第十四話「買い物と子守りと賭博。」
〈異世界十日目〉
朝ごはんはラルアークたちと一緒に食べた。
レグルーザはいつまたあたしが泣き出すかと警戒してたけど、どうも世話焼きな性格らしく、着替えが無いと言ったら今日は一日店巡りに付き合ってやるから「必要な物は全部そろえろ」と言ってきた(命令形だったよ)。
お店を教えてくれるだけでいーんだよーといちおう遠慮したのだが、一歩も譲らないレグルーザと、連れの青年二人が苦笑して首を横に振るのを見て、あきらめた。
まあ、いいや。
あ。ちなみに昨日の誘拐犯たち。
青年二人が捕まえて、警察みたいなトコ(王都の治安維持をしてる騎士団の支所)に引き渡してきたそうです。
うーん。
正統派だねー。
朝食後、お出かけ。
レグルーザにいろいろ店を案内してもらい、城の宝物庫から頂戴してきた慰謝料を使って、要りそうなものを買いそろえた。
ちなみに、服はほとんど男物(何かに使うかもしれないから、女物もいちおうひとそろい買っといたけど)。
元の世界では制服以外でスカートなんてはかなかったから、こっちの女物の服というのが動きにくくてかなわなかったのだ。
あんなものを着て普通にくるくる動き回っているのだから、世の女性たちは偉大だと思う。
あと、今の季節は秋らしいから、寒い時用の防寒具も買っといた。
こたつの無さそうな世界で、冬なんて迎えたくないんだけどねー。
あー・・・。
秋って聞いたら、焼き芋が食べたくなった。
ほかにも柿と栗と、おかーさんのクリームシチュー(鶏肉入り希望)。
今すぐには無理だけど、帰ったらいっぱい食べよう。
途中、ラルアークが隠れてついてきていることに気づき、深いため息をついたレグルーザが捕獲に行った。
昨日の無茶な行動を反省するよう、たっぷり叱られて宿の部屋に閉じ込められていたはずなのだが、どうにか脱出してきたらしい。
可愛い顔をして必死に誤魔化そうとしているやんちゃな小トラを抱えた大トラが、「どれだけ叱っても言うことをきかない」と頭痛そうに言うので、「うちの妹もそうだよ」となぐさめておいた。
種族が違っても、にーちゃんやお姉ちゃんの悩みは一緒なんだなー。
いつもは素直なんだけど、いったんこうと決めたら一歩も譲らない天音は、叱っても説得しても何をしても言うことをきかなくなる。
そして、そんな時の天音を閉じ込めておくには、銀行の地下金庫くらいの設備が要る。
それでもあっさり脱出されそうだけどねー。
そういえば、今頃はどうしてるかなー?
義姉からの行動予想としては、
朝、手紙を見つけて読んでびっくり。
でもなんか予想通り。
たぶん大丈夫だろうからわたしは周りをフォローしておこう。
でも、本当に大丈夫かな?
ヴィンセントに相談するようにって書いてあるから、王子さまと王さまに話をした後、会いに行ってみよう。
王と王子へフォロー。
ヴィンセントと話。
・・・話をしているうちにだんだん不安になってきた。
何かやらかしてたらどうしよう。
(たぶんヴィンセントがフォローしてくれる)
うん、お姉ちゃんだから。
たぶん大丈夫。
で、修行に戻りそう。
あの子は素直だから、たぶん、すすめられた通りにヴィンセントのところへ行くだろう。
・・・今度、天音のところへ顔を出すときは、彼へのおみやげを忘れずに持って行くことにしよう。
何か調達しとかないとなー。
やんちゃ少年は苦労性にーちゃんにびしっと叱られた後、同行を許された。
あたしはトラ兄弟と一緒に一日王都を巡り、必要な物を買いそろえながら『傭兵ギルド』や『魔法協会』など(まんまRPG)、いろんな施設があるのを教えてもらった。
そういえば、どこへ行っても彼らの他に獣人はおらず、物珍しげに見てくる人がたくさんいたけど、兄弟はまったく気にしていないようだったので、あたしも気にしないことにした。
彼らには彼らの事情があるんだろう。
夕方になると宿に帰り、食事をとって寝た。
〈異世界十一日目〉
朝ごはんの時、今日は一日宿ですごすつもりだと言ったら、ラルアークのお守を頼まれた。
レグルーザたちは少年を連れて行きたくないところへ出かけるらしい。
【忘れられた禁書庫】から持ってきた本を見ようかと思っていたのだが、なかなか美味しいごはんを出してくれる小奇麗な宿屋を紹介してもらったし、昨日一日の恩もあるので、いいよーと引き受けた。
置いてきぼりにされて不満そうなラルアークに、字の読み書きはできるかと訊いたら、できると答えたので、教えてくれと頼んだ。
活動的なやんちゃ少年はたいへん面倒くさそうな顔をしたが、「先生」と呼んでやったら一発でやる気になった。
かわいーねー。
癒し系トラ少年に読めると便利そうな文字だけ教えてもらい、昼ごはんを食べた後は近くの市場までぶらっと散歩をしに行った。
最初に会った時、ラルアークをさらおうとしていた連中から没収した金品があったのを思い出したので、換金して欲しがるもの(食べ物ばっかり)を買ってあげた。
えらい喜ばれて反応に困ったので、字を教えてくれたお礼だと言っておいた。
宿屋へ戻ると、他の客がタロットカードみたいなのでポーカーっぽい遊びをしていたので、どうやって遊ぶのか聞いてみたら、意外なほど好意的に迎え入れて丁寧に教えてくれた。
が、実際やってみるかと誘うその目に、カモだと思われていたらしいとようやく気づく(遅い)。
いいね。遊んでもらおうか。
ちょっとカチンときたので、慌てて止めようとするラルアークをなだめて、軽く遊ぶふりをしながらわりと本気で勝負した。
そしたら途中から向こうも真剣になってイカサマをしてきたので、あたしもイカサマして(おとーさんがコッソリ教えてくれたんだけど、後でバレておかーさんにみっちり叱られてた)身ぐるみ剥ぐくらいに勝ってやったら、逆ギレされた。
はっ。(鼻で笑い)
大人げないねー。
ちょっとした騒動になりかけたけど、タイミング良く帰ってきたレグルーザが止めに入ってひと睨みすると、相手の男たちはあっさり逃げだした。
かっこいー。
口に出したらあたしまで睨まれた。
おにーちゃん、こわーい。
夕食の時間までこってり叱られたが、怒ってるレグルーザもゴツかわーとか思ってるあたしにはあんまり効果なかった。
だって向こうが悪いんだよー(こりてもいない)。
ラルアークとごはんを食べていると、疲れきった様子でお酒を飲んでいるレグルーザを、青年ふたりがなぐさめていた。
助けてくれて、心配してくれたのに、なんか態度悪かったかなー・・・
ちょっと反省した。
数日の城暮らしの間、ずっと頭の上にのせられていたエサのいらないネコがおろされました。リオちゃん好き放題でストレス発散。そのぶんレグルーザの心労がたまりそう・・・。