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新たな仲間、そして階級社会の厳しさ

「ライナー、大丈夫か?」


 ふと、ヘルメット越しに聞こえた声に意識が戻る。すぐ隣を漂う仲間の一人が声をかけてきた。彼の名前はカイン・ヴァルフォード。中級士官で、私と同じ階級にいる。帝国軍のエリートであり、無重力戦闘の経験が豊富だ。


「カインか、ああ、なんとかやってる。」


 私は息を整えながら答えた。無重力空間での戦闘に少しずつ慣れ始めているとはいえ、まだ完全に適応しきれてはいない。だが、カインはそんな私をじっと見つめ、少し心配そうな顔をしている。


「お前、やはり動きが硬いな。地上の戦いとは勝手が違う。もっと推進装置を信じろよ。」


 カインのアドバイスは的確だった。彼は無重力戦のベテランで、宇宙での動き方を熟知している。地上戦術の知識が通じないこの環境では、彼のような経験者の言葉が何より重要だった。


「ありがとう、もう少し慣れればいける気がする。」


 私は素直に感謝を伝えた。だが、そんな会話もつかの間、通信が割り込んだ。


「ライナー、カイン、前方に敵艦隊が接近中だ。すぐに迎撃体勢に入れ!」


 命令を下したのは、フィリシア・シュヴァルト、私たちの上官である中尉だ。彼女は厳格な性格で知られており、軍規に対して非常に厳しい人物だ。階級社会が厳しいこの帝国軍において、彼女の命令に逆らうことは絶対に許されない。


「了解しました、フィリシア中尉。」


 カインが即座に返答し、私も続いて迎撃体勢に入る。敵艦が近づいてくるのが見える。ここで失敗すれば、私たちは壊滅的なダメージを受けるかもしれない。


「ライナー、俺たちの右側を守れ。そこが最も狙われやすい位置だ。」


 カインが的確な指示を飛ばす。私はその言葉に従い、推進装置を使って右側に移動する。この無重力戦で重要なのは、仲間との連携と素早い動きだ。地上戦での個別の戦術とは違い、ここではチーム全体の動きが鍵になる。


「ここなら…!」


 私は予測通りに敵の攻撃を避け、反撃の準備を整えた。しかし、無重力空間での反応速度にはまだ限界を感じる。地上では瞬時に身体を動かしていたが、ここではほんのわずかなタイムラグがある。その差が命取りになる。


「奴らが来るぞ!全員、集中しろ!」


 フィリシア中尉の鋭い声が響いた。彼女は戦場での判断力に優れており、その冷静さは部下たちにとって心強いものだ。私も彼女の指示に従い、敵艦隊に向けて光弾を放った。


 しかし、攻撃が命中した瞬間、突然無線に異変が生じた。


「——ッ、これは!?」


 無線が一瞬切れ、激しいノイズが耳をつんざく。私たちの戦艦全体が揺れ始め、光弾の一部が弾き返されたかのように跳ね返ってきた。


「防御システムに異常発生か!?全員、回避しろ!」


 フィリシア中尉が叫び、私たちは慌てて敵の反撃を避けるために動き始めた。だが、カインがいる位置が危険な状態にあるのを見逃すわけにはいかなかった。


「カイン、危ない!」


 推進装置を最大限に使い、私は彼の方に飛び込んだ。間一髪で、彼を押しのけたその瞬間、エネルギー砲が私たちのいた位置を貫いた。


「ライナー!」


 カインが驚いた声で叫んだが、私はすぐに意識を集中させた。反撃を続けるべきだ。


「俺は無事だ!まだやれる!」


 私は敵の攻撃を避けつつ、再び光弾を放つ。地上での戦術が通じないこの無重力戦場で、私は少しずつ新しい戦い方を見つけつつあった。しかし、それでも完全に適応するにはまだ時間がかかるだろう。


「ライナー、ありがとうな。だが、次からはもっと自分を優先しろよ。」


 カインが肩を叩いてくる。彼は信頼できる仲間であり、ここでの唯一の支えだ。


「気にするな。それに、俺もお前から学ばせてもらってる。」


 そんなやり取りを交わしながら、私たちは再び戦場へと戻る。


 この宇宙での戦いは、地上とは違い、仲間との連携が重要だ。だが、それ以上に厳しいのは、この帝国軍の階級社会だった。上官の命令に従い、少しでもミスをすれば即座に叱責される。階級が全てを支配するこの世界で、私は自分の戦術をどう活かしていくのか模索し続けていた。



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