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エピローグ

 恵が卒業してから二年。僕も高校を卒業し、音楽の専門学校に進んだ。少しでも、作詞作曲をする恵の力になりたくて、ギターの練習ができるところを選んだ。今日はお互いの卒業祝いをするということで、恵の家に招待されていた。両親には卒業式が終わり次第、そのまま彼女のところに向かうと伝えていたため制服のままだ。いつものようにインターホンを鳴らしてみたが、案の定出なかった。持っている合鍵で入ろうとした瞬間、扉が勢いよく開いた。

「ごめんね、待たせちゃって」

 袴で卒業式に出ると言っていたから袴姿を期待していたが、もう既に着替えてしまったようだ。髪だけ綺麗に結われている。メイクもいつもより大人びて見えた。

「僕の方こそ、遅くなってごめんね。それよりも袴姿見たかったな」

「写真たくさん撮ったから、あとで見せるよ。それより、その花束は?」

「あぁ、これは恵の卒業祝い。ルピナスっていう花なんだ。花言葉は想像力とか、いつも幸せ」

 玄関で靴を脱ぎ、恵にそっと差し出す。

「いい花言葉だね。嬉しい、ありがとう」

 花瓶の代わりになるものあったかなと言いながら恵が棚を開け始めたので、空いた手で自分のカバンを開けた。

「実は花瓶も買ってきたんだ」

「用意周到だね。すぐに飾れるから嬉しい。それよりも翔太の制服姿見るの久々。高校生活思い出すわ」

「なんだか恥ずかしくなるじゃん。僕も着替えて来れば良かったかな」

 なんでもない会話をしながら、リビングのソファに座る。ラベンダーのアロマの香りが広がっている。引っ越ししたばかりのときは荷物が少なかったのに、今は楽器や機材が部屋中に溢れかえっている。今はギターのテクニックを磨くことで精一杯だけど、将来は二人で曲を作れるように、専門学校では作詞作曲の勉強もしようと考えている。

「そういえばね、この間投稿した動画の再生数が一万超えたの。すごいでしょ」

 恵は在学中も曲作りを続け、曲ができる度に歌っては動画サイトに投稿していた。はじめは見向きもされなかったが、今では少しずつファンもできはじめ、再生数も伸びている。

「すごいじゃん、やっぱりあのとき諦めなくて正解だったね」

 いつもの花のような笑顔に心がふわりと浮き上がる。

「翔太のおかげだよ」

 そう謙遜しつつも表情は嬉しそうだった。いつの間にか、渡した花を食卓の真ん中に飾った恵は僕に訊いてきた。

「ねぇ、どうしていつも花をプレゼントしてくれるの?」

 それは初めて恵と出会ったときから、笑顔が花のようだと思っているから。でも、そんなネタバレは今しない。

「秘密だよ」


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