第六十八話 蜃気楼のオアシス
「さて、本部から通達のあったヤーンの遺跡の事だが・・・」
歓迎会の後、ダグラスはギルドで調べた内容をフレディア達に説明しました。
この席にはスターバーストも同席しています。
「ハッキリ言って、まだその実態は何も掴めていない」
「分かっているのは、幻の遺跡と呼ばれている事と、ヤーンの遺跡には神々が贈った武器が眠っているという事だけだ」
「それと亡国のサンドレラ王国に、『ヤーンへの道標』があったという伝説ぐらいか・・・」
険しい顔をしてギルドマスターは言いました。
「それじゃあ、どこから手を付けていいのか分かりませんね」
マウロがため息をついて言いました。
マウロの言葉にしばらく考えていたギルドマスターは、「確かではないが・・・」と、前置きをしたうえで話を続けました。
「ヤーンの遺跡に関係あるかどうかは不明だが、怪しい場所の特定は出来ている」
「この広大な砂漠の中をやみくもに探しても、死にに行くようなものだ」
「まずはその場所を調べてみてはどうかな?」
「ギルマス、それはどこですか?」
リオンがギルドマスターに尋ねました。
「ここから南に30キロメートルほど行った所に、頻繁にオアシスの蜃気楼が現れる場所がある」
「ヤーンの遺跡は蜃気楼に守られているという伝説があるからな、調べてみる価値はあるかもしれない」
「あぁ!昔から神隠しに会うと恐れられている、大岩のある場所ですね!」
「分かりました、明日俺が皆さんをそこへ案内しますよ!」
リオンはそう言うと、スターバーストのメンバーに準備をするように言いました。
翌日カルカラッサの町から30キロメートル程離れた、大岩のある場所へと出発しました。
何もない砂漠では、どんな物でも目印になる物は重宝されるのですが、この大岩だけは昔から忌み嫌われていました。
この近くに頻繁に出現する蜃気楼に惑わされ、迷ったあげく行き倒れてミイラになってしまうと言われているからです。
この地に伝わる神隠しといい、砂漠の蜃気楼には何か秘密があるのかも知れません。
町を出て5時間ほどで、目的の大岩にたどり着きました。そこで昼食を摂りながら休憩していると、辺りを調査に出ていたクラットから蜃気楼が見つかったと連絡が入りました。
急いでその場所へ行ってみると、なるほど目の前にオアシスが見えます。
少しだけ陽炎のようにユラユラと揺れますが、熱風による揺らぎだと言われれば、納得できる程度の揺らぎで、本物のオアシスと見分けが付きません。
本当に蜃気楼かと疑ったフレディア達は、目の前のオアシスに近づこうとしますが、一向にオアシスとの距離は縮まりませんでした。
「すごい!これが蜃気楼なのね!」
初めて見る現象に、フレディアは感心しています。
他のメンバーも、蜃気楼の中に何か見えないかと、目を凝らして見ていますが、オアシスと風に揺れるヤシの木以外は、はるか地平線まで砂丘が続いているだけでした。
「あっ!そうだ!!」
フレディアは何かを思い出したようで、ゴソゴソとマジックアイテムボックスの中を探し始めました。
「あった!!」
そう言うと、何か変わったアイテムを取り出しました。
それを両目に当てて、蜃気楼の中を覗き込んでいます。
「フレディア、それなに?」
不審に思ったカーナがフレディアに尋ねます。
「これね、双眼鏡っていって、遠くの物が近くに見える道具なの」
「神様が作ってくれたのよ!」
そう言って双眼鏡を覗いていたフレディアは、何かを見つけたようで、急に声を上げました。
「あっ!なにか瓦礫のような物が見える!!」
そう言うと、カーナに双眼鏡を渡して確認してもらいます。
「おわ~っ、すご~い!ほんと、ヤシの木がすぐ目の前に見えるわ!」
「あっ!あれね?」
「ほんとだ!あれは遺跡に間違いないわ!」
地平線の彼方に、ポツンと小さく頭だけしか見えませんが、遺跡に間違いないようです。
他のメンバー達も代わる代わる双眼鏡で確認して、間違いないと確信しました。
「問題は、あそこへどうやって行くかなのよね・・・」
フレディアは神隠しの話しと何か繋がりがあると感じていましたが、ここで悩んでいても仕方がないので、一旦町に戻って情報を探す事にしました。
そして双眼鏡を返してもらおうと振り返ると、しつこく景色を見ていたカチュアが、双眼鏡を空に向けたため慌てて止めました。
「こら~~~っ!!」
「それで太陽を見ちゃダメ~~~!!」
フレディアの大声に驚いて、カチュアは慌ててフレディアを見ます。
「それで太陽を見たら、目が溶けちゃうよ!」
「ええっ!!」
カチュアは驚いて双眼鏡を手放しました。
便利な道具は使い方を誤ると、とんでもない事故につながったりします。
フレディアは双眼鏡をアイテムボックスにしまうと、帰り支度を始めました。
町に帰ってギルドマスターのダグラスに今日の出来事を報告すると、ダグラスからも良い知らせが入っていました。
「町の長老様に事情を説明したら、協力してくれる事になったのだ」
「ヤーンの遺跡へ行く手掛かりが掴めるかもしれないので、お前たち長老様と会ってきてくれ」
「分かりました!これからすぐに行ってきます」
「頼んだぞ!俺も後からすぐに行く!」
「了解です!」
リオンの案内で、フレディア達は町外れにある長老の所へ向かいました。




