10.突入《亡者の玄関口》
AIを使用して書いてみるのも楽で新鮮で面白かったけど、やっぱり自力で地道に執筆する方が、楽しいし満足感がありますね。
今後も『パンゲニアTRPGシリーズ』では、AIを利用することはありません。他作品でAIを使用することがあっても、あらすじ等で明記いたします。
《ティワリカ島》に一週間ほどの逗留を経て、【一番星号】は再び《大八界洋》へと漕ぎ出した。職人軍団による徹底したメンテナンスを受けた 小ぶりながらも品の良い帆船は、満足そうに煌めいている。
「秘宝館、スゴかったな!」
「スゴかったね! 地下が丸ごと研究施設になってるなんてさ!」
【一番星号】に戻ってからも、興奮冷めやらぬ様子で レイネルとチョミィは秘宝館で見たアレやコレやを語り合っている。
「子どもの遠足に行ったんじゃないぞ。【天前文明の鍵円盤】については、調べてきたんだろうな?」
《ティワリカ島》の秘宝館で入手した情報の 分厚い写本を手に、ダンデも船長室から出てきた。レイネルとチョミィが【天前文明】の遺物を解析する部署にて【天前文明の鍵円盤】を調べてもらっている間、ダンデとムームーは古代文明【セノアテ】の跡地について、最新の詳しい情報を仕入れていたようだ。
「レイネルさんとチョミィさんだけ、中に入れてズルいですよ!」
パトはウゲン・サゲン兄弟と食料品や日用品の買い出しを任されていたせいで、秘宝館を見て回ることはできなかった。代わりに《ティワリカ》名物をひと通り堪能してきたのだから、ズルいなどと言われる筋合いはない。
「パトくんだって、美味しいものいっぱい食べてきたんでしょ!」
土産を期待していた分、合流時はチョミィの方が落ち込んでいたものだった。
「チョミィ、キャプテンも遠足じゃねぇって言ってるじゃん。【天前文明の鍵円盤】について調べるのが、あたしらの仕事だろ! ……で、研究員の姉ちゃん、何て言ってたんだっけ?」
「そうだった! やっぱりこの円盤、何らかの建造物の【鍵円盤】で間違いないそうです!」
「レイネルも一緒に聞いてきたんじゃないのか」と、呆れてダンデは額を押さえている。悪怯れる様子もなく、レイネルはチョミィの背中を叩いては「さすが!」とケラケラ笑っていた。
「ふむ、宝物庫の確証はないか。……まぁしかし、鍵が必要な建造物であるなら、金品以外にも価値はありそうだな。今まで通り、保管はレイネルに任せるぞ」
「アイアイ、キャプテン!」
レイネル側からの報告が済み、今度はダンデが持ってきた資料を広げる。
「俺の方でも確認したところ、航路はこのまま 北に進路を合わせたままで良さそうだ。ただ……ちっと厄介なモノが、この先にあってな」
「厄介なモノ?(✕3)」
レイネルだけでなく、チョミィとパトも身を乗り出して ダンデが広げた海図を覗き込む。窓際にもたれて黙り込んでいたムームーが、険しい顔で口を挟んだ。
「船乗りの間では、結構 有名な場所でね。迷ったら二度と出られない濃霧の海域――通称《亡者の玄関口》。実際、オレっちの知ってる海賊船も幾つか、そこで消息を絶ってる」
「ん? 【ドロテア号】の話か?」
「違う。……え、【ドロテア号】も消えちゃったの?」
ダンデとムームーのやり取りを聞くに、相当な数の船を、その海域は呑み込んできたようだ。
「《亡者の玄関口》を避けて通る事も不可能ではないが、かなり大回りになる上、もう一回の補給が必要になる。迷いさえしなければ無茶な航路ではないから、てめぇらの覚悟が欲しい」
船長判断として、濃霧の海域を突っ切るつもりだと ダンデは言っている。
「覚悟も何も、ムームーさんの命はずいぶん前から、キャップに預けっぱなしにしてるから」
「ボクだって、キャプテンの船なら 何も怖くありませんよ!」
レイネルたちより長く 船旅を共にしているムームーとパトに、迷いはない。
見張りをしているウゲンも、夕食の仕込みをしているサゲンも、既に覚悟を差し出していた。
「……僕も、レイネルと一緒なら」
「うぇ、オバケ出んの? そいつはちょっとヤだなぁ」
「レイネルぅぅ!! この流れで拒否らないの! ……オバケ出たら、僕が“破ァ!!”してあげるからっ!!」
「おおう、今、胸がキュンッ! てしちゃった……(ポッ)」
「はい、キャップぅ!! 全員分の覚悟回収しましたよぉ!」
さっさと話を進めてくれと手振りで促すムームーに、ダンデも慣れた顔で頷き返す。
「集計 御苦労。【一番星号】は、このまま《亡者の玄関口》に向かうぞ」
「アイアイ、キャプテン!(✕4)」
ダンデの予定に違わず、【一番星号】は濃霧の海域へと前進する。
霧の中で、何が人を惑わすのか――この船にはまだ、知るものはいない。
**
最後に通り過ぎた島が見えなくなって二日、海上に薄く霧がかかるようになってきた。【一番星号】の向かう先には、雲のような白い塊が広がっている。もう少し進めば、甲板の上でさえ 目視できなくなってしまうだろう。
「やだもう、ティコが優秀! ティコが優秀なんですよ!」
海上がすっかり霧に覆われ 一歩先まで見えなくなろうとも、海中は何も変わらず 視界を遮るものはない。パトが飼い慣らしているスナメリ種の【クジラ】であるティコが海中から斥候を務め、感覚を狂わせられることなく 【一番星号】は順調に船旅を進めている。
「これは案外、スムーズに抜けられるかもしれんな」
ティコからの位置情報と海図を照らし合わせ、拍子抜けした様子で ダンデはそんな事を口にした。通常の海域でもトラブルはつきものだ、油断はしないに越したことはないが……。
「しばらく障害物はないみたいですよ、安心して進めますね!」
海中からの報告を受け取り、弾んだ声でパトが告げた 直後だった。
「キャプテン、止まれ止まれーっ!!」
「正面に何か 大きな影がっ!! このままだとぶつかります!」
甲板で濃霧を楽しんでいたレイネルとチョミィが、血相を変えてダンデのもとに飛び込んできた。パトだけが 怪訝な顔を返す。
「二人とも、何言ってるんですか? 進路ならティコがちゃんと確認してくれてます。霧が濃くなっただけでしょう?」
「いや、ホントに何かあるんだって! 他の船かもしれねーし、ぶつかったらヤバイって!!」
「海中からは見えてないのかもよ、パトくん!」
「海中からは見えなくても……」とパトは納得のいかない顔をしているが、ダンデは何か勘付いたように表情を引き締めた。
「報告、御苦労だったな。レイネルとチョミィはムームーに声かけて、装備を整えてこい。パトはウゲンとサゲンを呼んで、船室で待機だ」
「アイアイ、キャプテン!(✕3)」
ウゲンは倉庫整理、サゲンは調理器具の手入れをしているはずだが、ムームーはどこに居るのだろう。「この霧じゃ見張りは甲板で十分だ」と ダンデに言われて、レイネルはチョミィと甲板で過ごしていたのだ。てっきりダンデの傍らに控えているとばかり、レイネルもチョミィも思い込んでいた。
「ムームーさぁん! キャプテンが呼んでますよー!」
「おーい、ヌメった年増ー! あたしらのラブラ振りに耐性のない、哀れなおっさーん!」
「触手の餌食担当でキャプテンに塩対応されてる、哀れなおっさーん!」
「お兄さん!! ここぞとばかりに酷いことばっかり言って!!」
「なんだ、見張り台にいたのかよ」ぷりぷりと膨れながら滑り降りてきたムームーに、手早く船長指示を伝える。すぐに支度にかかるのかと思いきや、一度 立ち止まって ムームーは霧の向こうにぼんやりと浮かぶ『何か』の影を睨みつけた。
「……念のため。幻惑解除の【呪歌】を唄ってから行くよ。レイネルちゃんたちは 先に準備しておいて」
「わかった」「キャプテンにも伝えておきますね」
ムームーのことだから 自分から無茶はしないだろう。素直に頷き、レイネルとチョミィは船内へと踵を返す。駆け出す間に、伸びやかなムームーの唄声が 背中の向こうに流れ出した。
**
「やっぱり、こっちに直接 幻惑とか かけられてるわけじゃないみたい」
ムームーの【呪歌】が終わっても、『何か』の影はそこにある。それどころか 濃霧の中であるにもかかわらず、はっきりとその『正体』が浮かび上がっていた。
【一番星号】の行く手を阻んでいたのは、古めかしくボロボロに朽ちた帆船だった。武装の跡から、かつては海賊船だったことがうかがえる。
「どうだ、パト。ティコはまだ、“何もない”って言ってるのか?」
「……はい。ティコの超音波では、何も観測できないそうです」
「そうか。どうも“惑い”の原因は、こいつのようだな」
海中からの観測――地続きには物理的に何も存在していない。しかしそれは霧が映す蜃気楼ではなく、乗組員の不安が見せる幻覚でもない。
「それじゃ、コレは何なんだよ?」
焦れて問うレイネルに「俺も対面するのは初めてだ」と前置きしてから、ダンデは正面の『それ』を指差した。
「幽霊船ってヤツだ。俺たちが生きている次元とずれた時空にあるはずの……いわゆる『あの世』に繋がっている場所らしい」
パトが「ヒッ」と小さく悲鳴を上げる。思わずレイネルもチョミィの手を握りしめた。
「チョミィ、オバケだ!! 今すぐ“破ァ!!”を!」
「えっ!? ちょっとコレ、僕が想定してたサイズじゃない!」
意外にも余裕のあるレイネルとチョミィの反応に、ダンデは口の端を吊り上げる。
「海中からは特定できないが、質量はあるみたいだぜ? 擬態型の魔物かもしれん、誰か乗り込んで様子を見てこい」
「擬態型の魔物って、例えば 何ですか?」
オバケの怖さより好奇心が勝ったパトが質問すると、まずダンデはムームーを隣に呼びつけた。その肩に ぽん、と ゴツゴツ厳つい手を乗せる。
「わかりやすく言えば、巨大なタコだ。てなわけで触手の餌食担当、出番だぞ」
「ここにサービスシーン持ってくるの!?」
日頃 お色気担当を全面に出している割に、あまりムームーは乗り気ではない顔で幽霊船を見やる。人差し指で自分の額をトントンやった後で、一つ 提案を持ちかけた。
「じゃあさ、こうしてみない? 触手によるサービスシーンだったとして、やっぱり一番のキレイドコロが絵面的にも受けが良いと思うのよ。そんなわけだし、乗り込む人は多数決を取ってみようよ!」
「なるほど、一理あるな」自慢の触角を軽く撫で、ダンデは提案を受け入れた。
「サクっと決を採るぞ。【一番星号】で 一番のキレイドコロだと思う奴を 指差してみろ!」
レイネル、チョミィ、パト、ムームー、ウゲンにサゲン、そしてダンデ。全員が一斉に『キレイドコロ』を指差した。
「……決まったな」一人を除いて、全員が同じ人物を指差していた。
「チョミィがレイネル、他 全員一致でムームーだな」
「なんでムームーさん、嫌がってたくせに 自分に票を入れちゃうんですか? ボクを指差しても 良かったんですよ?(どうせムームーさん確定だったし)」
「ごめん、ごめんパトちゃん……どう考えても、ムームーさんが一番艶っぽくて美人だったから、つい……(どうせオレっち以外、選ばれるわけないじゃーん)」
「おいチョミィ! あたしが触手の餌食担当になったら どうするつもりだったんだよ!!」
「痛い痛い、ごめんねレイネル!! でも、レイネルが一番 綺麗で可愛いから、自分に嘘がつけなくて……っ!!」
「この野郎っ! 大好きっ! そんな正直者は、抱き締めてチューしてくれるわ!!」
「こんな人前でやめてよ! 鼻血出ちゃうでしょ!!」
事実上の満場一致により、ムームーが幽霊船に乗り込み 様子を見ることとなった。
残念ながら(?)擬態型の魔物などではなく、物理的に乗船できることも確認できた。ウゲンに【一番星号】の甲板で、サゲンに幽霊船の甲板で、互いに命綱を繋いで待機してもらい、都度ティコと連絡を取りつつ探索を進める方針で固まった。
「この幽霊船を退ける方法が見つかったら、速やかに【一番星号】に帰還する。通常の空間と繋がりが違うかもしれないから、絶対にはぐれるなよ」
「何かのきっかけで幽霊船が消えそうになったら、すぐティコとウゲンさんに通信入れます! 【声飛ばし】が有効なのは確認済みです」
レイネルとチョミィを先頭にムームー、パトと続き、しんがりはダンデが守る。怪しい音や気配がないか 時折 ムームーが探りを入れ、慎重に一行は幽霊船の内部へと踏み込んだのであった。
【NPC設定 ファイル その4】
[ライム・オルカリオ]22歳 女性
・嵐の民 シャチ部族
・バトルジョブ(推定)《漁人》
・「ホエール・レッツラー!」を合言葉に、大八界洋を股にかけて活動する【クジラ】愛護団体【パクスマーレ】の副団長。オレンジは双子の兄。
・スピードを武器とする《漁人》には珍しく、重量武器を得意とするパワーファイター。
・荒事が苦手でおとなしい子どもだった兄の代わりに、いじめっ子やガキ大将にやり返すタイプだった。頭でっかちで理屈っぽい兄オレンジをもどかしく思いつつも、理知的な(ライムにはそう見える)兄は憧れの対象でもある。




