1−4 森を進む二人と新たな出会い
しばらく進むと突然、遠くから爆発音が聞こえてきた。シンとカインはその音の方へ向かった。音の方へ走ると、そこにはゴブリンの群れに襲われているエルフの姿があった。エルフは必死にゴブリンと戦っていたが、数が多すぎて圧倒されていた。
シンとカインはその爆音の元に辿り着くと、杖を持ってゴブリンの群れと戦うエルフがいた。エルフは美しい銀髪と長い耳を持ち、透き通るような青い瞳が特徴的だった。彼女の動きはしなやかで、魔法を使ってゴブリンを次々と攻撃していたが、その数の多さに苦戦しているようだった。
「助けに入ろう。」シンとカインは顔を合わせて頷き、一斉にゴブリンの群れに突進した。シンは素早く刀を抜き、ゴブリンの攻撃をかわしながら、鋭い斬撃を繰り出した。ゴブリンが振り下ろす棍棒を紙一重で避け、一閃で切り伏せる。カインもまた、遠距離から正確な射撃でゴブリンを次々と倒していった。彼の矢はまるで意志を持つかのように、ゴブリンの急所を確実に射抜いていく。
エルフは二人の援護に驚きながらも、その力強さに感謝し、再び魔法を強化してゴブリンを撃退し始めた。シンの刀が最後のゴブリンを斬り倒すと、戦闘は終わりを迎えた。
「ありがとう。助かったわ。」エルフは一息つきながら、二人に感謝の言葉を述べた。彼女の声は透き通っており、優雅さが漂っていた。
「大丈夫か?」カインが尋ねると、エルフは微笑みながら頷いた。しかし、その微笑みも束の間、エルフはふらつき、よろめいた。どうやらこの戦いの中で傷を負っていたらしい。
「その傷で無理しない方が…」シンは心配そうに声をかけた。
エルフは「大丈夫よ…」と言いながらその場で倒れてしまった。
シンは素早くエルフの元に駆け寄り、彼女を支えた。「無理しない方がいい。ここで少し休もう。」シンは優しく言った。
カインもエルフの傷を確認しながら、「少し休んで傷を癒した方がいい。俺たちがついている」と励ました。
エルフは感謝の気持ちを込めて微笑み、「お言葉に甘えようかしら…」と言った。彼女はそのままシンとカインの助けを借りて、近くの安全な場所に移動した。
三人は開けた場所で焚き火を起こし、エルフの傷を手当てすることにした。シンは水を汲んできてエルフに差し出し、カインは応急処置のための薬草を探しに行った。
カインが戻ってきて、エルフになぜ森でゴブリンに襲われていたか、先を急ぐ理由を聞いた。「そうね…旅の途中でこの森に迷い込んでしまって…ゴブリンに襲われたの。」
シンは興味深そうにエルフを見つめた。「旅の途中で?何か目的があるのか?」
エルフは頷き、「ええ、アストラルヴィルという街を目指しているの。そこで大事な用事があるのだけれど、ゴブリンに襲われてしまって…」
カインは驚きながら、「アストラルヴィルだって?俺たちもその街を目指しているんだ。もしよければ、一緒に行動しないか?」と提案した。
エルフは微笑み、「それは心強いわ。ありがとう。私はネヴィア。これからよろしくね。」と自己紹介をした。
シンはネヴィアに微笑み返し、「俺はシン。この森を抜けてアストラルヴィルを目指している。」と自己紹介をした。
カインも続けて、「俺はカイン。この森で生まれ育った狩人だ。」と自己紹介をした。
ネヴィアは感謝の気持ちを込めて二人を見つめ、「ありがとう。二人の助けがなければ、今頃どうなっていたか…」と感謝を述べた。
カインは焚き火に薪をくべながら、「最近、この森は異常だ。魔物や魔獣の数が増えている。何かが影響を与えているのかもしれない。」と話した。
ネヴィアは頷き、「確かに、私もここに来る途中で感じた。何か大きな力が働いているような気がするわ。」と同意した。
三人は互いに協力して森を進むことにした。道中、彼らは軽い戦闘や雑談、食事を共にしながら進んだ。カインは狩りの腕を活かして食糧を調達し、シンとネヴィアは火を起こして食事を作った。ネヴィアの魔法の力で簡単な治癒を行い、疲れを癒した。
ある夜、焚き火を囲んで休んでいる時、カインはふとネヴィアに尋ねた。「ネヴィア、君はエルフだから、俺たち人間よりも長生きするのだろう?今いくつなんだ?」
ネヴィアは微笑み、「エルフの年齢を尋ねるなんて、失礼じゃないかしら?」と冗談めかして答えた。
カインは少し照れながら、「ああ、すまない。単純に興味があっただけだ。」と謝った。
ネヴィアは微笑んで首を振り、「気にしないで。私はエルフの中でもまだ若い方よ。今年で180歳になるわ。」
シンは驚きの表情を浮かべ、「180歳…それでも若いんだな。エルフの寿命はどれくらいなんだ?」と尋ねた。
ネヴィアは焚き火を見つめながら答えた。「エルフの寿命は1000年を超えることもあるわ。でも、それぞれのエルフによって違うの。私の一族は長寿の家系な方ね。」
シンとカインはネヴィアの話を聞きながら、自分の短い人生と比べて考えさせられた。
やがて、森を抜けると、彼らは広大な平原に出た。遠くにはアストラルヴィルの街が見え、その先には広がる街道も見えた。
シンは目を輝かせ、「あれがアストラルヴィルか。思ったより大きな街だな。」と感嘆の声を上げた。
カインは満足げに頷き、「そうだ。ここから街までそう遠くない。あと一息だ。」と励ました。
シンは歩きながら、「カインはこの街に何度か来たことがあるのか?」と尋ねた。
カインは笑い、「ああ、何度かある。アストラルヴィルは交易の中心地で、色々な種族や文化が集まる場所だ。きっとシンも驚くことだろう。」と答えた。
カインは笑い、「特に市場は見逃せないぞ。世界中から集まる珍しい品々が手に入るんだ。」と付け加えた。
シンは頷き、「それは楽しみだな。まずは情報を集めて、元の世界に帰る手がかりを探さないとな。」と決意を新たにした。
ネヴィアはシンに向かって、「きっと見つかるはずよ。」と励ました。
カインも力強く頷き、「その通りだ。まずは街に到着して、ゆっくり休もう。そこからが本番だ。」と言った。
三人は街へと向かって歩き出した。