第9話】 15年ぶりの兄、20万円、そして静かな旅立ち 〜最後の笑顔が、すべてを赦してしまった〜
「もし15年ぶりに蒸発した兄が現れて、“20万貸して”と言ったら……あなたならどうしますか?」
今回は、義母との最後の時間と、
その中で突如として現れた“あの人”のこと。
そして、親と子の不思議な絆について。
ラスト数日で見せてくれた義母の表情と、
そこにあった“答え”のようなものを、
私なりに記しておこうと思います。
###食べたくない理由###
「ちゃんと食べないと、寝たきりになっちゃうよ」
夫は、日に日に食が細くなる義母に、
せっせと好物を差し入れていた。
イチゴ、ゼリー、さつまいも、おはぎ――。
でも義母は、ぽつりと言った。
「でもね、食べたくないのよ」
その声には、どこか寂しさがにじんでいた。
見ているこちらもつらくて、でも、どうにもできなかった。
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###15年ぶりの長男###
そんなある日、思いがけない知らせが飛び込んできた。
「今ね、B子さんの長男さんが来てるのよ!」
実母からの一本の電話に、思わず声が出た。
「えっ!?」
あの“長男”――
義母の自慢だったはずの息子が、
借金まみれで蒸発してから15年。
それが、何事もなかったかのように、
ふらりと現れたというのだ。
――――――――
###目的はひとつ###
開口一番、兄が口にしたのは――
まぁ、ひとつ。お金。
病床の母を前に、涙ぐみながら「昔を思い出してさ…」と語り、
さりげなく懐事情をにおわせてきたらしい。
ついでに夫にもこう言ったそうだ。
「ちょっと引っ越しでさ、どうしても足りないんだよね。
……20万だけ、貸してくれない?」
いや、500円貸してっていうテンションで20万て。
しかもその後、こんな爆弾発言。
「俺さ、5年前にコロナで死にかけてさ。
それから人生観が変わったんだよね〜。
……仏門に入ろうかと悩んでたんだわ〜」
仏門⁉
いや、その前にATMの門をくぐったよね?
……ツッコミどころ満載だったが、
夫は渋々貸したらしい。
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###最後の“ご褒美”###
義母は、その間ずっと静かに笑っていた。
その日を境に、義母の様子は目に見えて変わった。
まるで何かを悟ったように、
ぽつぽつと話すことも減っていった。
あっけないくらいだった。
まるで――
「あの子に会えたから、もう大丈夫」
そう言っているかのように、
義母は静かに旅立った。
「できの悪い子ほど、かわいいって言うじゃない?」
義母がかつてこぼした言葉を、私は思い出していた。
ずっと心配だったのかもしれない。
もし本当に憎んでいたのなら、
あの日の、あの笑顔はなかったはず。
兄の突然の訪問。
それは、義母にとって――
**最後の“ご褒美”**だったのかもしれない。
――――――――
###置き土産###
葬儀と納骨が終わり、ようやくひと息……という直後。
兄、また“とんずら”。
夫から借りた20万円を背負ったまま、
風のように消えていった。
「水子の魂百まで」とは言うけれど、
兄の場合は――
「無心の魂、どこまでも」
……らしい。
でも救いは、義母がそれを知らなかったこと。
兄がどんな人間であれ、
最後に会えて嬉しそうだった義母の顔を、私は忘れない。
……まぁ、兄のことはともかく。
義母が笑って、穏やかに旅立てたのなら、
それで、すべて良しとしましょうか。
ほら、もう仏様ですから。
文句は言えません。
義母は最後に、長男に会えて本当に嬉しそうでした。
「できの悪い子ほどかわいい」という言葉を、そのまま体現するような笑顔。
たとえ兄が“20万円置き逃げ”していっても、義母にとっては、それでも“かわいい自慢の息子”だったのかもしれません。
「親の愛は説明できない。ただ“そういうもの”なんだな」
最後の一瞬で、その答えを見せてもらった気がします。
そして、ここであなたに聞いてみたいのです。
あなたの家族にも、「最後まで心配だった人」いませんか?
それとも、「伝説級に自由すぎる親戚」でしょうか?
ぜひコメント欄で、あなたの“家族伝説”を教えてください。
きっと誰かが「うちも同じ!」と笑いながら読んでくれるはずです。
【次回予告】
義母との物語は、ここでひと区切り。
……ですが、次回はおまけの 番外編 をお届けします。
タイトルは、
「墓トークは突然に!? 義母と笑った“あの世の準備”」
シリアスのあとにちょっとユルめのエピソードで、肩の力を抜いてお楽しみください。




