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終局の決戦、そして新たな未来へ

敵艦の爆発が静かに消え去り、宇宙空間には静寂が戻っていた。だが、私たちにとってそれは決して終わりを意味するものではなかった。むしろ、新たな敵の姿がすでに目の前に現れていた。


「ライナー、あれを見ろ!」


カインの叫びに視線を向けると、モニターには新たな敵艦隊が映し出されていた。先ほどの敵艦を超える巨大な艦船が中央に位置し、その周囲を護衛艦が取り囲んでいた。艦の形状や構造は、これまでのどの艦隊とも異なっており、まるで異次元から現れたかのような圧迫感を放っている。


「まさか…ヴァルゼック大佐が仕掛けてきたのか?」


私は驚きながらもすぐに冷静さを取り戻した。これは明らかに最終決戦だ。敵の主力部隊が全力でこちらを叩き潰しに来ている。


「ライナー、どうする!?奴らはこれまでの敵とは比べ物にならないぞ!」


カインの声が切迫していた。彼も、これほどの艦隊を前にすれば焦りを隠せないのは当然だ。しかし、ここで怯んでいては全てが終わる。


「落ち着け、カイン。今こそ俺たちのすべてを出し切るときだ。」


私は自分自身にも言い聞かせるように言葉を発し、冷静に戦術を組み立てていった。これまでの戦いで学んだすべての知識と経験を生かさなければ、勝つことはできない。そして、ここで勝利を掴むことができれば、帝国に平和をもたらすことができる。


「全艦隊に告げろ。これが最終決戦だ。奴らの主力艦を撃破するために、最大限の火力を集中させろ。」


私は艦隊全体に指示を送り、モニターに映し出された敵艦の動きを注視した。敵はまだ攻撃を仕掛けてこない。まるでこちらを試すかのように、ゆっくりとした動きで迫ってくる。


「彼らの目的は、時間を稼ぐことか?」


私はふと疑問に思った。ヴァルゼック大佐は狡猾な戦術家だ。単に力で押し切ろうとするような単純な戦い方はしないはずだ。彼には何か別の狙いがあるのかもしれない。


「カイン、敵の動きを分析してくれ。何か見落としているかもしれない。」


私はカインに命じ、彼も即座に分析を開始した。モニターに映し出されるデータをじっと見つめながら、彼は眉をひそめた。


「ライナー、何かおかしい。敵艦のエネルギー出力が異常に低い…これは罠かもしれない。」


カインの言葉に私はすぐに反応した。敵が意図的に火力を抑えているのなら、それは彼らが別の策を練っている証拠だ。


「くそ…やられたかもしれない。」


私は歯を食いしばりながら、すぐに対策を練った。今は敵の動きを止めることが最優先だ。彼らの罠に嵌まる前に、攻撃を仕掛けなければならない。


「全艦隊、敵の主力艦に向けて全火力を集中させろ!奴らが何を企んでいるかは分からないが、ここで一気に仕掛ける!」


私は指示を出し、艦隊全体が動き始めた。エネルギー砲が一斉に火を吹き、まるで光の洪水のように敵艦に向かって突き進んでいく。だが、その時だった。


突然、モニターが暗転し、艦内が揺れた。


「何だ!?何が起きた!?」


カインが驚いた声を上げる。私はすぐにモニターを確認しようとしたが、表示されたのはノイズだけだった。


「敵のジャミングか…!?」


フィリシア中尉の声が通信機越しに響いた。敵が私たちの通信やレーダーを妨害しているのだ。これで艦隊の連携が取れなくなれば、我々は無力になる。


「くそっ、敵の狙いはこれだったのか…!」


私は拳を握りしめ、状況を冷静に分析しようと試みた。敵は直接的な攻撃ではなく、こちらの動きを封じるための電子戦を仕掛けてきている。これでは目の前の敵の動きが見えない。まさに絶望的な状況だ。


だが、その時、カインが声を上げた。


「ライナー、まだ手がある!俺たちは視覚に頼らずに戦えるはずだ!」


私は彼の言葉にハッとした。確かに、無重力空間での戦いでは、感覚だけが頼りではない。私たちはこれまでに何度も、敵の動きを読んで戦ってきた。たとえ視覚が封じられても、戦術を駆使すれば勝機はある。


「よし、カイン。俺たちの感覚を信じて戦うぞ。」


私は再び冷静さを取り戻し、艦の操作を手動に切り替えた。今こそ、これまで培ってきた無重力戦の技術を最大限に発揮する時だ。


艦内の照明が薄暗くなり、緊張感が漂う中、私は感覚を研ぎ澄ませた。敵艦がどこにいるか、どのタイミングで攻撃を仕掛けてくるかを考えながら、次の行動を決める。


「エネルギー砲を準備しろ。手動で照準を合わせて、敵の動きに合わせて攻撃するんだ。」


私は指示を出し、艦のクルーたちもすぐに動き始めた。敵のジャミングによって自動照準が封じられている今、私たちは手動で攻撃を行わなければならない。


「ここだ…!」


私は直感で敵の位置を読み、エネルギー砲を発射した。光弾が虚空を貫き、見えない敵艦に向かって飛んでいく。


次の瞬間、爆発音が響いた。敵艦に命中したのだ。


「やった…!」


私は喜びを抑えながら、さらに攻撃を続けた。カインもまた、隣で奮闘している。私たちは敵の攻撃をかわしながら、少しずつ戦局を有利に進めていった。


しかし、敵の主力艦はまだ健在だった。こちらの攻撃を受けてもなお、巨大な艦はゆっくりと動き続けている。その威圧感に、私は再び緊張を感じた。


「奴らの主力艦を倒すには、もっと大きな一撃が必要だ。」


私はつぶやき、最後の一手を考えた。敵の艦隊を完全に壊滅させるには、通常の火力では足りない。もっと強力なエネルギー兵器を使うしかない。


「フィリシア中尉、艦隊の最大エネルギー砲を準備してください。これで一気に決めます。」


私は通信機で指示を送り、エネルギー砲の準備が整うのを待った。敵のジャミングはまだ続いているが、こちらの艦隊は徐々に連携を取り戻しつつあった。


数分後、ついに最大エネルギー砲の準備が整った。私は深呼吸をし、冷静に照準を合わせた。敵の主力艦が見えない中でも、感覚を信じて狙いを定める。


「ここで終わりだ…!」


私はトリガーを引き、エネルギー砲を発射した。光が一瞬で虚空を貫き、まるで全てを飲み込むかのように敵艦へと向かっていく。


次の瞬間、宇宙空間が激しい爆発音で震えた。敵の主力艦がついに崩れ落ち、巨大な炎と共に消え去った。


静寂が戻った。敵艦は全滅し、戦場にはもう誰もいなかった。私たちはついに、決定的な勝利を掴んだのだ。


「終わったか…」


私は深いため息をつき、シートに体を預けた。これまでの戦いが頭の中で走馬灯のように流れていく。


「ライナー、やったな。」


カインが笑顔で肩を叩いてきた。彼の表情には安堵が浮かんでいる。私は彼に頷き返し、少しだけ笑顔を見せた。


「まだだ、カイン。戦争はこれで終わるかもしれないが、俺たちの戦いは続く。」


戦争は終わったが、宇宙にはまだ多くの課題が残っている。平和を守るためには、これからも戦い続けなければならない。だが、私は仲間たちと共に、その未来を切り開くことを決意した。


「俺たちは、これからも進み続けるんだ。」


私は静かにそう呟き、新たな時代に向かって歩みを進めるのだった。



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