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第六話「よろしくお願いします。」





「勇者さまから、リオどのがわたしを推奨してくださったとお聞きいたしました。」



 あー。そのことか。

 うん、そーだよ、とかるくうなずくと、頬に刃物で切られたような古傷のある長身の男は、かたい口調で言った。



「もしよろしければ、理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」



 彼は鍛えぬかれたたくましい体躯を持つ、苦みばしったいい男だった。

 ワイルド系で、正統派の美男子とはいえないが、頬の傷さえ魅力的に見えるほどの色男なのは間違いない。



 これだけの男なら、女に飢えているはずもないだろう。

 そのへんのイロイロな経験値も高そうだし、天音のそばに置いておけば、ほかの男たちをうまいこと押さえてくれるんじゃなかろうか、と期待したのが一番おおきいのだが。



 なんか真面目に訊いてきてるし、素直にそう言うと怒られそうだねー。

 しょーがない。

 マジメに答えるよー。



「騎士って楯でしょ。あたしが天音の楯としていてほしいのは、手柄を立てたい血気盛んな若者じゃなく、自制心のある大人。勝てなくても死ななきゃ負けじゃないんだし、ちゃんと引き際を知って、実際に引ける人がいいなーと思ってねー。」



 あたしはこの国の最精鋭であるトーナメント優勝者を「手柄を立てたい血気盛んな若者」だと言いきってしまったわけだが、彼はすこし驚いただけで、無言で言葉の続きを待っている。



 観客の何人がわかっていたかは知らないが、さっきのトーナメントの決勝戦は、優勝した青年がけっこーな大ケガをしかけていた。

 それをせずに済んだのは、目の前のこの人が勝ちを捨てて無謀な若者の打ち込みを受けたからだ。

 勝ちを捨てて命をとれる人と、それであたしは判断させてもらった。



 自分がやったことなんだから、わかってるでしょーに。

 まだ何か言えと?



「んー。あとはねー・・・。女の子の扱いが上手そうだから?」

「・・・・・・それは皮肉で?」

「いや。本気で言ってるよー。」



 微妙な顔でどうにも納得してなさそうなので、皮肉じゃないことを理解してもらうためにも説明しておくことにする。



「天音は可愛い見かけのわりにものすごい行動力あるから、ある程度うまいこと扱ってやらないと、何しでかすかわかんないのねー。だから天音に振り回されないでいられる大人が要るだろうと思ってさー。あの優勝者のあんちゃんじゃー無理っしょ。」


「あんちゃん・・・」


「あー、ごめん。あたし口悪いから。・・・ところで、騎士さん。推薦したの迷惑だった?」



 少し考えてから彼は首を横に振り、そのワイルドな顔立ちになんとも女殺しな笑みを浮かべた。


 ・・・コレはちょっと危ないかもしれない。

 けど、まあ、天音は極端な天然の鈍感だから、大丈夫だろう。

 ワイルド系な彼は意外と紳士的な印象で、自分から純真無垢な子猫ちゃんをもてあそびにいくようなタイプでもなさそうだし。



「いいえ。勇者さまの旅にお供したいと思っておりましたゆえ。リオどのには感謝しております。」

「リオでいいって。あたしただのおまけ。」



 彼はなぜか苦笑して、なに?と首を傾げるあたしに言った。



「わたしの名はヴィンセント・ロウ。・・・リオ、勇者さまのことで、わたしが知っておくべきことはあるだろうか?」

「んー。・・・天音は、自己犠牲精神が強すぎるところがあって。誰か助けたい人がいると、自分の命の重さを忘れやすい。それだけ気をつけてやってもらえる?」

「・・・承知いたした。」



 きちんと聞いて、うなずいてくれる。

 とりあえずこの人は、信用しても良さそうだと思った。

 なので。







 あたしは姿勢を正し、深く頭を下げる。


「妹を、よろしくお願いします。」







 かなり驚いた顔をされたが、すぐに丁寧な礼を返してもらったので、これにてあいさつ終了で。

 まただらっと力を抜いた姿勢に戻ると、首を傾げたヴィンセントに訊かれた。



「リオは、勇者さまに同行されるのではないのか?」

「いやー。行ってもただのお荷物になるだけだからねー。何してるかはまだ考えてないけど、邪魔にならないように安全なとこで待ってよーかと。」



 そうなのか、とうなずく彼に、じゃーねーと手を振ってわかれた。





 とりあえず顔見知りゲット、にとどまりましたー。読んで下さってる方、ありがとうございます。お気に入り登録いただいてるみたいで、うれしーです。続きはまた明日投稿しまーす。

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