第七十六話 フェルゼナの塔
おそろしの森に入って七日目。
カレンはようやく魔法をうまく使えるようになってきました。
しかし雷を直接相手に落とす技は、フレディアに止められているので、まだ使わせてもらえません。
一度内緒で使ってみたら、危うくハンクを直撃しそうになったので、フレディアに大目玉を食らったのです。
「お前!俺を魔物と間違えたのかよ!?」
ハンクからもえらく叱られて、さすがのカレンも反省しているようです。
このおそろしの森には、Ⅾランクのゴブリンから、AランクのトロールやSランクのゴーレムまで、実に多種多様の魔物が驚くほど沢山生息しています。
ゴブリンやオークなどは、カレンのムチの一振りでいくらでも倒せるのですが、さすがにトロールなどの巨人はムチだけでは厳しく、今はそういった大型の魔物を、雷をまとわせたムチで倒す練習を積んでいるのでした。
そしていま、トロールが二体フレディア達の前に現れました。
「よし!ブルート足止めしろ!」
カレンの指示で、ブルートがトロールの足元を攻撃し、動きを止めています。
ブルートの動きに気を取られているトロール一体に、カレンの雷をまとったムチが炸裂しました。
ヒュン!
ピシ~ッ!!バチバチバチ!!
音を立てて青白い閃光がトロールの体中を駆け巡りました。
攻撃を受けたトロールは、電撃で意識がもうろうとして突っ立っています。
そして、すかさずもう一体のトロールにも攻撃を仕掛けました。
今度は薄い紅色の閃光がトロールの身体中を駆け巡ると、そのトロールは何故か仲間のトロールに襲い掛かりました。
カレンが雷にティマーの能力を加えたため、トロールの頭が錯乱して同士討ちを始めたのでした。
カレンとしては、とどめを落雷で決めたいところですが、まだ使わせてもらえないので、二体のトロールがフラフラになったところを、ハンクとカーナが仕留めます。
「カレン、うまく魔法が使えるようになったね!」
フレディアから褒められて、カレンはとても嬉しそうです。
そして頑張った従魔のブルートに、ご褒美の干し肉を与えました。
「ほら、ブルート!ご褒美だよ!」
「ハンクにも!」
カレンはブルートとハンクに干し肉を投げ渡しました。
ゴチン!
「いって~~~っ!!」
「俺はお前の従魔かよ!!」
「ご、ごめん、つい・・・」
ハンクにゲンコツを落とされたカレンは、両手で頭を抱えてしゃがみ込んでいます。
「あ~ぁ、それが無かったら完璧だったのに・・・」
カーナとフレディアはあきれ返り、ルナはクスクスと笑っていました。
そしておそろしの森に入って10日目、ようやく森を抜けてフェルゼナの塔へたどり着いたのでした。
フレディア達の目の前には、光り輝く純白の大きな塔がそびえ立っています。
「これって大昔からあったんだよな?」
ハンクが眩しそうに、光り輝く塔を見てつぶやきます。
「まるでつい最近建てたように、きれいなんですけど?」
カレンも塔を見上げて驚いています。
「神様が住んでいた塔だからね!」
フレディアとカーナは普通に納得しています。
「それでフレディア、この塔には居るのか?」
「その・・・。ハープを守る魔物が・・・」
カレンがフレディアに尋ねました。
「うん!いるね!!」
「すごいのが!!」
フレディアとカーナは、カレンを見て頷きました。
「やっぱりそうか!」
「さっきからブルートが怯えているんだよ・・・」
カレンが、ブルブルと体を震わすブルートを見て心配しています。
「この塔は聖域だからね、魔獣のブルートはここには入れないよ」
「えっ?じゃあ、ハープを守っているのは魔物じゃないのか?」
フレディアの言葉に矛盾を感じたハンクが尋ねました。
「白いドラゴン!」
「聖獣フロイドだと思う」
フレディアはそう答えると、みんなに言いました。
「この塔は、わたしとカナちゃんだけで登るから!」
「皆はここで待っていてくれる?」
「ちょっと、待った!」
真っ先にフレディアの意見に異議を申し立てたのは、カレンでした。
「オレもティマーとして、その聖獣フロイドとやらを見てみたい!」
続いてハンクも意義を申し立てます。
「そうだな、俺もせっかくここまで来たんだ、最後まで付き合うぜ!」
「いや、ハンクは無理だろう?」
「さっきフレディアが、ここは聖域だって・・・」
ゴチン!
「いって~~~っ!!」
ハンクにゲンコツを落とされたカレンは、両手で頭を抱えてしゃがみ込みました。
そしてカレンの頭に出来た大きなたんこぶを見たルナは、慌ててヒールの魔法で治療してあげています。
「分かった!じゃあ、みんなで行こうか!」
「でも、絶対にフロイドを攻撃しちゃダメだからね!」
フレディアは念を押すと、塔の扉を開いて中へ入って行きました。
長い螺旋階段を、フレディア、カーナ、ハンク、そしてルナとカレンという順番で進みます。
カレンはルナと肩を組んで、ハンクに聞こえないように、こっそり耳元で何か話しかけていました。
「なぁ、ルナ。あんな凶暴な男をどうやって手なずけたんだ?」
「なんか秘訣があるのだろ?頼むからオレにも教えてくれよ・・・」
自分の素行の悪さを棚に上げ、ルナに方法を尋ねています。
もちろん、ルナはカレンのお願いにニコニコしているだけで、期待している答えは返ってきませんでした。
「ちぇ!ルナは美人だからな~。たいていの男はそれで落とせるのか~!」
自分が美人だと自覚していないカレンは、羨ましそうにルナにそんな事を言っています。
そして今度は・・・。
「白いドラゴンか・・・」
「カッコいいな~!」
「オレの従魔に出来ないかな~」
などと、興味をまだ見ぬ聖獣フロイドに向けていました。
そして長い階段を上り切り、ついに塔のてっぺんの扉の前までたどり着きました。
この扉を開けると、聖獣フロイドの待ち受ける、悲劇のハープがある部屋です。
フレディアとカーナは、重い扉を開けて中へ入りました。




