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第二十一話「はじめが大事。」





 鞍を持ってくるからここで待っていろ、と言ってどこかへ歩いて行くレグルーザを見送り、草原に目を戻すと、いつの間にか頭を上げたホワイト・ドラゴンがこちらを見ていた。


 かっこいー。


 この世界のドラゴンは、お腹ポッテリなトカゲにコウモリみたいな翼がくっついてる、典型的な西洋タイプ。

 頭から長い首、背中にかけてたてがみがあり、しっぽの先もふさふさ。

 お腹は皮っぽいけど、それ以外のところは鱗でおおわれている。


 王道もいいトコあるもんだ。

 あたしこーゆードラゴン好き。


 あれに乗せてもらえるのかー、とわくわくと見つめていると、真珠色の鱗におおわれた芸術品のような生き物は、その翼をおおきくひろげて一瞬で浮き上がると、何を思ったかこっちに飛んできた。


 おお。

 飛ぶ姿は、間近で見るとかなり雄大。





 ・・・・・・うん?





 君、けっこーな速度ですが。

 身の危険を察知しましたよ?



「〈全能の楯(イージス)〉」



 防御魔法、発動。


 あたしのこの万能の楯は衝撃吸収機能付きなので、ドラゴンの突撃にもとくに揺らがなかった。

 が、真正面からそれに激突したホワイト・ドラゴンは、ドガッと鈍い音を立て、驚いたようなあわれな声で鳴きながら高台の下へ落ちていった。





 あたしには何の被害もありませんでしたが(冷笑)。





 今のは攻撃とみなしてよろしいでしょうか。





「伏せ。」



 起き上がろうとしているホワイト・ドラゴンを、“闇”を使って拘束。

 地面にぺったりと伏せさせる。


 ホワイト・ドラゴンが高台の下にいるので、〈全能の楯〉をまとったままあたしも飛び降りた。

 衝撃吸収機能がばっちり働いて、クッションの上に落ちたかのようにふんわりと着地することができた。

 この防御魔法、魔力は食うみたいだけど、使い勝手はいいわー。


 “闇”に拘束され、無理やり伏せの体勢をとらされているホワイト・ドラゴンはゾウの三倍くらいの大きさだったが、鼻先に降り立った小さなあたしを恐怖の目で見た。


 動物のしつけというのは、力関係を教え込むことにあると思う。


 かわいそうな気がしても、相手の方が肉体的には強いのだから、最初にきちんとしつけておかないと、後で自分の身が危うい。

 ので、ごめんねー。



「よし。」



 あたしはにっこり笑って拘束を解いた。

 びくっとして、おそるおそる起き上がるホワイト・ドラゴン。


 はい、よろしい。


 では、君が気力を取り戻してしまう前にもう一度。

 笑みを消してはっきりとした口調で命じる。



「伏せ。」



 “闇”の拘束。

 ふたたび地面に沈められたホワイト・ドラゴンは、数秒で事態を理解して泣きそうな顔であたしを見上げてきた。


 思ったほど混乱している様子はない。

 うん。

 理解できたかな?



「よし。」



 またにっこり笑って拘束を解除。

 硬直気味にびくびくと起き上がったホワイト・ドラゴンは、あたしの方から片時も目を離さない。


 ふむ。

 これなら大丈夫だろうか。


 あたしはにっこり笑ったまま言った。



「伏せ。」



 ホワイト・ドラゴンは自分からぺったりと地面にはりついた。



 頭の良い子でたいへん嬉しいです。







 そんなわけで。



 数分後、高台の上に誰もいないことに気づいて慌てて飛んできたレグルーザが見たのは、ぺったりと地面に伏せたホワイト・ドラゴン(涙目)の背中に寝そべり、「ウロコすべすべー」と満足しているあたしの姿だった。





 えらいのに突撃かましちゃったホワイト・ドラゴン。きっと鋭い本能で敏感に危険を察知して、先手を打ったはずが墓穴掘っちゃったんでしょう。リオちゃんはあっさりしつけを終えてご満悦ですが。ご愁傷さまでございます・・・。

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