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第九十伍話 ミントの町はいま

分岐点を出発して2日目の朝。

目を覚ましたフレディアが顔を洗っている時、朝食の準備を始めたカーナが声をかけてきました。


「おはようフレディア!」


「おはようカナちゃん!今日は朝から暑いね!」


「そうね、もう季節は初夏だからね~」


「あっ、そっか・・・」

「わたし達ここまで来るのに、8カ月もかかったんだ・・・」


フレディア達がミントの町からカラカラ砂漠へ向けて出発したのは、冬が間近に迫る寒い季節だったのです。


「う~ん、収穫祭を見たかったな~」


残念そうに言うフレディアを見て、騎士団の隊長ブレメンが話しかけてきました。


「フレディアさん、収穫祭は中止になりましたよ」


「えっ!そうなの?」


「ええ、バズエルが復活したせいで、お祭り騒ぎでは無くなりましたからね!」


「あの日以来、ロファ周辺の町や村は、有事に備えた準備で大変でしたよ」


そんな話をしている時でした。


早馬に乗った七名の騎士の集団が、すごい勢いでこちらへ駆けてきます。

緊急事態と察知したブレメンが、近づいて来た騎士に大声で尋ねました。


「いったい何事だ!!」


騎士の一人が馬から降りると、ブレメンに急いで報告しました。


「ドニオス峡谷を突破したワイバーンを中心とする魔物の集団が、北に向かって進んでいます!」


「北だと?こちらに向かって来ていると言うのか?!」


ブレメンは驚いて聞き返しました。


「はい!その数は不明ですが、町を壊滅するには十分な数かと思われます」


「じゃあ、真っ先にミントの町が襲われるな!」


騒ぎに気付いて来たハンクが、フレディアを見て言いました。


「そうね、急いでミントに向かわなくちゃ!」


「この事は既にミントのギルドには通達していますが、とにかく急いでください!」

「我々はこれからジーノの村に知らせに行きます」


騎士はそう言うと、すぐに馬に乗りました。


「それではよろしくお願いします!」


そう言い残して七名の騎士たちは、ジーノの村へ向かって駆けて行きました。




その頃ミントの町では、騎士から報告を受けたギルドマスターのパルコスが、襲撃に備えてギルドの冒険者たちに命令を出していました。


「お前たちはもう一度、町の住民が残っていないか確認してくれ!」

「それと、火の始末の確認も忘れるな!」


「「「はい!!」」」


ロファ近郊の町や村では、ギルドと国の護衛兵が中心になって、ダグダルム神殿の復活に備えて防壁の補強や、住民の避難訓練を何度も行っていました。


ここミントの町では、有事の時には町の住民はすべて教会に避難する事になっています。

そして教会を中心に周囲100メートルには、魔法によって結界が張られるようになっているのです。


町の警備は護衛兵とギルドのメンバーが、総勢150人ほどで行っていました。


護衛兵の隊長が、町の入り口で冒険者に命令を出しているパルコスに尋ねました。


「パルコス殿、この護りで大丈夫でしょうか?」


町の護衛兵たちは冒険者と違い、魔物との実戦経験が少ないので不安のようです。


「そうですな・・・」


「ワイバーンの数で決まるでしょうな!」


「ワイバーン以外はオークやゴブリン、ワーウルフの集団と聞いています」


パルコスはワイバーン以外なら、何とか出来ると考えていました。


「で、では、ワイバーンは何匹までなら・・・」



「この戦力では、せいぜい3匹までが限界かと・・・」


「えっ!たったの3匹までしか耐えられないのですか?!」


隊長は驚いてパルコスに聞き直しています。


「ワイバーンはSランクの魔物ですからな!」

「空から強烈なブレスで攻撃してくる恐ろしい魔物です」


「大型の魔物の襲来に備えた対空兵器がないと、対抗出来ません」


「この町の防壁など、簡単に破られてしまうでしょう」


「そ、そうなのですね・・・」


隊長は力なく答えました。

そんな隊長にパルコスは言います。


「勝てるのは3匹までですが、要は勝てなくても住民を守り切れば良いのです」


「頑張って一日持たせば、勝利は我らにあります」


「いまギルドの精鋭部隊が、急いでこちらに向かっていますからな!」


「そ、そうですね!一日頑張れば・・・」


隊長は少し安心したのか、頷きながら持ち場に帰って行きました・


「さて、これからは時間が勝負だな」


「ああ言って安心させたが、ワイバーンとなれば本当は1匹でも手に余る魔物だからな」


「精鋭部隊が間に合ったとしても、果たして勝てるかどうか・・・」


「いや、フレディアとカーナなら、何とかしてくれるかも知れんな」


パルコスは、ドニオス峡谷のある南西の空を睨みながら呟きました。



そして2時間後、ついにその時がやってきました。

西の上空に無数の黒い影が現れ、徐々にこちらへ近づいて来ます。


「ちっ!結構な数がいやがるぜ!」


「しかもゆっくりと来るのは、地上の魔物の歩調に合わせているからか?」


町の防壁の上で、想定外の数にパルコスが舌打ちして言いました。


「パルコス殿!あの空を飛んでいるのがワイバーンでしょうか?」


「だとしたら、あ、あの数は・・・」


パルコスの隣に来て様子を見た護衛兵の隊長が、絶望的な声で尋ねました。


「30匹はいるな・・・」


「はっ、はっ、はっ!こりゃもう、話にならねえな!」


「隊長さん、こうなりゃ、1匹でも多くの魔物を道連れにして死にましょうや!」


腹をくくったパルコスはそう言うと、大声でギルドの仲間に号令をかけました。


「緊急クエストを発令する!」


「お前ら、死んでも住民を守りぬけ~!!」



「「「おぉ~~~~!!!」」」






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