惑星ドランカップル衛星軌道上人型機動ステーション アダム
『右足爪先港への入港を許可します。ようこそドランカップルへ、ようこそアダムへ。我々はあなたたちの入港を歓迎します』
アナウンスが艦橋に流れる。輸送艦ラロト艦長、シロー・カタヤマは安堵のため息を吐いた。
「やれやれ、これで一息付ける」
艦橋の窓から見えるのは巨大な人型建造物、の脚の部分。余りにも巨大すぎて、入港を控えた艦からでは全体が見えないのだ。
工業を主産業とする開拓されて年の浅い惑星であるドランカップルは、工業以外の収入に乏しい。そして自治政府首脳が出した答えがこの機動ステーションアダムだった。
高い技術力や独特の突飛なセンスにより建造され、今では観光資源にもなっている。
「今回は海賊もでませんでしたね、艦長」
「あぁ、そうだな」
そもそも、惑星間での輸送はとてもニッチだ。通常は惑星内で完結した環境であることが多いのに、食料や製品の輸送という仕事が存在する理由はない。大手がやるような仕事ではないのだ。
だからこそ個人が惑星を廻り、行く先々で輸送を請け負う、なんて稼ぎの少ないビジネスも成立するようになってしまった。
「きな臭いな」
「何か言いましたか艦長?」
「いや」
シロー・カタヤマは今回の仕事に疑問を感じていた。依頼されたものがデータディスク一枚。銀河の端から端までの輸送である。ネットで送れば一瞬であるのに、わざわざ高い金を払って託す。
「妖しい、が。日々の暮らしのため、か」
『輸送艦ラロト、右足爪先港小指ゲートから入港してください』
通信からアナウンスがかかる。シローは操舵士に命じて入港を促す。
脚でわざわざ届けて欲しいという依頼の意図が分からない。シローは仕事だから仕方ない、と割り切ることにし、これからこのアダムでの依頼が早く終わってくれるように願った。
惑星ドランカップル衛星軌道上人型機動ステーション アダムの設定
http://blog.livedoor.jp/tohka_1day1chara/archives/4995682.html