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無重力の戦場で、地上戦術の限界を知る

「これが…宇宙での戦いか。」


 私は浮かぶ感覚をまだ完全に受け入れられずにいた。無重力――地上にいた頃の常識が全て崩れ去るこの空間は、想像以上に厄介だった。


 目の前に広がる戦場。光り輝く星々が無数に浮かび、そこに数え切れない宇宙艦が展開している。小型のドローンが群れをなして飛び交い、艦隊同士の砲撃が無重力空間を切り裂く。


 指示を飛ばす声がヘルメット越しに響く。


「ライナー、左翼に移動せよ!敵艦隊が進攻中だ!」


「了解。」


 即座に反応するが、思うように身体が動かない。無重力の環境では、推進装置に頼るしかなく、地上でのように素早く足を動かすことはできない。まるで、身体全体が空間に漂っているかのようだ。


 数秒遅れて推進装置が作動し、私は戦場へと突進した。だが、戦闘のたびに違和感がつきまとう。地上での経験が、ここではほとんど無力に感じる。


「ここでは、陣形も意味をなさないのか…?」


 これまで、地上の戦場では常に敵の動きを読み、陣形を整え、有利な位置を確保することが戦術の基本だった。しかし、無重力では上下がなく、どこに敵が潜んでいるのか全く分からない。


 しかも、攻撃はあらゆる方向から飛んでくる。敵艦から放たれた光弾が、こちらの艦隊に向かって高速で迫ってくるのを視認しても、無重力空間では素早く反応することができない。


「ライナー、危ない!」


 仲間の声がヘルメット越しに響いた。次の瞬間、強烈な衝撃が私を襲う。艦隊から発射されたエネルギー砲が、私のすぐ横を掠めて爆発し、その衝撃波が私のスーツを激しく揺さぶった。


「くそっ、地上とは全く違う…!」


 私は無重力の戦場に慣れようと必死だったが、あまりに感覚が違いすぎる。何度も体勢を崩し、敵の攻撃を避けることさえ困難だった。


 そして、脳裏をよぎるのは、過去の自分――地上戦における天野優斗としての記憶だ。9999時間も戦術ゲームに没頭し、どんな戦場でも勝ち抜いてきた自信があった。しかし、それは地上での話。ここ、宇宙では通用しない。


「どうすればいい…?」


 思考が一瞬止まる。その時だった。目の前にある艦隊が攻撃を開始した。光弾が直線的に敵艦隊へと飛んでいくが、敵は驚くべき速度で回避していく。


 「敵艦の動きを読め、上下もないが奴らのパターンは存在するはずだ!」


 先ほどまで指示を飛ばしていた隊長の声が聞こえた。パターン…?


 「待て…パターンか。」


 私は、再び地上戦での経験を思い出した。確かに、無重力だろうと、敵が一定の法則に従って動いているのなら、それを読めば対処できるかもしれない。敵が攻撃を仕掛けるタイミングや方向を予測し、そこから次の一手を考える――これなら通用するかもしれない。


「戦術が通じるかどうか、試してみるしかないな。」


 私は、推進装置の調整を始めた。宇宙空間での自分の動きを最適化しつつ、敵艦の動きを注視する。攻撃を繰り返すたびに、敵は微妙な軌道を描いている。これまでとは違う戦術を編み出す時だ。


「次の攻撃は、あそこに来る…!」


 予測通り、敵の光弾が放たれた。私は反射的に方向を変え、無重力空間でその攻撃を回避する。やれる。少しずつだが、この宇宙で戦う術が見えてきた。


「俺の戦術が、ここでも通用するなら――!」


 地上戦術を宇宙戦に応用することはまだ難しい。しかし、次の一手を読みながら、私は無重力空間での新しい戦い方を見つけていく。

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