AKATUKI五型
「たいようがーあついー」
半人型トラクターAKATUKI五型の操縦席から空を見上げる。
「安物とはいえ、耐環境スーツ着ててよかったー。それでもあついー」
スーツに付いた換気ファンがフル回転をする。人が生きて行くには辛い環境だが、農業には最適なのだ。金色の稲穂が上から垂れ下がる。下は宇宙タニシが触手をだして、時折やってくる宇宙ユスリカを捕らえようとしている。その触手にタニシ対策に飼っていた宇宙ピラニアが噛みついた。平和な光景である。
シリウス稲の収穫にはまだ早い。AKATUKI五型でシリウス稲用水田をゆっくりと廻る。今のAKATUKI五型の下半身は船のようになっていて、水田をスマートに航行することが出来る。
育てて一月たったシリウス稲の金色は目に優しい。3時間も経てばサングラスが必要になるくらい金色が鮮やかになるだろうと、農家は思った。その時も耐環境スーツが自動設定で調節してくれるだろうが、なにぶん安物で、いつ壊れるか分からないのだ。用心しておくに超したことはない。
「ま、なんとかなるかー」
なんだか楽しくなり、農家は歌い出した。
「おれはーのうかー、人型トラクターの操縦者~」
彼一人で一千万人もの腹を満たしている。それほど、シリウス稲は巨大で栄養価が高い。シリウス稲だけでなく、シリウス小麦やシリウス芋もだ。彼は多くの人を生かす自分の仕事に誇りを持っている。
「お」
彼はAKATUKI五型の腕を上げ、垂れ下がる稲穂をAKATUKI五型の手に取らせた。稲穂に付いた米一粒はバレーボールほどの大きさだ。
彼が注目したのは稲穂根元だった。なにやら黒い斑点のようなものが付いている。
「これは……シリウス病か。縁起がいい」
シリウス病とはシリウス系農作物特有の病気で、特定の細菌に感染することで農作物の栄養価が高くなり、味も良くなるのだ。細菌の繁殖にいまだ成功せず、偶然に頼るしかない宇宙の神秘である。罹っているかどうかは黒い斑点の形が狼のようだったらシリウス病だ。
「あしたはーしゅうかくーたのしいなー」
農家は歌い出し、強くなる日差しに備えて家に帰ることにした。
AKATUKI五型の設定
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