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第六十二話 ペルルカの町

フレディア達がパステルの町を出発する時、ギルドマスターのカレンが大きな風呂敷包みを担いで現れ、自分も一緒について行くと言い出して、大騒ぎになりました。


「オレはSランクを目指しているんだ!」

「だからSランクのチームと一緒に行く!」


などと、訳の分からない事を言いだし、副ギルドマスターのサントスが必死になって止めていました。


フレディアとカーナは、カレンの使役する魔獣ヘルハウンドをモフモフしたいので、大賛成だったのですが、パステルのギルド員総出でカレンを引き留めている間に、強制的に出発させられてしまいました。


出発する馬車の中からフレディアとカーナが叫びます。


「カレン!待っているからね~!」


「ワンちゃんと一緒に来てね~!」


(ぐぬぬ・・・。あの二人、また、いらぬことを!)


サントスは真っ赤な顔をして、他のギルド員と一緒にカレンを押さえつけています。


「おぉ!絶対に行くからな~!!」


フレディアとカーナの声援に、カレンは大声で吠えていました。



パステルの町を出てから12日目に、ペルルカの町に到着しました。

カラフルな建物が並ぶこの町は、商業都市として王都ロファに負けないほど栄えています。


この町の繁栄の理由は、すぐれた生産技術と貿易によるものでした。


パステルの町から輸入した新鮮な魚や豊富な果物、美しい色彩の陶器などの品々や、この先にあるテグニスの町で採掘される油を輸入し、それを強大な輸送力を使って各地で販売しているのです。


また町で莫大な利益を上げているのが、パステルの町から輸入した果物や穀物で作った上質のお酒です。その中でも甘い果実酒が女性に大人気で、飛ぶように売れているのです。

また、油と共に広い家庭で使われているランプなどの工芸品作りにも長けており、町のあちこちに色とりどりの美しいランプを扱ったお店が並んでいます。


フレディア達は、この町に五日間滞在する事になりました。

理由は馬車での長旅で、マイオスの腰痛が悪化してしまったからです。

フレディアのリカバーなどで治療しても、それは結局一時的な痛みの緩和でしかなく、根本的な治療にはなりません。

そんな訳でしばらく滞在する事になったのですが、それはみんなにも嬉しい休養となりました。


腰痛は日にち薬なので、マイオスは宿屋のベッドに寝ころんで、のんびりと本を読んでいます。


マウロはハンクにお願いし、剣の練習に励んでいました。

デスペラードのゲイナーに勝てなかった事が、よほど口惜しかったのでしょう。


コローニは練習に励む二人の横で、のんびりと釣りを楽しんでいました。


フレディア、カーナ、ルナ、シラ、マルティーら五名の女性陣は、朝からルンルン気分で町に繰り出しています。

この五日間、思いっきりショッピングを楽しむつもりのようです。


旅の間は戦闘用の服に特化しているため、こういう自由な時間は、思いっきりおめかしをしたいのかもしれません。

一番に入った洋服店で、お昼過ぎまで時間をかけて、お気に入りの服を試着しまくっています。


フレディアとカーナも、天使の時はお決まりの純白の衣服なので、人間の姿になった今、思いっきりおしゃれな服を着てみたかったのでしょう。

シラやマルティーに勧められて、色々と試着しています。


大人しいルナは、他の全員から着せ替え人形のようにされて、目を回していました。

しかし背も高くてモデルのようなスタイルの彼女は、どの服を着せても美しく見栄えが良いので、みんな自分の事のように必死に選んでいます。

そしてネックラインから胸の辺りが綺麗に見える赤いドレスを着た時は、全員「おぉ~!」と感嘆の声をあげていました。


ルナは恥ずかしがっていましたが、全員が強制的にこれに決定してしまいます。


そして美しく着飾った五名の女性陣は、鼻の下を長く伸ばして見とれている男たちには目もくれず、スイーツのお店へと突撃します。


数えきれないほどの種類が並ぶスイーツの中から、フレディアとカーナが選んだのは、お店一押しの果実酒を使ったケーキでした。

お酒が入っているからやめた方がいいかも・・・と、シラとマルティーに言われましたが、一口食べてそのおいしさに感激した二人は、追加で三つも注文して完食しています。


「あたしたち、これでもう大人の仲間入りよね・・・」


赤い顔で、うっとりとした表情のカーナが、幸せそうに言いました。


カーナと同じく赤い顔をしたフレディアが、シラが飲んでいた果実酒を自分にも飲ませろと騒ぎ、「いい加減にしろ!」とシラとマルティーの二人に叱られています。



この日の夜、夕食をとるため、着飾った美女軍団と、チームのむさい男たちとで町のレストランに行きましたが、何故か男たちは信じられないほど無口になり、終始よそよそしい態度を取っていました。


ただ、フレディアとカーナには普通に接してくるので、フレディアはちょっとへそを曲げていたのですが・・・。


「あっ!なるほど、そういう事ね!」


ハンクとルナ、マウロとシラ、そしてコローニとマルティーを交互に見て、ニヤニヤと含み笑いをしています。

そんなフレディアを見たカーナは不思議に思い、フレディアに尋ねました。


「フレディア、なにニヤニヤしているのよ?」


「ふっ、ふっ、ふっ・・・。カナちゃん、今年は大漁だわ!」


「わたしが旅行に行ける日も近いわね!」


「?」


カーナは意味が分からず、首を傾げていました。



次の日、ペルルカのギルドに来ていたチームに、町長から食事に招待したいと連絡が入りました。


「皆さんに是非ともお会いしたいとの事です」


「町長だけでなく、この町の商工会の会長さんも来られるようですので、是非参加して欲しいのですが・・・」


ギルドマスターのマッコイから打診され、慌てたのは男連中でした。

昨夜のきらびやかな女性たちを思い出して、このままではいかんと慌てたのです。

全員大急ぎで服屋へ直行しました。


唯一ハンクだけは町長のお誘いを拒否していましたが、ルナになだめられて、渋々服屋さんへ連れて行かれました。



「あら~っ!馬子にも衣装って言うけれど、よく似合っているじゃな~い!」


シラとマルティーが、着替えた男連中を見て、笑っています。


「まぁな!俺たちも紳士だってところを見せておかないとな!」


「そうそう、ただでもギルドは野蛮な連中の集まりだと誤解されているからな!」


マウロとコローニは、ジャケットの襟を正して答えました。


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