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第八十四話 ヤーンの遺跡(三)

魔法陣の部屋で一夜を明かしたフレディア達は、左から4つ目の魔人の顔に爆薬を仕掛けました。


シュッ!


ボカ~~~ン!!


魔人の顔が吹き飛び、壁の中から勢いよく魔物が飛び出してきました。

現れたのはダグダルムとの戦いで捕らわれ、ここに封印されていた魔人パズズです。


野獣の上半身に鷲の足と翼、そしてとサソリの尾を持った(いにしえ)の魔人で、疫病を起こす臭い息をまき散らす、厄災の根源とも言える恐ろしい魔物です。


カーナは即座に大旋風を発動し、パズズの臭い息を封じ込めました。

接近戦は出来ないため、フレディアがアークⅡをまとった矢を放ちますが、カーナの大旋風とパズズ自身が放った風の盾に阻まれ、外れてしまいました。


カレンも雷をぶつけますが、パズズの魔力で弾かれてしまいます。


持久戦になるかと思われましたが、カーナは自分の身体に風の渦を巡らし、パズズめがけて突進すると、接触する手前で大旋風を解除すると同時に、ルーンスピアをパズズに投げつけました。


ドスッ!!


ルーンスピアは岩をも砕く破壊の槍です。

その槍に胸を貫かれたパズズは、ガクッと膝を落として倒れこみました。

そしてとどめはフレディアのアークⅡ『神の裁き』により、灰燼(かいじん)と化しました。


「ちくしょう、こんな化け物ばっかりかよ・・・」


カレンは自分が活躍できなかったので、悔しそうにしています。


「あれっ、壁の中に何かあるよ?」


フレディアが壁に空いた穴を見てみると、中に美しく装飾された宝箱がありました。

慎重に宝箱を開けてみると、中には赤い光を発する美しい宝剣が納められていました。


「あっ!これ長老様が言っていた炎の剣ヘスティア―だわ!」


フレディアはその剣を手に取ると、ハンクに渡しました。

受け取った剣をハンクが魔力を込めて握ると、刀身から赤い炎を吹き出しました。

そしてそのまま振り降ろすと、炎の斬撃が勢いよく飛んで行き、壁を切り裂きます。


ザシュッ!!


「すご~い!」


パチパチパチ・・・。


フレディアが拍手するのを、カレンは羨ましそうに指をくわえて見つめています。


「ねえフレディア~。オレもあんな武器が欲しいな~!」


「いや、そんな事わたしに言われても・・・」


「そうよ、カレンにはブルートもいるし、すごい魔法も覚えたじゃない!」


「お前は欲張り過ぎなんだよ!」


フレディアに相手にされず、カーナとハンクにも文句を言われたカレンは、ささっとルナに抱きついて仲間に引き入れます。


「いいよな~!すごい武器を持っている人たちは~!」

「ルナ、オレたちの武器は貧弱だけど、一緒に頑張って行こうな!」


ルナが文句を言わない事をいいことに、べったり頬を寄せて仲良しぶりをアピールしています。


「めんどくさいなぁ~こいつ・・・」


「ルナの持っているうたた寝の杖を、貧弱って言ってるし・・・」


ハンクもカーナもあきれています。


カレンはわがままですが、ルナの事を妹のように可愛がってくれるし、ルナもカレンの事が大好きなのを知っているので、ハンクも最近はカレンにあまり文句を言わないようにしているのでした。



さて、最後の一つとなった魔人の顔に、ハンクは爆弾を仕掛けました。


シュッ!


ボカ~~~ン!!


魔人の顔が吹き飛び、壁の中から隠された通路が出現しました。

魔物の出現に備えていたフレディア達は、肩透かしを食らった形ですが、内心みんなホッとしています。


「ちぇっ!なんだよ、つまんねえな~!」


と、カレンは強がって見せていますが、彼女が握りしめているムチには、ベッタリと汗が滲んでいました。


さて、この隠された通路の先にある部屋に入った一行は、今までとはまったく違う雰囲気に驚いています。


床には光り輝くクリスタルが敷き詰められ、周りには何十体もの石像が並び、正面にはサソリの絵が描かれた大きな扉がありました。そしてそのサソリの絵の心臓の位置には穴が開き、何かをはめ込むようになっていたのです。


「これって、あのサソリの心臓の穴に、水晶玉をはめ込めばいいのよね!」


「そうね!それであの扉が開くと思うわ!」


フレディアの問いに、カーナが答えます。

しかし・・・。


「その前に、この酸を何とかしないとなぁ・・・」


ハンクが壁画の手前にある水溝を見てため息をついています。


正面の壁画の扉の前には、巨大な石像が扉を挟んで二体あり、その間には魔人像の立つ水溝があるのです。その水溝には、なみなみと酸が注がれているため、先へ進むことが出来ませんでした。


「でも、この台は何かしら?」


カーナが指さしたのは、水溝の前に何かを置く台が設えてあったからでした。

高さ1メートルほどの台ですが、見事な彫刻が彫られ、奇麗な宝石が散りばめられています。


「わかった!これはお供え物を置く台だわ!」


そう言うと、カレンは袋からリンゴを取り出し、台の上に乗せました。


キ~~~ン!


「えっ?」


カレンをめがけて飛んできた鉄の矢を、ハンクが剣で弾いた音でした。

同時にフレディアが急いで台からリンゴを取って、カレンに渡しました。


「このリンゴじゃ、ダメみたいね」


「え~っ、このリンゴおいしいのに・・・」


そう言うと、カレンは残念そうにリンゴをかじりました。



「やっぱり、何か必要な物がまだ残っているようね・・・」


フレディアはカーナに意見を聞きました。


「そうね、長老様の話にあった、神器の一つの『守りの腕輪』もまだ見つかっていないし・・・」

「炎の剣も隠された場所にあったから、壁画の扉の向こうにあるとも限らないわ」


「じゃあ、残りの左の地下室を調べましょうか!」


フレディア達は大聖堂まで戻ると、左の地下へ降りる階段を下りて行きました。



「えっ!何これ?!」


長い階段を下りた所には、大きく深い穴が開いており、その穴の前にはとてつもなく長い真っすぐな回廊がありました。

ホタルンをかざしても、先が暗くてよく見えません。

しかも人が横二列で通れるだけの狭い回廊です。


「これ、絶対に怪しいわね・・・」


フレディアはそう言って盗賊の秘宝を使ってみました。

しかし反応はまったくありません。


「とにかく、気を付けながら進むしかないな・・・」


そう言ってハンクを先頭に、進んで行きました。


しばらく進むと、右側に少し壁が削られてへこんだ場所がありました。


「何これ?意味が分かんない!」


カレンがそう言って、その場所を蹴とばしています。


その場所を横目で見ながらしばらく進むと、急にハンクが止まりました。


「おい、何か変な音がしないか?」


それは暗闇の前方から聞こえてきます。

そしてこの答えはすぐに分かりました。


ゴロゴロゴロ・・・・。


地響きと共に、道幅いっぱいの大きな岩が転がって来たのです。


「うわっ!やべ!」

「さっきのへこんだ所まで逃げろ!」


ハンクの号令で、全員全力で走り出しました。


「キャ~~~ッ!!」


「イヤ~~~ッ!!」


フレディアとカーナも悲鳴を上げて逃げています。


「ハンク!何とかしてよ!!」


「すまん、無理!!」


カレンはハンクに無茶振りしますが、どうにもなりません。


フレディア達は全力で走って、へこんだ場所にへばりつきました。


ゴロゴロゴロ・・・・。


ガ~~~ン!!


ギリギリ間に合いました。

大きな岩が体すれすれを通り抜け、回廊に空いた大穴へ落ちて行ったのです。


「はぁ、はぁ・・・」


「あぶな~!危機一髪じゃない!」


「ハンク、あなた土属性の魔法が使えるのでしょ?何とか出来ないの?」


「面目ない、ありゃ無理だ!」


カレンがハンクに何とかしろと言いましたが、残念ながら無理のようです。


「この罠、盗賊の秘宝にも反応しないから、みんな気を付けてね!」


フレディアの号令で、一行は慎重に先へ進んで行きました。

そして回廊の突き当りを見ると、壁の上に大きな丸い穴が開いているのが見えました。


「ここから岩が出て来たんだ・・・」


「フレディア、右をみてみ・・・」


大穴を見て感心しているフレディアに、カレンは右側を見ろと言います。

フレディアが右を見ると、その先にも延々と細長い回廊が続いていました。


「あっ!これヤバイやつだわ・・・」


フレディアは絶句しました。




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