第九十一話 船上での訓練(二)
チームの内容が分かりにくいので、ここで簡単に説明します。
<ムーンライト> ミントの町 ギルドマスター:パルコス
マウロ(リーダー)Bランク剣士 特徴:金髪・青い瞳・20代後半がっしりした体格・
シラ Cランク魔法使い・・・ファイア・フレイム 特徴:金髪・青い瞳・美人
マルティー Cランクアーチャー 特徴:赤い髪・赤い瞳・小柄で活発・大きな瞳
コローニ Cランク槍使い 特徴:背の高い細マッチョ・ハンサム・緑の髪・茶色い目
マイオス Cランク僧侶 ガード・ヒール・キュアー・捕縛
特徴:40代後半 銀色の髪、青い瞳、立派な髭
<サンドバスターズ> カルカラッサの町 ギルドマスター:ダグラス
ブロンディ(リーダー) Bランク魔法使い・・・砂嵐・ウインドカット
特徴:黒髪・茶色の瞳・小柄
テイスト Bランク剣士 バスターソード 特徴:青い髪・濃いブルーの瞳・背が高い
フランク Bランク戦士 モーニングスター 特徴:茶色い髪。黒い瞳・ガッチリした体格
ハニー Bランク聖職者・・・ガード・マジックバリア・ハイヒール・サイレス
特徴:ピンクの髪・青い瞳
<クラッシャーズ> テグニスの町 ギルドマスター:パルバット
オニール(リーダー) Aランク剣士 アイスブレード
特徴:青い髪・紫の瞳・背が高い優男
グーグー Bランク魔法使い・・・コンフユーズ・ドレイン
特徴:黒い髪・赤い瞳・細身の美青年
ジェンナ Bランクアーチャー 矢の先端に爆薬
特徴:金色の髪・緑の瞳・スラリと背が高い美女
ナタリー Bランク聖職者・・・ガード・マジックバリア・ハイヒール・キュアー・スロー
特徴:緑の髪・緑の目・19歳・小柄でかわいい
二番手のムーンライトが、準備万端で練習の開始を待っています。
前衛にBランクの剣士マウロと、Cランクの槍使いコローニ、そして何故かCランクのアーチャーのマルティーがいます。
後衛にはCランクの魔法使いのシラと、Cランクの僧侶のマイオスです。
ムーンライトは、マウロ以外は全員Cランクの冒険者ですが、ライトブリーズの補佐として活躍しているのを誰もが知っているので、みんな興味津々でその実力を見守っています。
「じゃあ、いくよ?」
「オッケー!!」
マウロの返事で、フレディアがルナに合図を送りました。
ルナは頷くと、30個の氷の球をムーンライトめがけて発射させました。
シラは飛んでくる氷の球に向かって炎の魔法フレイムを放ち、10個を消滅させました。
そしてマイオスの張ったバリアが、8つの被弾に耐えます。
残りの12個は、前衛の3人ですべて破壊してのけたのでした。
「「「おお~~~~~!!!」」」
各チームから賞賛と驚きの声が上がりました。
特にみんなの興味を引いたのは、本来なら後衛にいるはずのアーチャーの働きです。
マルティーは、飛んで来る氷の球に矢で防戦するのは無理と判断し、あえて前衛で構えたのですが、その秘密はマルティーの弓にありました。
彼女は戦いで矢が尽きた時の事を想定し、弓の両端に特殊な刃を仕込む改造を行っていたのです。
そしてその武器を使いこなすために、日々の訓練を怠りませんでした。
「う~~~む・・・。見事な戦いだった!」
ダグラスも拍手をして褒めています。
「さすがはシラとマルティーだな!」
「パステルの町に着いたら、おいしい料理の店に連れて行ってやるよ!」
「「やった~!カレンさん、ゴチになりま~す!」」
カレンは上機嫌で二人と肩を組んでいます。
「よし!次のチームはサンドバスターズだ!」
「前へ出ろ!」
サンドバスターズは、4人が全員Bランクのチームです。
前衛は二人、剣士のテイストがバスターソードを構え、戦士のフランクがモーニングスターを構えます。
フランクの持つモーニングスターは、50センチの金属の棒の先端に、1メートルの鎖につながれたトゲのある大きな鉄球が付いた武器です。
後衛はリーダーの魔法使いブロンディと、聖職者のハニーです。
「じゃあ、いくよ?」
フレディアがルナに合図を送り、30個の氷の球がサンドバスターズめがけて飛来します。
ブロンディはカーナに教わった風の防壁を作って仲間を守り、ハニーはその中で二重のバリアを張ります。
この二人の守りで半分の氷の球を破壊し、残りの5個をテイストが斬り落とし、10個は扇風機のように鉄球を回転させたフランクが破壊しました。
「「「おお~~~~~!!!」」」
各チームから盛大な拍手が送られます。
「うむ、なかなか見事だったぞ!」
ダグラスは自分のギルドのチームがクリアしたので、少し安心したようです。
フレディア達も、笑顔で拍手を送っています。
「よし!次のチームはクラッシャーズだ!」
「前へ出ろ!」
このチームはリーダーのオニールがAランクで、後の3人がBランクという豪華な顔ぶれです。
だけど魔法使いのグーグーは、浮かない顔でフレディアに愚痴りました。
「僕の魔法は幻覚魔法と、相手の体力を奪うドレインの魔法だから、この訓練にはまったく使えないよ~」
グーグーの愚痴に、フレディアはニッコリ笑って答えました。
「大丈夫だよ!」
「ルナの操る氷の球には、相手を狙って攻撃する意思が練り込まれているの」
「だから、幻覚魔法で攻撃を欺く事は可能よ!」
普通の魔法ではありえない事ですが、ルナは水の精霊の加護を受けているので、水に自分の意思を与える事が出来るのでした。
フレディアの説明を聞いたグーグーは、ビックリしています。
(ウソでしょ?攻撃する物体に、そんな力を付与出来るの!?)
「わ、分かりました!とにかく頑張ってみます」
そう言うと、グーグーは半信半疑で定位置に着きました。
前衛は剣士のオニール一人で、自慢の魔法剣アイスブレードを構えます。
後衛はアーチャーのジェンナを真ん中に、右に魔法使いのグーグーが、そして左に聖職者のナタリーが構えています。
「じゃあ、いくよ?」
フレディアがルナに合図を送り、30個の氷の球がクラッシャーズめがけて飛んでゆきます。
真っ先に攻撃を仕掛けたのはジェンナでした。
まとまって飛来する氷の球の中心の一つに、爆薬の付いた矢を命中させて爆破させると、周囲の11個の球が巻き込まれて飛散しました。
それを見たナタリーがスローの魔法を発動させ、球の速度を落とします。
そしてグーグーが幻覚魔法を発動すると、一直線に飛んできた球のうち8個が、チームから外れた場所に着弾しました。
残りのスピードの落ちた10個の球は、オニールがすべて斬り落とします。
「「「おお~~~~~!!!」」」
「すげ~~~っ!!」
「本当に幻覚魔法が効くなんて!!」
「ルナさんの魔法、凄すぎるだろ!!」
歓喜と驚きの声で、船上は大騒ぎです。
「さすがだな!」
ダグラスも頷き、テグニスのギルドマスターのパルバットも、大喜びです。
「いや~、ぜんぶ落とせて良かったよ!」
無事に訓練を終えて、リーダーのオニールがホッとしています。
「ほんと、失敗したらどうしょうかと、ドキドキしちゃったわ!」
ジェンナも、無事に矢を球に命中させる事が出来て喜んでいます。
そんな和気あいあいと話しているクラッシャーズの所へ、ハンクが一人でのっしのっしと歩いて来ました。
「えっ!なんで?」
「ハンクさん、なにか怒ってる?」
オニールが小声で皆に尋ねます。
そしてジェンナの前で止まったものだから、みんなビビッて固まってしまいました。
ジェンナなんか、もう今にも泣きそうな顔でうつむいています。
(な、なんで?フレディアさんの事で怒っているの?)
(わたし、殺されるの?)
涙目になっているジェンナに、ハンクが声をかけました。
「さっき使った爆薬の付いた矢を見せてくれないか?」
「へっ?」




