いて内側にガラス片を落とすように穴を開けた。
オペレーターはガラスに空いた穴にディザスターマンの前方に空いたワゴン入り口を据える。
「助けに来たよ! けが人病人子供優先で5人まで! つぎが来てるから押さないでゆっくりとね!」
拡声器によるアナウンス。
ディザスターマンのワゴンは救急車ほど広くない。ディザスターマンは消防車ほどの消火能力はない。けれど、どんな緊急車両より速く、迅速に、現場に到着する。
今回のロボットは以下のURLにて設定を見ることができます。
http://blog.livedoor.jp/tohka_1day1chara/archives/3653888.html