地獄の劇場4
地獄の舞台は、
亡魂と偉人たちの無限の戦いを続け、
悪魔の水族館は新たな怨念を展示し続ける。
地獄の劇場、その果てしない闇の舞台に新たな見世物が加わる。満洲の血と怨念に染まった火中の舞台を離れ、悪魔は別の地獄のコーナーへと観客を導く。
そこでは、ヨシフ・スターリン、鄧小平、朱鎔基が、それぞれの罪に応じた罰を受け、亡魂たちの嘲笑と悪魔の冷笑に晒される。黄海の亡魂、通化事件の日本人、紅星農場のシナ族農奴――彼らの怨念が、この新たな地獄の光景に響き合う。
シベリアの凍てつく荒野、地獄の幻像の中で、ヨシフ・スターリンが孤独に震える。
1945年の満洲戦略作戦でソ連軍を率い、開拓団を蹂躙し、満洲人や日本人をシベリア抑留に送った男だ（Soviet invasion of Manchuria）。彼の霊体は、氷の鎖で岩に縛られ、永遠の吹雪に晒される。目の前には、通化の川に沈んだ日本人亡魂や、シベリアの強制収容所で死んだ抑留者の幻が現れては消える。
「お前の命令で俺たちは凍えた！」
と、開拓団の女の亡魂が叫ぶ。
スターリンは「満洲はソ連の戦利品だった！」と咆哮するが、声は風に掻き消される。
彼の周囲には誰もいない。
かつての同志も、恐怖で従った民もいない。
孤独の罰は、スターリンの心を砕く。「俺は革命の英雄だ…」と呟くが、氷の鎖が軋み、幻像の抑留者が嘲る。
「英雄？お前の野心が満洲を血で染めた！」
悪魔は遠くの雪原に立ち、鏡を掲げて冷笑する。「スターリン、孤独が似合うぜ。永遠に凍えてろ！」
地獄の別の舞台、無限に続く生産ラインの工場。そこでは、鄧小平と朱鎔基が、汗と血にまみれて機械を動かし続ける。鄧小平は、改革開放で満洲を中国の工業ハブに変え、農奴エステートのような搾取を黙認した男（Chinese economic reform）。
朱鎔基は満洲の住民から権益を乗っ取り、満洲の資源と労働力をグローバル市場に差し出した首相だ（Zhu Rongji）。二人の霊体は、鎖でラインに繋がれ、ブドウジュースの瓶や鉄鋼を休むことなく作り続ける。
ラインの周囲には、彼らの被害者の亡霊、と歴史の怨念から新たに生じた紅星農場のシナ族農奴の亡魂が漂う。
「お前らの欲念が俺たちを殺した！」と、コンテナに沈められた男の魂が叫ぶ。満洲の亡魂も囁く。「お前らの悪意する改革が我々の生活を奪った！」
鄧小平は歯を食いしばり、「中国を強くしたのは俺だ！」と反論するが、機械が火花を散らし、彼の手を焼く。朱鎔基は「効率が国を救った！」と叫ぶが、ラインはさらに速くなり、二人を押し潰す。
悪魔は工場の鉄骨に腰かけ、血の色のブドウジュースを飲みながら冷笑する。「働け、効率が求めてるだろ！お前らの『改革』が、満洲の血を絞ったんだ！」小悪魔の鏡には、満洲の工場で働く農奴、東京のスーパーで売られるジュース、ストックホルムの環境会議で賞賛される「エコ」が映る。鄧と朱の罰は、永遠の労働――彼らが崇拝した「生産性」の奴隷となることだ。
地獄の観客――通化事件の日本人亡魂、黄海のシナ族亡魂、満洲貴族の魂――は、この見世物を冷たく見つめる。
スターリンの凍える姿に、日本人亡魂は唾を吐く。「シベリアで死んだ俺の家族を返せ！」
鄧小平と朱鎔基の生産ラインに、シナ族亡魂は叫ぶ。「お前らの連鎖が俺をコンテナに沈めた！」
満洲の亡魂は三人を睨み、「満洲の魂はお前らに踏みにじられた！」と呻く。黄海の底で「同じだね」と呟き合った亡魂たちも、ここでは偉い人達の罰に一瞬の満足を見出すが、互いの怨念は消えない。
悪魔は闇の山からこのドラマを眺め、鏡を揺らす。「おハハハ、スターリン、鄧、朱――みんなくそくらえ！お前らの野心が満洲を地獄にした！」鏡には、1945年のソ連戦車、1978年の改革開放、1990年代から満洲工業搾取、最後は新満洲国の復讐が映る。
人々は新京でワインを傾ける姿も、農場の鞭の音も、この偉人たちの遺産だ。悪魔は満足げに舌なめずりする。
「最高のコレクションだ！」
新満洲は、スターリンのソ連侵攻、鄧小平の経済改革、朱鎔基の市場化が残した血と怨念の結晶だ。スターリンのシベリア抑留は、満洲のアイデンティティに忘れがたい傷を刻み（Japanese prisoners of war in the Soviet Union）、鄧と朱の改革は満洲をグローバル経済の歯車に変え、搾取を隠した（Northeast China）。満洲の成果を乗っ取り、文化的同化、労働環境を破壊することは、彼らの植民地政策の影を映す。
悪魔の冷笑は、西側の黙認とも共鳴する。
今でも、東京のスーパーで売られる満洲産ブドウジュース、ストックホルムで賞賛される「渤海のエコ」は、鄧と朱の植民地政策を無批判に消費する西側の偽善の再現だ。スターリンの罪は、西側のヤルタ会談（ルーズベルトの黙認）で始まり、満洲の被害は歴史の足注に埋もれる。巫女アヤカの恐怖は、この隠された怨念への直感だが、彼女の声は地獄の哄笑に掻き消される。
スターリンはシベリアの孤独に凍え、鄧小平と朱鎔基は無限の生産ラインで奴隷となる。通化事件の日本人亡魂、黄海のシナ族亡魂、満洲族の魂は、彼らの罰を嘲りつつ、互いの怨念を忘れない。悪魔は闇の山から「働け、効率が求めてる！」と冷笑し。
注: スターリンの満洲侵攻、鄧小平の改革、朱鎔基の経済政策は歴史的事実（Soviet invasion of Manchuria, Chinese economic reform, Zhu Rongji）。物語の新満洲国はフィクション。
