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異界の侍、世界を救わんとする。  作者: 緑のくま
1章 異世界への旅立ち
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1−1 目覚め

 シンの意識が戻ると、彼は見知らぬ場所に横たわっていた。周囲には緑豊かな森が広がり、透き通った青空が広がっている。遠くからは聞き慣れない鳥のさえずりが聞こえてきた。シンはゆっくりと起き上がり、周囲を見回した。「ここは...どこだ...?」彼は自問し、手にした刀を確認した。陰陽師との戦いで最後に見た景色とは全く違う世界が広がっていた。


 シンは立ち上がり、深呼吸をしてみた。空気は清涼で、血や煙の匂いなどは全く感じられなかった。「まずは状況を把握しなければ...」シンはそう呟き、慎重に周囲を観察しながら歩き始めた。足元には柔らかな草が生い茂り、木々の間から差し込む日差しが温かかった。彼はこの異世界で何が待ち受けているのか、全く分からなかったが、戻る方法を見つけるために前進するしかなかった。


 数時間後、シンは喉の渇きを感じ、小川の音に導かれるようにして進んだ。透明な水が石の上をさらさらと流れている小川を見つけると、シンはその場に膝をつき、手ですくって水を飲んだ。「ふう...助かった。」シンは一息つき、周囲の風景を再び確認した。


 その時、不意に周囲の雰囲気が変わった。森の静寂が不気味なほどに増し、何かがシンに迫っている気配を感じた。彼は素早く刀を構え、周囲を見回した。すると、茂みの中から巨大な魔獣が飛び出してきた。その姿は、鋭い牙と爪を持つ異形の獣だった。


「来るか...!」シンは咄嗟に構えを取り、魔獣に立ち向かった。魔獣はシンに向かって猛然と襲いかかってきたが、シンは冷静に動き、刀で攻撃をかわしながら反撃を繰り出した。鋭い斬撃が魔獣の体を切り裂き、血飛沫が飛び散った。しかし、魔獣は怯むことなく再びシンに向かって襲いかかる。


 シンは集中力を高め、一瞬の隙を見逃さずに魔獣の喉元を狙った。正確な一撃が決まり、魔獣は苦悶の声を上げながら地面に崩れ落ちた。シンは息を整えながら、倒れた魔獣を見下ろした。「ここでも戦いが待っているのか...」


 シンは倒した魔獣の死体を確認し、周囲の安全を確かめた後、小川の水で血と汗を洗い流した。冷たい水が手に触れると、戦いの緊張が徐々に解けていくのを感じた。透明な水が赤く染まり、川面に広がる様子を見つめながら、シンは深く息を吸った。


「この世界でも、戦いは避けられないのか...」シンは自らに問いかけるように呟いた。顔を洗い、手のひらに水をすくって口に運ぶと、冷たい水が喉を潤し、疲労した体に一瞬の清涼感をもたらした。周囲の静けさが、先ほどの戦闘の激しさを一層際立たせていた。


シンは小川の流れに目をやりながら、心を落ち着かせるようにもう一度深呼吸をした。「まずは、この世界での生き残り方を考えなければ...」彼は自らを奮い立たせ、再び歩みを進めた。


 シンは歩き続ける中で、次第に日が傾き始めていることに気づいた。「夜になる前に、安全な場所を見つけなければ...」シンはそう考えながら、適切な休息場所を探し始めた。やがて、彼は小さな洞窟を見つけた。入口は狭いが、中は広く、安全そうだった。シンは洞窟の中に入り、周囲を確認した後、焚き火を起こして体を温めた。「ここなら、今夜は安全に過ごせそうだ。」シンは火を見つめながら、これまでの出来事を振り返った。


 焚き火の暖かい光が揺らめく中、シンは静かに思考を巡らせた。目覚めた瞬間から、異世界の美しい景色に囲まれながらも、心には常に戦いの記憶が残っていた。陰陽師との最後の戦いでの光景が脳裏に浮かぶ。彼の冷笑、呪文を唱える姿、そして最後に放たれた黒い霧。「どうして俺はあの戦いで負けてしまったのか...」シンは悔しさを感じていた。


 思い返すと、戦いの最中で感じた自分の力の限界や、仲間たちの犠牲が胸を締めつける。「あの時、もっと違う選択肢があったのかもしれない...」彼は焚き火の炎を見つめながら、心の中で問いかけた。しかし、過去を振り返っても答えは出ないことをシンは理解していた。


 シンは少しずつ疲労が体に広がるのを感じ、横になった。「明日はどう動くべきか...」彼は考えながらも、疲れが次第に目を重くしていく。焚き火の暖かさと安心感に包まれながら、シンは静かに目を閉じた。


 森の静寂が彼の周りに広がり、時折聞こえる夜の生き物たちの声が彼を眠りに誘った。シンは深い眠りに落ち、次の日の新たな冒険に備えた。


 翌朝、シンは早く目を覚ました。洞窟の外には、再び清々しい朝の光が差し込んでいた。シンは立ち上がり、準備を整えて洞窟を後にした。森を進む中で、これからどうするか考えていた。ただ闇雲にこの森を歩いていていいのか、どうやって元の世界に帰るのか。その考えが頭を巡りながら、彼は慎重に周囲を見回し続けた。


 森の中を進む中で、シンは次第に異常な静けさに気づいた。風が止み、鳥の声も聞こえない。シンは直感的に何かが近づいていることを感じた。手を刀にかけ、周囲を警戒しながら進んでいると、不意に茂みが揺れた。シンは緊張を解かずに、音のする方へと足を進めた。


 やがて、彼は遠くから物音を聞いた。近づくにつれ、それが何者かの足音であることがわかった。警戒心を高めながら進むと、茂みの向こうに一人の男の姿が見えた。彼は弓を手にした狩人のような屈強な男で、シンに気づくと即座に弓を構えた。

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