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第九十六話 ミントの町での戦い(一)

上空には30匹以上のワイバーンが、そして地上にはおびただしい数の魔物が押し寄せてきます。


「弓隊!用意!!」


パルコスの号令で、防壁に立つ50名が一斉に弓を構えた時です。

一人の冒険者が大声で叫びました。


「ギルマス!南の方角から何かが、猛スピードで接近してきます!!」


その声で南を見たパルコスは絶叫しました。


「なに~~~っ!!今度はドラゴンだと~~~!!!」


巨大なドラゴンが猛スピードで近づいて来ます。

遠目からでも分かるその巨体を見て、その場にいた者達は全員死を覚悟しました。


「お、終わりだ・・・」

「俺たち全員死ぬ・・・」


ところがこちらに直進してきたドラゴンは、いきなり西に向きを変えると、ワイバーンの群れに向かって猛烈なブレスを放ったのです。


そしてそれと同時に、眩い光を帯びた矢が放たれ、次々とワイバーンを仕留めて行きます。

さらに上空には雲から伸びる巨大な竜巻が現れ、ワイバーンの群れを飲み込んでゆきました。



「「「ええ~~~っ!!!」」」



「白いドラゴンだと?!」

「これは一体どういう事だ!!」


大声を上げて見ている者たちの目の前で、ワイバーンが次々と地上に落下していきます。

みんなは、もう何が起きているのかさっぱり分かりません。


だがパルコスは、これが誰の仕業なのか直感で理解しました。

そして茫然と見ている者たちに、大声で指示を出します。


「ワイバーンはドラゴンに任せて、わしらは門を守るぞ!」

「みんな、わしに続け!!」


そう言うと、一気に城壁から下へ駆け下りて行きました。



時は遡って2時間前に戻ります。



魔物の襲来を聞いたフレディア達は、至急作戦会議を開きました。

そして急いで行くには馬で駆けるのが一番だろうと話がまとまった時、ハンクがフレディアに声をかけました。


「なぁフレディア・・・」


「ルナがフェルゼナの塔にいた白いドラゴンが、この近くにいるって言うんだ」


「えっ!聖獣フロイドが?」


「あぁ、それでルナがそいつに助けてくれるよう、頼んでみるって言っているのだが・・・」


フレディアとカーナがルナを見ると、両手を合わせて祈る様な仕草で空を見上げていました。


「あっ!本当だ!フロイドがこちらへ近づいて来るよ!」


カーナも気配を感じ取ったようです。


「でも、どうしてフロイドがここに?」


フレディアが不思議に思っていますが、それには訳がありました。




天界の神が、何者かがフロイドを解放したことに気付いたのです。

そして、その事を大神ダレスに報告しました。


「ダレス様、何者かが聖獣フロイドをフェルゼナの塔から解放しました!」

「如何いたしましょう?」


「なに?聖獣フロイドだと?」


「フロイド・・・」


「おぉ、思い出した!悲劇のハープを守るドラゴンであったな!」


「はい!」


「うむ、それは捨て置けぬな・・・」

「確かあのドラゴンを遣わしたのは、女神セレイヤであったな!」


「すぐにセレイヤをここへ呼ぶように!」


「ははっ!」



そして大神ダレスから話を聞いたセレイヤ様は、フロイドと交信しました。


「ダレス様、フロイドを解放したのは、天使のフレディアとカーナだそうです」


「なに、フレディア?」


「!!!」


「おぉ!あのフレディアか!光の女神の・・・」


「ダレス様!その話はここでは!!」


「おぉ!そうであったな!!」


従者に咎められた大神ダレスは、慌てて話をセレイヤ様に戻しました。


「して、いかような理由で解放したのか聞いておるのか?」


「はい、二人が言うには、バズエルから人々を守るために、どうしても悲劇のハープがいるのだとか・・・」


「なに!バズエルだと!?」


「!!!」


「そうか!また、あのフレディアがのう・・・」


大神ダレスは、何かを思い出したように頷くと、威厳のある声で言いました。


「よし!セレイヤよ、フロイドに伝えよ!」


「フレディアを助けて、バズエルの脅威から地上を守れと!」


「はい、仰せのままに」




ルナがフロイドに呼びかけてから10分も経たないうちに、巨大な白いドラゴンは目の前に飛来しました。


本来の姿に戻ったフロイドは、塔で見た時よりもはるかに大きくなっています。

翼を広げれば、ゆうに12メートルを超えています。


初めてその姿を見た者は、あまりの迫力に全員腰を抜かさんばかりに驚いていました。

あのヘルハウンドのブルートでさえも、カレンの後ろに隠れて尻尾をキュッと縮めて怯えています。



「フロイド、わたし達を助けてくれるの?」


フレディアが尋ねました。


「あなた方には、わたくしを自由にしてもらった借りがありますし・・・」


「それに、そうする事は神々の意志でもあるのです」


「さぁ、わたくしの背に乗りなさい!急いでいるのでしょう?」


フロイドに促され、フレディアとカーナが乗ろうとした時、カレンが慌ててフレディアの元に駆け寄りました。


「ねえ、ねえ、フレディア!オレも乗りた~い!」

「お願い乗せて、ねえ、乗せて~~~!」


眼をキラキラ輝かせながら、フレディアにお願いしています。


「・・・だって、フロイド。どうかな?」


「フン!人間などダメに決まっておるわ!」


「わたくしに触れてよいのは天使の二人と、わたくしを呼んだ赤い髪の娘だけです!」


フロイドのすげない返事に、カレンは涙目でプルプルと震えながら訴えます。


「どうしてよ~!」


「ルナはいいのに、どうしてオレはダメなのよ!」


「そんなのズルい!」


「ズルい!ズルい~~~!!」


またカレンがダダをこね出したので、ハンクが慌てて間に入りました。


「お前、いまはそれどころじゃないだろう!」

「ルナも俺たちと一緒に行くんだから、今回はあきらめろ!!」


「フレディア、悪いが先に行ってくれ!」

「俺たちもすぐに追いかける!」


ハンクの言葉に頷くと、フレディアとカーナはフロイドに乗り込み、大空へ飛び立ちました。


地上では急いで馬の用意をする傍らで、カレンがルナに涙ながらに訴えています。


「ねえ、ねえ!ルナからもお願いしてよ~!」

「お姉ちゃんをドラゴンに乗せてくれるよう、あなたからもお願いして~~~!!」


「ほら、カレン!早く馬に乗れ!!」


「もたもたしていると置いて行くぞ!!」


ハンクはルナを自分の馬の後ろに乗せ、カレンを急かしました。


そしてハンクを先頭に、カレン、マウロ、コローニ、シラとその後ろにマルティーを乗せた馬が(はやて)のように大地を駆けて行きました。




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