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第五十八話 作戦開始

翌日のお昼前、酒場ではいつものように荒くれ共が酒を食らい、ギャーギャーと好き勝手に騒いでいます。

そこへ二人の男がドアを蹴破って入ってきました。


バ~~~ン!!


ハンクと、マウロの二人でした。


ハンクはギロリと荒くれ共を一瞥すると、一番奥の席で酒をあおっていたゲイナーの前までズカズカと歩いて行きます。

途中で何かをわめきながら駆け寄って来た男を、剣を抜いたマウロがけん制しました。


「そこで大人しく見ていろ!クズ共が!!」


ハンクはゲイナーの前で止まると、にやけて様子を見ているゲイナーに告げます。


「貴様ら、いつまでギルドごっこを続けるつもりだ?」

「ゴブリンの討伐をする気が無いのなら、とっととこの村から失せろ!」


ハンクの言葉に、周りにいた荒くれ共が動こうとしたのを、ゲイナーは制止しました。


「いや、いや、これはSランクの冒険者さん。聞き捨てならねえ事をおっしゃる」

「俺たちはこの村をゴブリンの襲撃から守ってやっているんだぜ!」


「嘘だと思うのなら、村の連中に聞けばいいぜ?」


ゲイナーはニヤニヤと笑いながら答えます。


「あぁ、それは聞いた」


「俺は、いつまでイタチごっこをして遊んでいるのかと聞いているんだ!」


「何だと、てめぇ~!!」


槍使いのザンザスが、槍を持って立ち上がりましたが、ハンクに睨まれるとその場に立ちすくんでしまいました。


「貴様ら三カ月前にミントの町とジーノの村のギルドに、ゴブリンの討伐を依頼したと村人に言ったそうだな!」


「俺はミントのギルド員で、そちらはジーノのギルド員だが、そんな話は聞いたこともないぞ!」


マウロが吐き捨てるように言いました。

それを聞いたゲイナーは、ニヤニヤと笑いながら周りの仲間に尋ねます。


「そりゃ、おかしいな?確かに依頼したと言っていたよな?」


「へい、間違いありませんぜ!俺もそう聞きました!誰が言ったか忘れましたが」


「「「わっ、はっ、はっ、はっ・・・」」」


荒くれ共は大笑いしています。


その言葉を聞いたハンクはニヤリと笑うと、ゲイナーに告げます。


「いいだろう!では、お前たちでゴブリンの討伐をする事だな!」


「それが出来ないなら、とっととこの村から失せろ!!」


「明日の昼まで猶予をやる!!」


そう言うと、ハンクとマウロはさっさと酒場を出て行きました。


あとに残された荒くれ共は、怒ってギャーギャーと騒ぎ、今にも二人を襲いに行きそうな事態となっています。


「隊長、あのまま行かせていいんですかい?」


マウロに剣を突き付けられた男がゲイナーに尋ねます。


「あの半獣半人の男、あいつのSランクのバッチはダテじゃねえよ!」


「ここでやり合ったら、少なく見積もっても十人は()られていたぜ」


「ゲッ!そ、そんなに強いのですかい?」


「あぁ、ありや化け物だ!」


「そ、そうなんすか・・・」


男は顔をしかめて、悔しそうにしています。


「だからよ!化け物は、化け物に殺らせればいいんだよ!」


「あっ、なるほど!さすがは隊長!」


「サルトン!準備しろ!」


「今回はゴブリンを途中で引き返すなんて、生ぬるい事は無しだぜ!」


「村の連中も、つまらねえ事を考えないように、少し痛い目に合わせてやらねえとな!」


「分かりやした!へっ、へっ、へっ、こりゃ見物だぜ!」


「ゴブリンの群れに襲われて、逃げ惑う奴らの姿が目に浮かぶぜ!」


「「「ギャハハハ・・・・」」」


ゲイナーに命じられたサルトンは、数名の仲間を連れて、早速準備にかかります。




「よお!どうだった?」


村長の家に戻ったハンクとマウロに、コローニが首尾を尋ねました。


「あぁ、バッチリ食いつきやがった!間違いなく奴らは動くぜ!」


コローニの問いに、マウロが自信満々に答えます。


「しかし20人もゴロツキがいる所へ、よく二人だけで行ったな?」

「恐ろしくはなかったのか?」


心配しながら待っていたマイオスも、マウロに尋ねます。


「ハンクさんがいたからな!」

「それより、途中でハンクさんがブチ切れて暴れ出さないかと、そっちの方が心配だったよ」


ハンクを見ながらそう話すマウロに、ハンクはニャッと笑って答えます。


「お楽しみは最後まで取っておくものだ・・・」


そう言うハンクの頭を、ルナがいい子いい子して、褒めてあげていました。




それから三時間後、ゴロツキ共に動きがありました。

斥候に出ていたマルティーが戻り、デスペラードの連中が、村を見下ろせる南の丘へ移動していると報告してきたのです。


「思った通りだな!」


「よし、こちらも打ち合わせ通りに行くぞ!」


マウロはそう言うと、シラに指示を出しました。


「シラ!残りの村人を連れて裏山に避難だ!後は作戦通りに頼む!」


「分かったわ!まかせてちょうだい!」


そう言うと、シラは村長の家に集まっていた村人に指示を出します。


実はこういう事になるのを予測して、足の遅い老人や女性や子供たちを、夜明け前に村の西にある裏山へ避難させていたのでした。

万が一の事を考えて、シラは残りの武装した村の男たちと一緒に、その裏山へと向かいます。


フレディアとカーナは、予定通り村の東の門へと向かいます。

ゴブリンの住む集落は、東の山の麓にある奥深い森にあります。その森と村の間には広大な草原が広がっているので、そこでゴブリンを迎え撃つため、フレディアとカーナはその草原の前でゴブリンの群れを待ち受けます。




村の様子が一望できる、南の丘で様子を見ていたゲイナーの一団に、笛使いのサルトンと仲間三名が息を切らせながら戻って来ました。


「隊長!そろそろ来ますぜ!」


「ご苦労!さあ、これからいよいよ血祭の始まりだぜ!」



カ~~~ン!カ~~~ン!カ~~~ン!



村の東門に設置されている見張り台から、ゴブリンの襲撃を知らせる鐘が鳴り響きました。


ゲイナー達がニヤニヤしながら様子を見ていると、二人の女の子がトコトコと村の東門から出てきます。

しかし、それ以外には誰も出てきません。


「なに?たった二人だと!しかもガキじゃねえか!?」


「おい、おい・・・。他の連中は尻尾をまいて逃げ出したのか?」


「あのでけえ面をしていた二人はどこへ行きやがった!」


「ガキ二人を置いて逃げ出すなんて、俺たち以上に悪じゃねえか!」


「ギャッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・・」


ゴロツキ共は口々に(ののし)って、大笑いしています。



ド、ド、ド、ド、ド、ド・・・・・・。



そこへ森の中から、ゴブリンの集団が雪崩(なだれ)のように押し寄せてきました。

地響きを上げながら、200匹を超えるゴブリンが一気に攻め寄せて来たのです。

それを見た裏山へ避難している村びとは、ガタガタと震えてみんな泣き出しそうな顔をしています。


「あぁ!神様!どうかお助けを!!」


年寄りたちは一心にお祈りしています。

恐ろしさのあまり、子供たちはとうとう泣き出してしまいました。

母親は子供がこの光景を見ないように、ぎゅっと抱きしめています。


「大丈夫!あの二人を信じなさい!」


「あの二人は神様の使いなのですから!」


そう言ってシラは村人をなだめます。



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