第七十話 ニコヤの遺跡
ニコヤの遺跡の前には、フレディア達がしばらくの間滞在できるように、ギルド総出でキャンプを設立してくれました。
この遺跡は地下二階までは調査が完了しており、一般のギルド員でも自由に出入りは出来ます。しかしここに出現する魔物はかなり上級者向けの魔物が多く、Bランクの冒険者以上が推奨されているのでした。
スターバーストのメンバーが、わざわざ遠いジーノの村まで遠征していたのは、この魔物の強さが問題だったからです。
つまりレベルの低い者が近場で稼げるダンジョンが無いので、レベルアップを兼ねて出稼ぎに出ていたと言う訳です。
地下二階までに出現する魔物は、Cランクのガイコツ戦士やBランクのガイコツ騎士、グールなどのアンデッド系や、Bランク上位の鉄のサソリやサンドワームなど、Bランクの冒険者でも一人では危険な魔物がたくさん出現します。
幸いな事は、二階までのダンジョンに仕掛けられた罠は、すべて解除されている事ぐらいでしょうか・・・。
さて、遺跡の前では、探索するメンバーがすでにスタンバイしていました。
スターバーストのリーダーのリオンとムーンライトのメンバー。
それに言うまでもなくライトブリーズのメンバーです。
スターバーストの他の三名は、まだ危ないという事で居残りを命じられています。
ムーンライトのメンバーは、Bランクに昇格したのはマウロだけですが、他のメンバーも熟練者揃いですし、今回の旅でかなり腕を上げているので、実力的にも問題ないとギルドマスターが判断したからでした。
勿論ライトブリーズ以外のメンバーが探索できるのは、地下二階までとなっています。
「よし、じゃあ行くか!」
ここのダンジョンを経験した事のある、リオンが先頭で攻略が開始されました。
入り口から迷宮内に入ると、細く長い回廊がしばらく続きます。
ここにはたくさんの罠が仕掛けられていたらしく、その痕跡が至るところにありました。
地下二階までは、いたる所にたいまつの火が灯されており、視界は良いのですが、自分の影が不気味にうごめく魔物の姿にも見え、いやがおうにも緊張感が高まります。
細い回廊を抜けると、ガランとした広い空間に出ました。
ここには遺跡を支える柱がたくさん並んでおり、柱にはトーテムポールのような独特な模様が彫られています。
柱に彫られた魔人の顔が、たいまつの火に揺らぎ、まるで本物の魔物のようにも見えます。
その柱を擬視していたマルティーが、思わず声を上げました。
「出たわ!あの柱の影!!」
マルティーの指さす先には、グールが五体も群れてこちらへ向かって来ます。
アンデッド系の魔物であるグールには、物理攻撃はあまり効果がありません。
シラは咄嗟にファイアの上位魔法のフレイムを放ちました。
これで三体を倒し、残った二体はフレディアがアークで始末しました。
「こんなのが群れで襲って来るなんて、やっぱりここはヤバイ所だな・・・」
「ふふん!私がいるから大丈夫よ!」
コローニが嫌な顔をして言いますが、アンデッド系に強い炎の使い手のシラは、得意そうに言いました。
(いや、二体やり損ねたじゃん!)
コローニは、不安そうにシラを見ています。
その後も次々と魔物が襲ってきますが、それらをすべて撃破し、一行は地下二階へ到着しました。
ここからはマウロたちと別れて、フレディア達ライトブリーズだけで地下へと降りて行きました。
長い石の階段を降りた所には大きな空間が広がり、いたるところに食い荒らされた人骨が散乱していました。
話を聞いた50人の探索チームの、その多くがここで命を落としたと思われます。
柱や岩の影からは、死せるアーマーナイトや、悪霊の取り付いたワイトと言ったAランクの魔物が襲ってきました。
それらを倒しながら進んだ先には、細長い回廊が待ち受けています。
「この先は罠が仕掛けられていそうだな・・・」
「じゃあ、アレを使ってみる?」
ハンクの言葉に、フレディアがダーク一家の親分からもらった『盗賊の秘宝』を取り出しました。
フレディアが盗賊の秘宝をかざすと、それに反応して回廊のあちらこちらで、パチパチと赤いプラズマが発生しています。
ハンクが近くにあった石を、そのプラズマの発生している所にぶつけると、床から沢山の槍が飛び出しました。
「こりゃ、ひどいな・・・」
「あちこちに仕掛けがしてあるわね~」
「だから、この回廊には魔物がいないのね・・・」
罠を見たハンク、フレディア、カーナはため息をつきました。
フレディア達はプラズマの発生している所を事前に確認し、仕掛けを発動させていきました。
毒の塗られた吹き矢、落とし穴や落石など、実に多種多様な仕掛けが施されていました。
そして回廊を抜けると、魔物たちが容赦なく襲ってきます。
それらを踏破し、地下四階へたどり着きました。
地下四階には三階以上に壮絶な罠や、強い魔物がうごめいていました。
それらを撃破しながら探索していると、カーナが急に立ち止まり、首を傾げています。
「どうかしたの、カナちゃん?」
不審に思ったフレディアが尋ねました。
「うん、ここね、風の流れが変わったの」
「この壁の向こうに部屋があるかも・・・」
カーナはこの階層全体に微風を巡らせて、何か異常がないか探っていたのでした。
「だとしたら、この柱が怪しいな・・・」
ハンクの言葉に、フレディア達は近くにあった大きな石柱を調べました。
そしてフレディアが、柱に彫られた魔人の口の中に手を突っ込むと、壁が大きな音を立てて開いたのです。
ガ、ガ、ガ、ガ、ガ・・・ガン!!
「これは玄室ね!」
中を覗いたフレディアが、棺の横にある宝箱を見つけました。
その宝箱の中には二冊の書物が納められています。
その内の一つをフレディアが手に取って見ました。
「あらっ?これは魔法書みたいね!」
「インドラの書・・・。これ雷の魔法書だわ・・・」
フレディアはそう言うと、中身をパラパラとめくってみます。
「ふ~ん・・・。これはかなり強力な魔法書だわね!」
「でも、これを使うには、かなりの魔力が必要になるかも・・・」
魔法書の起源は、光の神々が闇の神々と戦っていた、神話の世界にまで遡ります。
地上を征服しようとする闇の神々と戦っていた光の神が、強大な闇の神と戦うために、自分たちの能力の一部を人に授けたのが始まりでした。
能力を授けるにあたり、神と人は契約を結ぶことになりました。
その契約の書が、のちの魔法書と言われています。
人は魔法書に秘められた魔力を取り入れる事で、魔法が使えるようになりますが、その魔法の威力の強弱は、魔法の属性に適性があるという事も大切ですが、何より強力な魔力が込められた魔法書かどうかで決まるのでした。
今回見つけた魔法書は、かなり強い魔法が秘められているようです。
そしてもう一つの書物の方は・・・。
「いっぱい何か書かれているけど、ぜんぜん読めないわ・・・」
フレディアはカーナやハンク、ルナにも見せますが、だれも読む事はできませんでした。
「これは持ち帰って調べてもらいましょうよ」
そう言うと、カーナは本を大切に魔法のアイテムボックスの中にしまいました。
そして、最下層と言われる地下五階へと降りて行きました。




