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Ist  作者: こごえ
第一章
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エピローグ 現実主義者と合理主義者(1)

「おー、朝倉。依頼でも持ってきたか?」

乙山市生活相談事務所の扉を開けた宮史を、気だるげな声が出迎える。声の主は本来いるべき部屋ではなく、来客用のソファに横たわっていた。

「病人に必要なのは依頼じゃなくて休養ですよ。所長」

「普段は働けと口うるさいくせに……」

いつも通りの問答を現実的な対応で台無しにする宮史に、身を起しながら所長は悪態を吐く。しかし宮史の対応はどこまでも現実的である。

「普段は普段。今は今ですよ」

「ホント歳不相応っていうか……。可愛げのない奴だな」

「大きなお世話です」

事実と異なる点や否定したいことに関しては指摘や反論を辞さない宮史だが、自身が事実だと認められることについては多くを言わないことにしている。言われるまでもないことであるし、言っても仕方のないことでもあるからだ。

 所長の文句も、宮史が事実だと十二分に心得ていることだった。そのため、宮史の対応は軽くあしらう程度である。もっとも、常識的な現実主義者の宮史に言わせればそういった理屈以前に、病人を相手に不要な論戦を仕掛けるのが非常識な行為だ、というだけの至極単純な話なのだが。

「まあいい。どのみち今日はもう閉めるところだったからな」

「そういえば本日休業って入口に下げてありましたね」

「ああ。ついさっき道路の件が片付いてな。これで、今回の事件はひと段落というわけだ。というわけで……」

そこまで言うと、再びソファに横になる所長。本格的に休みに入るらしい。普段なら文句の一つでもぶつける宮史も、お疲れ様ですと労いの言葉を掛けるにとどめて向かいのソファに腰掛ける。すると、ソファの目の前にあるテーブル上に広げられた雑誌の記事に目をやった。

「所長、これって……」

「ん?ああ。この間取材に来た記者が置いていったんだよ」

 所長が道路の見直しの件で奔走する中、事務所に一本の電話がかかってきた。電話は大して売れていない三流出版社の雑誌記者からで、予てから取材をしようと考えていた乙山市が今回の事件で話題になったために特集を組みたいとのことだった。そしてなんと、その中で生活相談事務所にも取材をしたいと言い出したのだ。

 仕事のない生活相談事務所の記事が、役所の無駄遣いの実態を告発する記事になりはしないかと内心で心配していた宮史だったが、実際に記事を見る限りそれは杞憂に終わったようだ。

 事務所の特集は見開き一ページ分組まれており、右半分のページには眼鏡を掛けていない所長が見たこともない笑顔を浮かべて写っていた。その下には、美人過ぎる所長と書かれている。ついでに未婚、とも。


楽「次回更新はー?」

悲「よ、四日後です……」

楽「出番はー?」

悲「朝倉先輩と所長さんです……」

楽「……よかった」

悲「……うん」


合「涙ぐむな」

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