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第七十八話 カレンのわがまま

帰りはカレンに雷の魔法を自由に使っていいと許可したので、もう大はりきりでガンガン魔物と戦っていきます。おかげで来るときは森を抜けるのに10日かかったのが、帰りは何と8日で森を抜けてしまいました。


「よし!このまま川を下って、一気にカラカラ砂漠まで行こうぜ!」


「お前、何を言っているんだ?」

「パステルのギルドへ帰らないつもりなのか?」


一気に砂漠まで川を下ろうと言うカレンに、ハンクが尋ねました。


「もちろんだ!オレはこのまま最後まで一緒に行くに決まっているだろ?」


「決まっているって・・・」

「それはちょっとダメでしょ!サントスさんに叱られるよ?」


カーナが心配してカレンに言いました。


「いやぁ~!あいつに小言を言われるのが面倒なのよね~」

「だからさ!このまま黙って行っちゃうのが一番簡単でいいでしょう?」


カレンは悪びれる様子もなく、平然とそう言います。ギルドマスターとしての自覚など微塵もありません。


しかし、それを聞いたフレディアは、慌てて言いました。


「いや、いや!そんな事をしたら、後でわたし達が叱られるわ!!」

「ちゃんとサントスさんに言わなきゃダメよ!」


「え~~~っ・・・」


「え~~~っ、じゃない!」


「とにかく、ちゃんと話をしてからでないと、連れて行かないから!」


結局フレディア達に諭されて、一緒に行くにしても一旦パステルのギルドに帰って、サントスの了解を得てから・・・と言う事になりました。



「お~~い!いま帰ったよ~!!」


ギルドの扉を勢いよく開けて、カレンがスタスタと中へ入って行きます。

そして周りの者には目もくれず、そのまま自分の執務室へ行くと、着替えの服やら何やらポンポンと魔法のアイテムボックスの中に放り投げていきます。


「ギルマス、なにをやっているのですか?」


ギクッ!


カレンのおかしな行動を察知した副ギルドマスターのサントスが、急いで執務室へやって来ました。


「い、いや~!砂漠って暑い所だろ?」


「だから着替えを持って行かないと・・・」


ぜんぜん説明になっていないカレンの返事に、サントスは少しイラッとした顔で話を続けます。


「ギルマスは道案内で、フェルゼナの塔へ行ったのですよね?」


「お、おぉ!そうだよ!」


「それでいま帰って来られた訳ですな?」


「う、うん・・・」


「それで、なんで砂漠の話しが出てくるのですか!?」


「い、いや!ちょ、ちょっとね!」


「ちょっと、とは?」


サントスは、またカレンがわがままを言いだす前に、何とか止めようと必死です。

実は彼女には放浪癖があって、急にギルドから居なくなるのは一度や二度では無かったのです。


「ちょっと行ってくる!」と行先も告げず、平気でひと月近くも留守にして、帰ってくると、「近所の八百屋に買い物に行ってました!」と、平気で噓をつくのです。

その度に大変な目に合っているサントスとしては、もう我慢の限界なのでした。


「えっへへ~・・・」


「オレ、フレディア達を手伝わないといけないからさぁ・・・」


カレンはちょっと照れながら、かわいく言いましたが、サントスは容赦しません。


「はぁ?なんでパステルのギルドマスターのあなたが、あの方たちを手伝わなければならないのですかな?」


「それでなくても、あなたが留守の間は、みんな大忙しだったのですよ!」


「留守中の報告もまだギルマスにしていませんし、ギルマスからの報告書もまだもらっておりませんが?」


武闘派のカレンにとって最も苦手な事は、この報告書の作成でした。

彼女がギルドマスターになってからは、この手の事務処理はすべてサントスに丸投げしていたのですが、今回のフェルゼナの塔への道案内は、ギルドからの参加者はカレンだけなので、サントスに丸投げする訳には行きません。


そんな事が頭によぎったカレンは、段々とめんどくさくなってきました。



「わかった!!」


カレンは腕を組んで、険しい顔をして言いました。


「は?」


「何をどう分かったと?」


「オレはもうギルドを辞める!!」

「じゃあな!!」


そう言うと、カレンはスタスタと執務室を出て行きました。


「ええ~~~~っ!!」


もうメチャクチャです。

サントスは慌ててカレンの後を追いました。


ギルドの入り口には、フレディアとカーナが立っていました。

カレンがちゃんとサントスに説明したのか、心配で様子を見に来ていたのです。


そして二階の執務室からスタスタと出て来たカレンを、青い顔をして追いかけるサントスの姿が見えました。


「あっ!ヤバイ!!」


フレディアは急いで逃げようとしましたが、それをカーナが慌てて止めました。


「ちょっと、フレディア!逃げてどうするのよ?」


「カナちゃん、わたし達はここに居なかったことにしょうよ!」


そう言っているうちに、カレンはもう目の前まで来ています。



「フレディア、カーナ、お待たせ!」

「話は付いたから、さぁ、行こうぜ!!」


カレンの後ろから青い顔をして必死に追いかけて来るサントスを見れば、一方的にカレンが飛び出して来た事など、火を見るより明らかです。


「そんな訳ないでしょう!」


(まったく、なにをやっているのよ!カレンとフレディアは!!)


カーナはフレディアを右手で捕まえながら、左手でサントスを指さしてピシッと言いました。


「いい加減にしなさい!!」



結局カーナが間に入ってサントスと話し合った結果、『国の危機を救う旅』にカレンが参加する事が認められました。


国を救った英雄がパステルのギルドから出る事はとても名誉な事だと、カーナがサントスを諭したのです。


そして今のカレンなら、Sランクも決して夢ではないと説明しました。

それを聞いてサントスは、渋々ながら了承してくれたのでした。


その間、カレンとフレディアには口を出さないように、カーナから釘を刺されていたので、二人ともシュンとしていました。



こうしてカレンは、無事にパステルの人たちに見送られて、砂漠へと旅立って行きました。



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