第十五話「黒の聖典。」
〈異世界十二日目〉
朝ごはんを食べ、また出かけるというトラ兄弟たちを見送って部屋に戻ると、【忘れられた禁書庫】の本を見てみた。
ちょっと思いついて召喚陣のコピーと本の字を見比べ、よく似ているもののなかでとくに強い力を持つ本(封印付き)をこじ開けてみたら、またへんなトコへ来てしまった。
今度は綺麗な黒い石造りの建物のなか。
あの変な泉があった、“裏側”の神殿っぽい。
こんなんばっかだなー。
あきらめ気味にため息をついて待っていると、“意思”が話しかけてきた。
―――――― 扉開きし探究者に問う。
たんきゅーしゃ・・・
はいはいはい。
何でもいーさ。
―――――― 汝、神を信ずるか?
思わず鼻で笑った。
はー?
信じたら何が起きんのさ。
天音が会ったって言ってたから、「いる」のは「知ってる」けど?
―――――― 汝、神を識ることを望むか?
あたしたちが落ちてきたのは神殿だった。
つまり、天音をここへ落したのは神の業ってことでしょ。
んで、あたしもそれに巻き込まれた。
まー、いわば、敵?
敵のことは知っとけって、孫子先生も言ってるしねー。
だから。
識りたい。
―――――― ・・・汝、愚かなる挑戦者よ。
淡々としていた“意思”が、ふいに嬉しげに言った。
―――――― 汝を、我が後継と認めよう。
愚かなる挑戦者の?
そんなもん知らんよー。
“意思”は気にする様子もなく、笑うように言う。
―――――― [黒の聖典]は、汝のものだ。
黒の・・・・・・?
・・・ヤバイ知識が増えました。
また熱が出ました。
夕食に降りて行かずにへばってたら、トラ兄弟が部屋に来て心配してくれました。
・・・うん。
今日はもう、寝とくよ・・・・・・
短いですが、とりあえず二冊目の禁書を完全入手で。トラ兄弟はいきなり倒れてるリオちゃんにびっくり。夜の歓楽街ひとりで歩いてるし、自称“旅人”なのに荷物は持ってないし、今度はいきなり倒れるしで、いろいろと心配な女の子です。