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第八十九話 ドニオス峡谷の戦況

今回の任務で集められた冒険者は、いずれも所属ギルドの代表者たちです。

高みを目指す者達が集まっているので、お互いライバル意識が強く、そして今回の任務で功績をあげて、ランクを上げようと狙っている者ばかりなのです。


そういった者達からすれば、Sランクは各々の最終到達点であるため、必然的にジェンナのように厳しい目で見る者が多いのでした。


しかしライトブリーズの実力を目の当たりにすれば、その桁違いの強さに逆にへこんでしまうかも知れません。


テグニスの町の次に停泊する場所は、パステルの町です。

ペルルカの町はレヌス川から離れた場所にあるため、ペルルカのギルドチームは陸路でパステルの町へ行き、そこから船に乗る手はずになっていました。


パステルの町での滞在期間は3日間です。

パステルの町を出航すると、次の停泊地のジーノの村の手前までは20日ほどかかるため、滞在中に食料など長旅に必要な物資の調達を行う予定なのです。


テグニスの町からパステルの町への到着予定は9日後です。

その間、ライトブリーズとカレン、ダグラス、パルバットの3名のギルドマスターと、騎士団の隊長で話し合いが行われていました。


「新しく入った情報では、ドニオス峡谷に5つの塔が建設されているそうですぞ」


最初に口を開いたのは、テグニスのギルドマスターのパルバットでした。

それに対してカレンが質問しました。


「それって、魔物が築いているんだよな?」


「ええ、そうです!」


パルバットの情報に、ダグラスが難しい顔でつぶやきます。


「ダグダルム神殿はまだ復活していないし、一体何が目的でそんな塔を・・・」


「それって、5つの塔なのよね?」

「だとしたら・・・」


フレディアには思い当たる節があるみたいです。

そして5という数字に、カーナも気付きました。


「あっ!五芒星ね!!」


「カナちゃん正解!」


カーナが、フレディアの考えていた事を言い当てました。


「ごぼうせい?」


「・・・って、なに? それって食べ物?」


「そんな訳ないでしょ!」


的外れなカレンの質問に、カーナが突っ込みを入れました。

そして笑いながらフレディアが答えます。


「魔術の記号なの、星のマークって言えば分かるよね?」


「!!」


「あぁ!なんだアレか~」


「でも、なんでアレなんだ?」


「五芒星は護りの呪符なの」


「きっと塔で作った五芒星の中心にダグダルムの神殿を復活させて、結界を張るつもりなのよ」


カレンの質問に、フレディアが自分の思うところを伝えました。



「そうなると厄介だな!何とか塔の建設を阻止できないだろうか?」


フレディアの説明を聞いたダグラスが、騎士団の隊長に尋ねました。


騎士団の隊長の名はブレメンと言い、40歳の豪傑で、黒い髪に赤い瞳の偉丈夫です。

前線で指揮を取っていましたが、王様に急遽フレディアの帰還を手助けするよう言われて馳せ参じた男なので、ドニオス峡谷の戦況に精通しています。

その隊長が戦況を話してくれました。


「全力で塔の建設の阻止を図っていますが、それは難しいでしょう・・・」


「日に日に魔物の数は増え続けています。しかも上位の魔物が・・・」


「残念ですが、わが軍は要塞に立てこもり、魔物をドニオス峡谷から外に出さないようにするので手一杯なのです」


とても塔建設の阻止まで手が回らず、完成を遅らせるので手一杯だと、悔しそうに話してくれました。


「そっか~、でもギルドの精鋭を集めた理由が分かった気がするね!」


「あぁ、5つの塔の建設を止められないのなら、ぶっ壊してしまえと言う事だな!」


フレディアの言葉の意味を、ハンクが代弁しました。

それを聞いたカレンが、嬉しそうに右手を上げて大声で叫びます。


「お~!いいぞ、やっちまえ!!」



船室の外にいた者たちは、その声を聞いた途端に驚いて固まっています。

ジェンナなどは、悲鳴を上げてナタリーに抱きつきました。

しかし本当に驚くのはこれからなのです。

やるべき事が見えて来たフレディア達は、チームの強化計画を立てる事にしたのでした。


「ふっ、ふっ、ふっ・・・」


「バズエルとの戦いが始まるまでに、ひょっこ共を一人前にしておかないとな・・・」


カレンはニャっと笑って言いました。


翌日の朝、ギルドマスター達の号令で、チーム全員が船の甲板に整列させられました。

そしてカルカラッサのギルドマスターのダグラスが、全員に告げます。


「いいかみんな!本日より特殊任務を遂行するための訓練を実施する!」


「船上という場所のため、行える訓練は限られてしまうが、実戦形式で行うので、みんな心して取り組むように!」


「分かったな!!」


「「「はい!」」」


ダグラスの命令に、全員が元気に答えました。


「じゃあフレディア、後はよろしく頼むな!」


「ラジャー!」


ダグラスに代わって、フレディアが前に出ました。


「じゃあ、いまから訓練のお手本を見せるからね!」


フレディアの合図で、カーナとルナが船首に向かいました。

そして二人の位置から30メートルほど離れた位置で、カレンがムチを手に構えます。

これから一体どんな訓練が始まるのか、みんな興味深く見守っています。


「カレンはムチによる物理攻撃と、魔法が使えるので、そういう人は参考にしてね~!」


「じゃあ、お願いね!」


フレディアの合図で、訓練のデモンストレーションが始まりました。


船首に立ったルナは、両手を広げて水をすくい上げるような動作をすると、水面から水の玉を上空に舞い上げました。

それをカーナが風魔法の『木枯らし』で氷の球に変えます。


拳ぐらいの大きさの氷の球がちょうど30個、ふわふわと上空に浮かんでいます。


それを見たカレンは、雷を体の周りに網の目のように張り巡らせ、雷による防壁を築きました。そしてムチにも雷をまとわせます。


「いいよルナ!いつでもどうぞ!」


カレンの合図で、ルナは30個の氷の球をカレンめがけて発射させました。


ビュ~~~ン!!


猛烈なスピードでカレンを襲います。


ピュン!


パシ!パシ!パシ!パシ!・・・・・。


その氷の球を、カレンは見事なムチさばきで砕いて行きます。

ムチにまとわせた雷の力で、瞬く間にその数を減らし、そしてムチから漏れた2つの氷の球が、カレンの張った雷の壁に当たり、ジュン!という音と共に溶けてなくなりました。


「ちぇっ!2つ外したか・・・」


カレンは悔しそうにしていますが、ほかのチームは全員驚いて、口が開いたままになっています。


「す、すごい!どうしてあんな事ができるの?」


同じ女性であるサンドバスターズの聖職者ハニーが、驚きの声を上げています。



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