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第六十七話 カルカラッサの町

テグニスの町を出てから10日目に、砂漠の入り口にあるフォルクという小さな村に着きました。

ここは砂漠に近い村ですが、レヌス川の支流の恵みを受け、農地の広がる緑豊かな土地です。


ここからカルカラッサの町までは後四日ほどですが、ほとんどの旅人はここで装備を整え、過酷な砂漠の旅に備えます。


フレディア達も、ここまで乗って来た馬車を置いて、ここからはラクダに乗って旅をする事になりました。

初めて見るラクダに、フレディアとカーナも興奮してはしゃいでいます。


「「お~~~い!!」」


レストランのテラス席で休憩していると、こちらへ向かって走って来る人達がいました。


「「よお、久しぶり!!」」


フレディア達に声をかけて来たのは、ジーノの廃坑で知り合った『チームスターバースト』のメンバー達でした。


「ギルド本部からの通達で、あんた達が来ると聞いて、ここで待っていたんだ!」


そう話すのはスターバーストのリーダー、Bランクの剣士リオンです。

背が高く、黒い髪に茶色の目をした精悍な顔つきの男です。


「すげえな!Sランクだなんて!」


彼はCランクの聖職者クラットで、背の高さは普通の青い髪に青い瞳の優男です。


「その節はどうも!」


Cランクの魔法使いボトルは、赤い髪に赤い瞳の、とんがり帽子が良く似合う神経質そうな感じの男です。


「ここからカルカラッサの町まで、俺たちが案内するぜ!」


Cランクの戦士カチュアは、茶色い髪に黒い瞳の太っちょで、ハルバードを武器にしています。いずれも20歳前半の若いチームです。



「キャハハ!よろしくね!」


フレディアが代表で仲間たちを紹介した後、一行はここに三日間滞在し、旅の準備をする事になりました。


砂漠の気温は変動が激しく、昼間は40度を超え、夜は0度近くまで下がります。

こういった過酷な環境に加えて、砂漠に現れる魔物はBランクの魔物が多く、出くわすと命の危険に晒されるため、砂漠の旅は10名以上のキャラバンを組むのが常識となっているのでした。


砂漠では頻繁に出没する大サソリや、空から獲物を狙う大きな骨の怪鳥、獄門鳥。

巨大な竜の化石の骨ドラゴンやガイコツの戦士など、どれも危険な魔物ばかりです。


そのためフォルクの村にはギルドの出張所があり、キャラバンの護衛に対応しているのでした。


さて、いよいよ出発するという時になって、急に思い出したように、リオンから持ち物について聞かれました。


「赤い宝石なんて持っていないよね?」


「あぁ、誰も持っていないが、それがどうかしたのか?」


不審に思ったハンクがリオンに尋ねました。


「いや、昔からの砂漠の民の言い伝えでね、赤い宝石を持って砂漠に入ると、神隠しにあうと言われているんだ」


「神隠しってなに?」


「行方が分からなくなるんだよ」

「どこか別の世界に迷い込むって言われているのさ」

「だからカルカラッサの住人は、絶対に砂漠には赤い宝石は持って行かないよ」


Cランクの聖職者、クラットがフレディアに説明してくれました。


「ふぅ~ん。そうなんだ・・・」


フレディアはこの話に興味津々でしたが、今はそれどころではありません。

一行は慌ただしく準備を整えると、リオンが先頭に立って出発の号令を掛けました。


こうしてリオンがリーダーを務める13名のキャラバン隊は、砂漠の町カルカラッサに向けて出発したのでした。



出発して最初に出会った魔物は、大サソリでした。

ライトブリーズとムーンライトは全員美女ぞろいなので、スターバーストの三人のお調子者たちは、カッコいいところを見せようと、張り切って戦いに挑みます。


スターバーストの戦法は、クラットが防御魔法で仲間をガードし、ボトルが氷の魔法で魔物の動きを鈍らせ、リオンとカチュアで仕留めるといったものです。

これはジーノの廃坑でカーナの見せた、『木枯らし』の魔法をヒントに考え出した戦法です。


カチュアはジーノの廃坑で巨大アリにやられてから、剣から破壊力のあるハルバードに武器を変えています。

当たれば威力がありますが、今回女の子にいいところを見せようと、りきみすぎて空振りに終わりました。リオンがBランクらしい安定の攻撃でとどめを刺しています。


こうしてカルカラッサの町へ到着するまでの間、スターバーストとムーンライトが競い合うように魔物と戦いながら、旅を続けました。


そして四日目のお昼に、ようやくカルカラッサの町へ到着しました。


カルカラッサの町は砂漠のオアシスに出来た町で、大きなオアシスを囲むようにたくさんの家が立ち並んでいます。

家の作りは焼きレンガに漆喰(しっくい)を塗った真っ白な家が多く、家の周りには沢山のヤシの木が生えています。

青い空に白い家、そして緑の木々が映えるとても美しい町でした。


この町は砂漠を縦断する商人たちの憩いの場として栄え、他国の珍しい品々が集まる貿易の町でもあります。

また商人たちのキャラバンの護衛や、砂漠にある遺跡の発掘などでギルドの雇用も多く、カルカラッサのギルドはとても活気にあふれていました。


「お~い!お客さんを連れて来たぜ!!」


カチュアがフレディア達の到着を、ギルドに伝えました。

噂のSランク冒険者の到着というので、ギルドの冒険者たちは一斉にフレディア達に注目しました。そして・・・。


「「「えっ?」」」


フレディアとカーナを見たお約束の反応です。


「キャハハ!」


「てへへ・・・」


そしていつものように、二人とも照れているのですが、それなら後から入ればいいのにと思うのですが、目立ちたがり屋な性格がそれを許さない、くそめんどくさい二人なのでした。


「おぉ!長旅ご苦労さん!待っていたぜ!!」


そう言って出迎えたのは、カルカラッサのギルドマスターのダグラスでした。

初老の男ですが、がっしりとした体格に鋭い目は、たたき上げの冒険者を物語っています。

若い頃はスコーピオンキラーの異名を持つ、Aランクの戦士でした。


「まずはゆっくり休んでくれ。例の話は今夜の歓迎会の時にでも・・・」


そう言ってダグラスはギルドの二階にある、仮眠室へ一行を案内しました。



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