第百九話「正体不明の忘れもの。」
「オヒメサマ……?」
いまだかつて一度もそんな呼ばれ方をしたことは無いだろうレグルーザが、目を丸くしてその単語を繰り返す。
やったね自分! レグルーザに初体験を提供できたみたいだよ!
なんて、楽しんでいられたのはそこまでだった。
「いや、その前に、まず言わなければならないことがある」
釈然としない面持ちで、それでもなんとか頭を切り替えたらしいレグルーザが、あたしの目の前に来て真上からこちらを見おろした。
なんだか不穏な流れに(あれ?)と首を傾げたところへ、突然の落雷発生。
「なぜ来た、リオ! 連中の狙いはお前なんだぞ! 獲物の方からのこのこ出向いてくる奴があるか! それにあれほど一人では動くなと言っておいたのに、お前は今、どうして一人でこんなところに飛び込んできているんだ!」
怒濤の勢いで叱られて思わず首をすくめ、感謝のハグを受けるべく広げていた両手は「いやいやそんなつもりは」とうろうろ空中をさまよう。
おかしいな? いったい何が間違って、救出ヒーローがお姫さまに叱られることに? と、頭の中は疑問符でいっぱいである。
そして、そんなあたしにレグルーザの追撃。
「それから、もう一つ」
彼の両手の真ん中にある、なめし革のような肉球で左右から頬をはさまれ、そのままムニュッと押しつぶされて変な顔にされた。
痛くはないが逃げることもできない状態で「ふぉっ?!」と声をあげてジタバタするあたしに、珍しく笑顔のレグルーザが訊ねる。
「リオ。お前の言う“お姫さま”というのは、いったい誰のことなんだ?」
お、おおう。
レグルーザがお怒りだ。
あたしの故郷じゃ、敵にさらわれて助けられる役の人は男女かまわず「お姫さま」と呼ばれるものなんだよ、と返したかったけれど、とてもそんなこと言える雰囲気じゃないなコレ。
「ほふぇんひゃひゃぃ~」
あたしは救出ヒーロー役をやったはずなのになぁ、とだいぶ納得いかないながらも、しかたなく、大きな手に両側からムニュムニュ顔をはさまれたまま謝る。
それを聞くとレグルーザは「まったく」とため息をつき、ようやく手を離した。
「どうしてお前はそう、一言よけいに喋るんだ。すこし口を閉じてさえいてくれれば……」
そのまま、何やら小声でぶつぶつ言いながらくるりと背を向けて、いくらか離れたところで倒れたままぴくりとも動かない少年の様子を見に行く。
あたしははさまれていた頬を自分の手でムイムイとほぐしてやりながら、(うーん? 一言よけいだったってことは、黙って両手を広げて待ってれば良かったってことか?)と考えこみながら後をついていった。
「意識を失っているだけだな。怪我は無いようだ」
床に転がっている少年の隣に片膝をつき、一通り様子を確認したレグルーザが、安心した様子でほっと息をつきながら言う。
彼の後ろからひょこりと顔を出して見覚えのない少年を見たあたしは、「この子、誰?」と首を傾げた。
レグルーザは少年をそこに置いたまま立ち上がり、さっきあたしが壊した鎖の破片をいくつか拾いながら「『傭兵ギルド』が面倒を見ている、見習いの一人だ」と答えて、何が起こったのかを簡単に説明してくれた。
風の精霊が大慌てであたしのところへ来る前、レグルーザはこの傭兵見習いの少年や他の傭兵達と一緒にオアシスの街にいた。
すでにサンドワーム討伐の仕事は終わっていたけれど、負傷した傭兵が何人もいたので、彼らの中でもとくに重傷だったものを一刻も早くオアシス街まで移動させるため、レグルーザがホワイト・ドラゴンを飛ばしたのだ。
そうして街の『傭兵ギルド』支部まで彼らを運んだところでこの少年に声をかけられ、知人の名を出されて「あなたを呼んでいる」と言われのでついて行ったら、人気のない路地裏でドクロ仮面こと『聖大公教団』の連中に囲まれ、案内役の少年(ドクロ仮面達に利用されていることに気付いていなかったらしい)を人質に誘拐された、と。
「ここへは転移の魔法陣で連れてこられたんだが、その前に[形なき牙]を奪われ、体から何かを引きはがされた。連中は精霊の加護が何とか、と言っていたが、俺に精霊の加護など無かったはずだ。それでも何かを引きはがされた感覚があった。リオ、あれはお前の仕業だな?」
話をしている間に廊下の方が騒がしくなり、バタバタと慌ただしい足音が近づいてきて扉のノブが回った。
あたしは意識のない少年のそばに立って、扉が開かれた瞬間、レグルーザの投げた鎖の破片にぶち当たってひっくり返った三人のドクロ仮面たちを眺めて「おお~」とのんびり拍手する。
さすがレグルーザ、コントロール上手いなぁ。
速度も威力も十分だし、現代日本に連れていったら良い野球の投手になりそうだ。
まあ、今のままの姿だと、別の意味で大騒動になるだろうけど。
と、観客していたらジロリと睨まれたので、彼の話に答えて言う。
「精霊の加護、っていうのはよくわからないけど。うん。たぶん、あたしが風の精霊に、レグルーザとホワイト・ドラゴンのことをよろしくね、ってお願いしたヤツのことだと思うよ。……ん? あー、そうか。風の精霊たちがすごく慌ててあたしのところに飛び込んできたから、何が起きたのかと思ってビックリしたんだけど。こいつらのせいでレグルーザから引っ剥がされたから、大変だー! って、あたしのところに飛んできたんだね」
「ああ、それでこれほど早くお前が現れたのか。しかし、風の精霊が俺から引きはがされたのなら、お前はどうやってこの場所を見つけたんだ?」
「それも風の精霊に教えてもらったんだよ。なんかね、レグルーザから加護を引っ剥がそうとした人がどうやったか知らないけど、それ、不完全だったみたい。まだレグルーザのそばに、あたしのお願いで付き添ってくれてる風の精霊がいるから」
「つまり、俺から風の精霊を引きはがそうとした者より、お前の力の方が強かったということか」
レグルーザは納得したようで、なるほどな、と頷いた。
ちなみにこの会話をしている間、あたし達を捕まえようと次々やってくるドクロ仮面達を、彼がたった一人でみんな倒している。
手にした鎖の破片をドクロの仮面にぶち当て(その情け容赦ない顔面強打ぶりにレグルーザの怒りの片鱗が見える)、彼らが顔を押さえて悶絶しながら倒れたところを素早く一撃して気絶させているのだ。
そんなわけで、あたし達の会話の終了を待たずして意識のあるドクロ仮面はいなくなり、後には浜に打ち上げられた魚のごとくゴロゴロと床に横たわる男達だけが残った。
ミッション・コンプリート! とでも言って、さっさと帰りたくなる光景だが。
「参ったな。誰もエイダを持っていないようだ」
ドクロ仮面の制圧が終わり、あたしとの話も終わったところで、倒した男達の持ち物を改めていたレグルーザが困った様子で言った。
彼が愛用している槍であり、人型になるたびに流し目をくれる、あの妖艶な雷の精霊があたしはちょっと苦手なのだが、それでもさすがにこの連中に奪われたまま放置しようなんて思わない。
「どこか別の部屋に置いてあるのかな?」
一緒に探しに行こうと寄っていくと、片手をあげたレグルーザに「待て待て」と止められた。
「リオ、お前はここから動くな。さっきの話を聞いていなかったのか? この連中の狙いは俺ではなく、お前だったんだぞ」
「ああ、そういえばさっき、そんなようなことを言われたような」
レグルーザが怒っていることの方に気を取られて、じつは何を言われたかあまり覚えていない。
あいまいにつぶやいて誤魔化すようにへらりと笑ったあたしに、彼は鋭い声で「もっと警戒心を持て」と言い、言葉を続ける。
「『聖大公教団』と呼ばれるこの連中がお前を狙ったのは、これで二度目だ。何が目的なのかはわからないが、お前を手に入れるために俺を誘拐するようなやつらだぞ」
「間抜けだよねぇ」
あたしは心の底から思って応じた。
「レグルーザを誘拐して人質にしようなんてさ。自分たちの拠点に案内しますからどうぞ制圧してください、って頼んでるようなもんだよね。事実、そうなってるわけだし」
最初の一度目、広場であたしを捕まえそこねた時に諦めておけばよかったのに、二度目のチャレンジでよりにもよって『傭兵ギルド』の中でも一目置かれるランクSの傭兵を人質にとるなんて、間抜けにもほどがある。
いちおうレグルーザに対する人質として傭兵見習いの少年を捕まえたみたいだけど、だからといって彼がいつまでも受け身のまま囚われていてくれるはずなどないだろうに、それくらいのことも考えつかなかったのだろうか。
いったい誰がこの案を思いついたのか知らないけど、そいつには自滅願望があるに違いない。
「まあ、今もうすでに半分くらい制圧完了してるようなもんだし、ご期待に応えて完全制圧しとく? ……あれ? レグルーザ?」
ふと気づくと、なぜかレグルーザが片手を壁について斜めになっていた。
疲れたような、何かを苦悩しているようなポーズだが、今、彼がそんなに悩むことがあっただろうか?
「どうかしたの? エイダが心配? って、そういえば、エイダは武器の状態だと契約者以外の人の手は拒むはずだけど、こいつらどうやって取り上げたの?」
ふと疑問がわいて訊ねると、斜めに傾いていたレグルーザがよろよろと体勢を戻して答えた。
「あ、ああ。それなら魔力の流れを遮断する布があるとかで、それでエイダを包んで無理やり持って行ったぞ」
エイダはその布の中でバチバチ雷光を閃かせて怒っていたらしいけれど、ドクロ仮面達が根性でどこかへ持ち去ったという。
そんなところでムダに根性とか発揮しなくていいのになぁ……
「じゃあ、今もその布に包まれてる可能性が高いね。……うーん。あたしがこの建物全体を“視て”みてもいいんだけど、そんな状態だと見落とすかも」
「リオ。エイダは俺が探す。あの力は使うな」
レグルーザに素早く止められ、“闇”と意識をつなげて影から屋敷の空間全体を掌握して探す案は却下された。
まあ、確かにこの屋敷の場合は、自分の足で歩き回って肉眼で探した方がいいかもしれない、と自分でも思う。
ドクロ仮面たちの拠点の一つなのだろうここは、建物のあちこちに魔法がかけられていて、魔法が視える目を持つあたしには複数の呪文や魔法陣がゴチャゴチャしすぎて見通しがきかない。
ただ、その魔法というのが、外からの攻撃を防いだり、音を遮断したり、窓から部屋の中を覗かれないようにしたり、といった系統のものばかりで、罠系が無さそうなのが意外なのだが。
とにかくそのことをレグルーザに話して、他の部屋には罠系の魔法も仕掛けられているかもしれないし、エイダを探すならあたしも一緒に行くよ、と申し出た。
しかし、あたしをこの部屋から出したくないどころか、できれば人質にされていた少年を連れて先にアンセムの屋敷へ帰ってほしかったらしいレグルーザは、何とも気に入らなさそうな顔をする。
が、あたしが「レグルーザと一緒じゃないと帰らないよ」と先回りして宣言し、「彼をここに放っていくわけにはいかないだろう」と少年を指して抵抗されると、倒れたままの少年を中心として〈全能の楯〉を展開、固定したのでさすがに諦めたらしい。
ため息をついたレグルーザに、あたしは腕を組んで仁王立ちで言う。
「レグルーザがフラグ立てたせいで二つもトラブルが起きたんだから、これ以上トラブル増やさないためにも一緒に動いた方がいいと思うんだ」
「問題が二つだと? これの他にも何かあったのか。まったくお前は、どうしてそうなんだ……。……ん? いや待て、リオ。なぜそれが俺のせいなる? というか、いいかげんその“ふらぐ”というのが何なのか、説明する気はないのか」
断言するあたしに納得いかない様子で言葉を返しながらも、レグルーザは一緒に屋敷の探索をすることを認めた。
ちなみにフラグについての説明は、また今度ね、と流しておいた。
今はまず、エイダを見つけるのが先だ。
「……リオ」
そうしてようやく気絶したドクロ仮面がゴロゴロしている部屋から出ようというところで、なぜだか先に立ったレグルーザが足を止めた。
後ろにいるあたしの方を振り向いて、どこか戸惑った様子で訊ねる。
「一緒に行くことは認めたはずだが。お前はどうして俺のマントを掴んでいるんだ?」
言われて初めて、自分の手がレグルーザのマントの端を握っていることに気が付いた。
べつに心細いというわけでもないし、何か怖いことがあった、というわけでもない。
自分で自分が何をしているのか理解できず、首を傾げながら口を開いたらおかしな言葉がこぼれ落ちた。
「レグルーザは忘れていかないようにしようと思って」
「俺を忘れていかないように? どういう意味なんだ、それは?」
「よくわからない。けど、なんか、あたし、忘れものしたような気がする?」
「それを俺に訊いてどうする」
「どうしようもないね。……うん。なんか、ゴメン?」
自分が喋っている言葉の意味が、いまひとつ理解できない。
こんな感覚は初めてだけれど、忘れものをしたような気がする、という思いは一秒ごとに強くなるばかりだ。
どうして急にこんなことを言ったり、思ったりするのか、理由はさっぱりわからないのに。
いったい何なんだろう、これは?
無意識に顔をしかめ、レグルーザのマントを握りしめていると、上の方でパチンと音がした。
ふと顔を上げると、留め具を外されたマントが降ってきて、頭からすっぽりとそれをかぶることになったあたしは「うぶっ?!」とまたしても変な声をあげるはめになる。
「えっ? な、なにっ?!」
びっくりしてマントから手を放すと、レグルーザが自分の肩から外したそれを掴み、あたしを包むようにしてふわりと掛け直した。
「何が起きているのかはわからんが、応急処置だ。他にも異常を感じるような事があれば、すぐに言うんだぞ」
青い眼が、本当にこのまま連れて行っていいのかどうか、探るようにこちらを見ている。
それをはっきりと感じたから、できるだけいつも通りに見えるよう気を付けて、「うん」と頷いた。
レグルーザのマントはちょっと砂っぽいけど、いつの間にか慣れている彼の匂いがして、包まっているとみょうに安心する。
自分のマントもあるので二重に布をかぶることになって動きづらいものの、その安心感は手放しがたく、あたしはおかしな格好のままレグルーザについていった。
「あ。そこの壺、呪文で発動する式の罠だよ」
「わかった」
やたらと広い屋敷の廊下を歩き、いくつかの部屋を見て回るうちに、何個か罠を発見した。
どれも絵画や壺や絨毯に呪文で発動する形式の魔法が仕込まれているものだったので、呪文を唱える人がいなければただの物なんだけど、あたしが報告するとレグルーザが壊している。
そうして何個目かの罠を壊しつつ、何番目かの部屋の扉を開くと、ようやくエイダを見つけた。
家具や武器から掃除道具まで、雑多に物を押し込んだ物置のような部屋に、布に包まれた長い棒状のものが無造作に置かれている。
「やれやれ。『聖大公教団』の連中は、物の価値を知らん者が多いとみえるな」
同じ屋敷内にあったことを喜ぶべきか、掃除道具と一緒に物置部屋に放置されていたことを憤るべきか。
宿る精霊の性格はともかく、いちおう伝説の鍛冶師の作品である[形なき牙]に対するその扱いに、レグルーザは何とも言えない顔で苦笑した。
「その布で包まれてる間はエイダにはわからないだろうから、このまま持って帰ってやるのがいいかもね」
もし自分がどんな扱いをされたか知ったら、気位の高いエイダのことだから、きっとものすごく怒ってしばらく機嫌を損ねているだろう。
それに付き合わされるのも大変だし、とあたしが言うと、レグルーザは「そうだな」と同意して布にくるんだままエイダを持ち上げた。
これでもうこの屋敷にいる理由は無い。
体の奥のどこかから(忘れものがある)という声が響いてきて、その強さは増すばかりだけど、初めて来た場所に忘れものがあるなんていうのは、おかしな話だ。
「行くぞ、リオ」
魔力の流れを遮断する布に包まれたエイダを手に、傭兵見習いの少年を置いてきた部屋へ戻ろうと歩き出したレグルーザは、ふと廊下で立ち尽くしたあたしに気付いて声をかけた。
しかし次の瞬間、廊下の向こうから誰かの声が響いてくるのに身構える。
「早く! もっと早く動いて探すのです! かの魔女を逃しては、次の協力者を見つけるのにどれだけの時間がかかることか! ああ、もっと早く!」
やたらと甲高い声でキーキー叫ぶ誰かを連れ、苦しげに肩で息をしながらよろよろと廊下の角を曲がって姿を現したのは、小さな人影。
「わ、わかって、います……。どうか、怒らないで、フープ」
途切れがちな高音の声はやわらかく幼く、細い体が一歩進むたびに長い黄金の髪がゆるやかに波うつ。
褐色の肌にサーレルオード公国の民族衣装と思しき真紅の衣装 (ゴテゴテした金糸の刺繍入り)をまとい、細い腕に蛍光グリーンのトカゲ(?)を巻き付けた、まだ十歳くらいの小柄な女の子だ。
やたらと派手で豪華な衣装を着て、額には大きな宝石を戴く金冠をはめているけれど、気弱で脆そうな雰囲気の彼女にはどちらもまったく似合っていない。
「きっと、見つけます、から……」
壁に手をついて必死に息を整えながら言うと、少女は顔を上げる。
そして、まだ幼さを残した可愛らしい顔立ちの中で、気弱そうにゆれる赤い瞳が救い手を探すように辺りをさまよい。
あたしとレグルーザに気付くと、大きく見開かれた。
「……リオ」
後ろから小声で、レグルーザに呼ばれた。
わかっている。
あの子はドクロ仮面も緑の服も身に着けていないけれど、『聖大公教団』のアジトであるこの屋敷の中を拘束も監視も無しに動いているということは、連中の仲間である可能性が高い。
けれど、あたしは動かない。
動けない。
だって、この子があたしの“忘れもの”。
「ああ、良かった。いらっしゃった」
気弱げな瞳にほっと安堵の表情を浮かべ、蕾が花開くようにはかなげな笑顔が咲きこぼれる。
その少女は混乱して動けないでいるあたしを招くように、細い両腕をたおやかにひろげて言った。
「『銀鈴の魔女』さま。どうかわたくしとともに、聖なる儀式の生け贄になってください」
……へ?
耳から入ってきたその言葉の意味が、すぐには理解できず戸惑った。
そしてそのショックでようやく動けるようになったあたしは、後ろにいるレグルーザの方へと振り向いて訊ねる。
「ねぇ、レグルーザ。今、ちょっと意味のわからない幻聴が聞こえた気がするんだけど」
彼もまたどこかぽかんとした表情で、けれど声だけは真面目に、答えた。
「奇遇だな、リオ。俺もだ」