第九十三話 再び船上へ
パステルの町で3日間過ごした一行の姿は、再び船上にありました。
以前と違う点は、新たに二つのチームが参加した事です。
一つはペルルカのギルドチーム、『グリーンローズ』という、全員がBランク冒険者のチームです。
リーダーのマイルスは魔法使いで、緑の髪に金色の瞳をした小柄な青年です。
魔法は珍しい木属性の魔法で、植物の葉や種を強化して攻撃するリーフカットやシードバレット。また木の根を操った捕縛を得意とし、森の中では最強を誇る冒険者です。
ジストは砲撃手で、黒髪に茶色い目をした童顔の青年です。
武器はペルルカの工学技術を駆使して作った火炎放射器で、手動式ポンプで圧縮した揮発性の高い、ガソリンのような液体に火をつけて放出させます。
サナはガーディアンで、グレーの髪に茶色い瞳の、大柄な美女です。
大地の盾と呼ばれる重厚な円形の盾で敵の攻撃を防ぎ、また盾の周囲に仕込んだ刃で攻撃もするという、攻防兼ね備えたガーディアンです。
パールは聖職者で、ブルーに白いメッシュの入った髪と、青い瞳を持つ美少女です。
得意な魔法はガード・マジックバリア・ハイヒールと、相手をマヒさせるパラライズです。
そしてもう一組は、パステルのギルドから選ばれたチーム、『キャノンガールズ』です。
その名の通り、全員がBランクの女子だけのチームです。
リーダーのアリスは戦士で、ピンクの髪に金色の瞳の美女です。
武器はカレンと同じくムチを使いますが、彼女のムチはブラックマンバと呼ばれ、打たれると麻痺毒で体が動かなくなってしまう、恐ろしいムチを使っています。
カレンに憧れて冒険者になった女性です。
ポニーは武闘家で、茶色い髪に同じ色の瞳を持つ、かわいい顔の女性です。
武器は長さが30センチもある鋼の爪で、これで敵を切り裂きます。
また彼女は、気功による回復術も習得しています。
ティアはポニーと同じく武闘家で、金色の髪に、茶色の瞳の美しい女性です。
武器は円月輪で、両手で舞うように踊りながら相手を攻撃します。
その美しい踊りで敵を屠ることから、死の舞姫と呼ばれています。
メアリーはシーフーで、銀色の髪に青い瞳、それに褐色の肌の美女です。
カレンによく似ていますが、背は彼女ほど高くはありません。
武器は風斬り丸という毒が仕込まれたダガーで、スキルは隠密行動・捕縛・投てきと多才です。
投てきは、主にナイフと火炎玉を使います。
このチームの特色は、防御を無視した攻撃特化のチームと言う事です。
カレンがギルドマスターを務めるギルドらしいと言えますが、大丈夫なのでしょうか?
チームの紹介が終わったところで、フレディアが声をかけました。
「じゃあ、他のチームのように練習に参加してもらおうかな!」
「よし!じゃあオレのとこのチームが先でいいか?」
カレンがペルルカのギルドマスターのマッコイに尋ねました。
「もちろんですとも!」
「オッケー!じゃあ、フレディア頼むよ!」
「いいよ!最初だから氷の球は30個からね!」
カレンの要望で、キャノンガールズが先に訓練を受ける事になりました。
全員が攻撃タイプなので、ほぼ横一列に並びますが、長いムチを振るアリスだけが三歩ほど前で構えています。
「じゃあ、いくよ?」
フレディアがルナに合図を送り、30個の氷の球がキャノンガールズめがけて飛んでゆきます。
最初に動いたのは、シーフーのメアリーです。
飛来する氷の球めがけて火炎玉を投げつけました。
ボカ~~~ン!!
氷の球に当たると同時に激しい炎が炸裂し、10個の球を消し去りました。
残り20個の氷の球が襲い掛かりますが、全員接近戦を得意とするチームです。
難なくすべての球を粉砕してのけました。
「「「おお~~~~~!!!」」」
「さすがはカレンさんのチームだ!」
「まさに攻撃は最大の防御ですね!」
各チームから賞賛と驚きの声が上がりました。
「すごいね!これなら50個でもいけちゃうね!」
「ふふ~ん!もちろん!!」
フレディアの問いかけに、ギルドマスターのカレンも、胸を張って自慢しています。
「じゃあ、次はグリーンローズの番ね!」
フレディアの号令で、4人のメンバーが前に出ました。
前衛はガーディアンのサナ一人です。
その後ろに聖職者のパールが呪文の詠唱を始め、右側に砲撃手のジスト、左側に魔法使いのマイルスが立ちました。
「それじゃあ、いくよ?」
フレディアがルナに合図を送り、30個の氷の球がグリーンローズをめがけて飛んでゆきます。
その瞬間、パールはガーディアンのサナだけに身体強化の魔法をかけました。
そして次に動いたのは砲撃手のジストです。
ゴ~~~~~~ッ!!!
轟音と共に火炎放射器から激しい炎が噴き出し、一瞬ですべての氷の球を蒸発させてしまいました。
「「「ええ~~~っ!!」」」
その様子を見た全員が、驚きの声を上げました。
一方観客の反応を見たグリーンローズのメンバーは、ニヤニヤと全員ドヤ顔でいます。
「キャハハ!すごいね!」
「まるでワイバーンのブレスだね!」
フレディアは手を叩いて喜んでいます。
「ちょっと、フレディア!これじゃあ練習にならないじゃない!」
喜んでいるフレディアに向かって、自分のチームへの賞賛が一瞬で吹き飛ばされたような気分になったカレンが、口を尖らせて愚痴りました。
「そだね!じゃあパターンⅡでいこっか!」
「えっ!パターンⅡって?」
フレディアは尋ねるカレンにニッコリ笑うと、グリーンローズのメンバーに声をかけました。
「これじゃあ訓練にならないから、グリーンローズのメンバーはもう一度やるね!」
「いい?」
「もちろんいいですよ!」
「あっ!何なら他のみんなと同じ50個でも構いませんよ!」
リーダーのマイルスが余裕で答えます。
「ラジャー!」
フレディアはそう言うと、ルナに声をかけます。
「じゃあルナ、パターンⅡの50個でお願いね!」
ルナはニッコリほほ笑むと、フレディアに言われた通り50個の水玉を作りました。
それをカーナが『木枯らし』を発動して氷の球に変えます。
と、ここまでは何も変わらないのですが、ルナがパチン!と指を鳴らすと、氷の球に変化が起こります。
上空に浮いた50個の氷の球が、一斉にグリーンローズを囲むように散開しました。
そして今度はグルグルと時計回りに回転を始めます。
「えっ!ち、ちょっとコレ・・・」
マイルスが慌てて仲間を見ますが、それまで余裕で構えていたグリーンローズのメンバー全員に焦りが見えます。
砲撃手のジストも、狙いを定める事が出来ず、かなり焦っているように見えます。
そして氷の球はさらに高速で回転を始め、目で追えなくなった瞬間、一斉に4人に襲い掛かりました。
「「「うっわ~~~~~っ!」」」
ガン!ガン!ガン!ガン!・・・・・・・。
四方八方から叩き付けられたグリーンローズのメンバーは、みんなその場に倒れました。
「いってててて・・・」
「なんで50個って言ったんだ、このバカ野郎!」
「ごめんて・・・」
頭に大きなこぶを作ったジストが、マイルスにブチ切れています。
その様子を見ていた他のチーム全員が、声を無くして青ざめていました。
「いや、これはないわ・・・」
「絶対に無理だろ!」
「まさか、俺たちもやるのか?」
みんな心配そうにフレディアを見ています。
そんな中、フレディアの明るい声が響きました。
「みんな安心していいよ!」
「「「おぉ!!」」」
「氷の球は30個に減らすから!」
「「「ええ~~~っ!!」」」
「じゃあ、明日からパターンⅡの訓練をやって行くね~!」
「「「やっぱり、やるのかい!!」」」
「フレディアちゃん天使じゃなくて、やっぱり鬼だわ・・・」




