正義の歌が広がり
新京の新満洲国小学、朝の冷たい空気の中、学生たちが校庭に整列する。満洲国の国旗が朝日を受けてはためき、子供たちは制服の襟を正し、国歌を斉唱する。「お御光、天地に満ち…」澄んだ声が響き合い、歌詞は満洲の復興と栄光を讃える。校舎のホールには、指導者として再評価された溥儀帝の肖像画が静かに掲げられ、その隣には現代の満洲復興を象徴する指導者の写真が並ぶ。厳かな雰囲気の中、教師が満足げに生徒を見守る。
授業では、満洲の歴史と繁栄が強調される。教科書には、紅星農場のような「農業エステート」が国を支える基盤として称賛され、「有機商品の輸出で世界に貢献する満洲」と書かれている。子供たちは、農奴の血と汗で育ったブドウや大豆が、東京の「GREEN」や欧米のオーガニックスーパーで売られていることを誇らしげに言う。「我が国の有機商品は、国際市場で高く評価されている。満洲の土と努力の結晶だ!」
放課後、学生たちは溥儀帝の肖像画に敬礼し、校舎を後にする。
その裏では紅星農場の農奴エステートが稼働し続ける。ウイグル人や蒙古人兵士の鞭の下、シナ族農奴が黙々とブドウを収穫し、汗と涙が土に染み込む。その果実は「有機」のラベルを貼られ、国内外の棚に並ぶ。
悪魔は校舎の屋根に座り、この光景を嘲笑う。小悪魔が鏡を掲げ、クスクス笑う。「おハハハ、子供たちの歌声、なんて純粋!でも、そのブドウジュースの味、知ったらどうなるかな?」鏡には、農奴の呻きと、東京で怯える巫女の顔が映る。満洲の国歌は清らかに響くが、農奴エステートの闇は決して歌にのらない。新満洲国の繁栄は、血の赤を隠した有機商品と共に、世界に広がっていく。
終わり