ワンダラー
ケニスはワンダラーにダンジョンの床へと中継器を打ち込ませ、一息吐いた。
「このダンジョンもこれで地下11階? 深いわね」
「魔物がいない分マシさ。ワンダラーが壊されないし、弾だって節約になる」
ケニスの隣で解析をしているトールが言う。
「ワンダラーが壊れたら回収が大変だし、弾は最近高いし管理で固められすぎてるし。世知辛いよ」
ケニスはトールに頷き、モニタを覗いてワンダラーを歩かせる。
ダンジョンをリモコンロボットで探索する、と誰かが言い出したのは100年以上前だ。それから長い年月を掛けて人型ロボットが作られて、こうしてダンジョンを探索している。
以来、冒険者というなのごろつきが勝手に潜って勝手に命を落とすことが少なくなった。
「しかし、なんで魔術師とか古代の暴君はこんな穴掘ったんだか」
と、魔力波と電波を調節して中継器間の通信状態を調べる役割のジェイム。彼の先祖自身もダンジョンを作った魔術師の一人だ。
「ご先祖様の日記には書いてなかったの?」
ケニスがワンダラーを操作しながら聞く。いつもの流れだ。
「書いてあったさ。長年の研究を隠すためだってね。そんないい研究なら好評すればいいのに、余計なことをするおっさんだよ」
分かっているのに疑問に思う。興味が無いのに聞く。ダンジョンという謎に満ちている空間を、完全な機械的作業で探索する彼ら特有の癖だ。わかりきっていることを聞き、何回も言った答えを出す。
「っと、妙なオブジェ発見。これなんだろう」
機械的で、単調で、時々楽しい。これが彼らの仕事である。
ワンダラーの設定↓
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