召喚された、たぶん
二代目(不敏)と三代目(天然)
勇者を押し付けたのに帰れなかった男の話。
白い床に立っていた。たぶん召喚された。
「勇者様!」
「はい!」
「では勇者様ですね!」
「はい!」
そのやり取りを、少し離れた場所で見ている男がいた。
「おい」
呼ばれて振り向く。
疲れた顔の男。
「お前、帰りたいか」
「え? はい!」
「だよな……」
男は、懐から何かを取り出した。
古びた装飾のついた印。
「これ、やる」
「何ですか、それ」
「勇者の証」
「はい!」
「……いいから、持っとけ」
「はい!」
新しい勇者は、迷いなく受け取る。
その瞬間。
男は、何も起きないことに気づく。
「……あれ?」
静かだ。
「……あれ?」
手を見る。何もない。
体も、ここにある。
「……帰れてない?」
うさみみが言う。
「はい」
「いや、ちょっと待てよ」
「はい」
「これ渡したら帰れるんじゃなかったのか?」
「いいえ」
「なんで今言うんだよ!」
「聞かれていませんので」
「くそ……!」
膝から崩れ落ちる。
その横で。
「これが勇者の証……!」
勇者は目を輝かせている。
誰かが差し出す。
「パンはいかがですか!剣です!」
「えっ、すごい!これで魔王を倒すんですね!」
「倒せねえよ」
「え?」
「そもそも魔王いねえから」
「倒しますよー!」
「だから、いねえって言ってるだろ!」
勇者は笑っている。
周りも笑っている。
話は通じていない。
でも、進んでいる。
「くそ……」
男だけが、止まっている。
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