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第八十八話 選ばれたギルドの精鋭たち(二)

カルカラッサの町を出て4日目に、フォルクの村へ到着しました。

船着き場には、既に大型船が待機しています。

必要な物資を調達して船に乗り込んだ一行は、すぐにテグニスの町に向かって旅立ちました。


テグニスの町へ行くには、別の支流を行かなければならないので、北上して一旦本流に出てから東南に伸びる支流の分岐点まで進み、そこから南に1日下ります。

所要日数は約7日で、陸路だと10日はかかるので、やはり船の旅は便利です。


テグニスの町からは、ギルドマスターのパルバット率いる『チームクラッシャーズ』が乗り込んで来ました。


リーダーのオニールはAランクの剣士で、青い髪に紫色の瞳を持つ、背の高い優男です。

彼の持つアイスブレードは、攻撃時に凍結の魔法が付与される魔法剣で、ダンジョンで手に入れたレアなアイテムです。


グーグーはBランクの魔法使いで、黒い髪に赤い瞳を持つ、細身の美青年です。

しかし彼の使う魔法は闇属性のドレイン(体力吸収)と、相手を惑わす幻覚魔法コンフユーズ(こんらん)で、Aランクに近い実力を持っています。


ジェンナはBランクのアーチャーで、金色の髪に緑の瞳のスラリと背の高い、美しい女性です。

彼女の使う武器は、矢の先端に爆薬を仕込んだ攻撃力の高い弓矢で、女性でありながらチームの名に恥じない破壊力を持った強者です。


ナタリーはBランクの聖職者で、彼女は緑色の髪をした小柄な女性で、髪と同じ色の深い緑の瞳を持つ可愛い感じの女性です。

フレディア達と一緒に潜入捜査をした女性で、ガード(バリア)・マジックバリア・ハイヒール(強回復)キュアー(解毒)スロー(敏捷性低下)の魔法を得意としています。



「やぁ、皆さんごきげんよう!」


「その節はお世話になりました」


ギルドマスターのパルバットが、フレディア達に挨拶をしました。


「あっ!これはパルバットさん、ごきげんよう!」


ギルドマスターの名前を忘れたフレディアに代わり、カーナが挨拶を返してくれています。

フレディアはパルバットが連れて来たチームの中に、潜入捜査で一緒だったナタリーを見つけたので、声をかけました。


「あっ、ナタリーだ!」

「キャハハ!潜入捜査楽しかったね!」


急に声をかけられたナタリーは、少し驚いた様子で答えました。


(えっ!た、楽しかった?)

(ゴーレムに踏みつぶされて死ぬかと思ったのに・・・)


「あ・・・そ、そうね!」

「また一緒に特殊任務をする事になったから、よろしくね!」


ナタリーはフレディアに合わせてそう答えましたが、その隣で話を聞いていたジェンナが、ズカズカと二人の会話に割り込んで来ました。


「えっ?ナタリーの言っていた一撃でゴーレムを倒したって・・・」

「まさかこの子なの?」


「ええ、そうよ!」


ナタリーの返事に、ジェンナはあからさまに相手を見下したように、フレディアを見て鼻で笑いました。


「ふっ!冗談でしょ?」


「こんなお子様に、本当にそんな事が出来るの?」


「Sランクの建前上、そう言う事にしているのよね?」


ジェンナはフレディアとは面識がなく、ナタリーからゴーレム討伐の話を聞き、同じ武器を扱う者として興味を抱いていたのですが、想像していたSランク冒険者とはあまりにもかけ離れていたので、思わず不快感をあらわにしてしまったのでした。


「じゃ、じゃあねフレディア、また後で!」


面倒な事になると困るので、ナタリーはジェンナを急いで船内へ連れて行こうとしましたが、それを大声で止める者がいました。


「おい、そこの金髪の女!ちょっと待て!!」


「はぁ?なにを偉そうに・・・」


そう言って振り返ったジェンナを、鬼の形相で睨んでいたのはカレンでした。


(げっ!こ、この人は、パステルのギルマス!)

(超ヤバイ人じゃないの!!)


ピシ~~~ッ!!!


カレンのムチが、ジェンナの足元を激しく打ちました。

その一撃で船の床板が砕け、焼け焦げた臭いが辺りに立ち込めます。

しかもカレンの横では巨体のヘルハウンドが牙をむき、唸り声をあげて今にも飛びかかろうとしています。


「ひ~っ!」


カレンのただならぬ殺気にジェンナはすっかり怯え、青い顔をしてガタガタと震えています。


「おい、おまえ!誰に対してなめた態度を取っているのか分かっているのか?!」


「えっ・・・。だ、だれって?」


「ふざけるな!フレディアに向かってなんだあの態度は!!」


「ぶっ殺されたいのか!!」


「ひ~~~っ!」


そう言ってムチを振り上げたカレンを、フレディアは慌てて止めに入りました。


「ちょっと、カレン!やりすぎだって!!」


「いや、フレディア!」

「こんなひよっ子は、一度死ぬほど痛い目に合わさないと分からないんだ!」

「どいてくれ!」


フレディアを押し退けてムチを打とうとするカレンの前に、今度は慌ててパルバットが止めに入りました。


「カ、カレン殿、お、落ち着いてください!」

「ジェンナは私の方から、きつく叱っておきますので・・・」


「だめだ!そこをどけ!!」


カレンの怒りは収まるどころか、ますます激しくなり、もう誰にも止められなくなっています。


その様子を見たカーナは、慌ててハンクに頼みました。


「ハンク!カレンを何とかしてよ!」


ところがハンクは、カレンの行動を止める気は全くないようです。


「いや、カレンが怒るのは当然だろう!」

「フレディアはカレンの師匠なのだからな!」


そう言って取り合いません。

唯一カレンを止められそうなハンクが断った事で、もう事態の収拾が付かないと思われたその時でした。


ポコ!


「アハン・・・」


ドテッ!


ルナがカレンの頭をうたた寝の杖で叩き、眠らせてしまったのです。


そしてルナが膝枕をして、眠るカレンの頭をやさしくナデナデすると、興奮して牙をむいていたブルートも、大人しく主人の横にしゃがみ込みました。

そしてブルートもルナに頭を撫でてもらい、嬉しそうにシッポを振っています。



報告を受けたダグラスが慌てて様子を見に来た時には、カレンはルナの膝枕で気持ちよさそうに眠っていました。



そしてフレディアはと言うと・・・。


「うわ~~~ん!ごめんなさ~~~い!」


ギャン泣きのジェンナにどうしていいのか分からず、オロオロしています。


その様子を遠目で見ていたチームクラッシャーズのメンバー達も・・・。


「ここで最強なのが、まさかあの、おしとやかな美少女だったなんて・・・」


ニコニコ笑顔のルナを見て、みんなビビっていました。



「おい!これは一体どうなっているのだ!!」


ダグラスは周りの者に尋ねますが、みんな黙って茫然と突っ立っているだけでした。




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