第五十伍話 ミントの町に到着
翌朝フレディア達は、ロファのギルドに居ました。
そこでギルドマスターのローゼスから、フレディア、カーナ、ハンクへSランクのチタンで出来た虹色のバッチと、認定書を渡されました。
ギルド創立以来、初めてのSランク冒険者となった三名には、その場にいた大勢の冒険者から惜しみない拍手が送られます。
フレディアは嬉しそうに、虹色に輝くバッチをなでなでしています。
「君たちはこの国を救うという、重大な任務を背負っているが、我々ギルドも全面的に協力させてもらう」
「昨夜のうちに、王様の命令をしたためた書簡を、各ギルドへ向けて送った」
「それとこれは旅の費用にと、王様から預かったものだ」
そう言うとローゼスはフレディアに金貨1万枚を手渡しました。
これは国王から発せられた、Sランクの最重要クエストの報酬金額でした。
翌日フレディア達は、ミントの町へ向かって出発しました。
カラカラ砂漠へ行くには、ミントの町からジーノの村へ向かう道の途中から、南へ下って行かなければならないからです。
ミントの町へ向かう旅の間、フレディアはハンクとルナの様子を見ていました。
ハンクはルナの事をとても大切にしているし、ルナにとってハンクはかけがえのない人に違いありません。
それなのにハンクが頑なにルナの気持ちを遠ざけようとしているのが、愛のキューピットとしてのフレディアには、とてももどかしいのでした。
それにしても、ハンクにはルナの心の声が聞こえるのに、天使であるフレディアに聞こえないのは何故でしょう?その事にもフレディアは少し悩んでいるようです。
(ハンクとジーノの村で別れる時、ルナを故郷へ送り届けたら自分は旅に出ると言っていたけど、いまでもそう思っているのかな?)
ギルドに用意してもらった馬車に揺られながら、そんな事を考えていたら、いつの間にか眠ってしまいました。
旅をして8日目の昼にミントの町へ到着しました。
「お腹が空いたね!ごはん食べよっか?!」
「は~い!あたしオムライス!」
「キャハハ!わたしはハンバーグ定食にする!」
フレディアとカーナを先頭に、四人はモモちゃんのお店に入って行きました。
「いらっしゃいませ~!」
モモちゃんは今日も元気に働いています。
「あら?フレディアちゃんとカーナちゃん!おひさ~!!」
「モモちゃん、お久しぶり!」
「モモちゃん元気?」
フレディアとカーナは、モモちゃんとハイタッチで挨拶を交わします。
「あらっ?二人ともギルドのバッチが替わっているわね?」
「ふふ~ん!」
「へへ~ん!」
フレディアとカーナは、自慢げに胸をそらしてSランク冒険者のバッチを見せびらかしています。
「まぁ!バッチに『S』って刻印がされているわね?!」
「こ、これって、もしかして!?」
「ふふ~ん!」
「へへ~ん!」
「初心者のSって意味ね!」
ドテッ!!
「良かったわね!丁稚奉公からやっと普通のギルド会員になれたのね!」
二人はモモちゃんの言葉にショックを受けていますが、モモちゃんは二人の事を、見習いの『お子様ギルド員』と思っているので、やっと一般のギルド員と同じになれたと勘違いしているのでした。
「今日はお祝いにサービスしちゃうわよ!!」
注文を聞いたモモちゃんは、忙しそうに厨房へ向かいました。
その様子を見ていた隣の親子連れの子供が、母親におねだりしています。
「ママ!ボクもあんなバッチが欲しいよ~!」
「あら、まぁ~。ギルドごっこがしたいの?」
「じゃぁ、ごはんを残さず全部食べたら、買ってあげるわよ」
「わ~~~い!」
ガ~~~ン!!
「カナちゃん、こんな事なら金色のAランクの方が良かったかもね・・・」
「そ、そうね。この色のバッチは、誰も知らないから・・・」
自慢したがり屋の二人は、ちょっぴり後悔しているようです。
「お待たせしました!」
てんこ盛りのオムライスと、特大のハンバーグ定食。
それに頼んではいない、大きなプリンが二つテーブルに置かれました。
持ってきたのはベゼルの姉のハンナでした。
「いらっしゃい!フレディアちゃん、カーナちゃん!」
「このプリンは私からのお礼よ!」
「「わ~い、やった~~!!」」
落ち込んでいた二人は、プリンを見て大喜びしています。
「ハンナは牧場で働かないの?」
ハンバーグを口いっぱいに頬張って、しゃべれないフレディアに代わってカーナが尋ねました。
「ええ!牧場は母とベゼルとクロマに任せているの!」
「あなた達のお陰で、農場の経営も順調に行っているわ!」
「私はここで働きながら、お店にも農場で作ったチーズやヤギのお乳を卸しているの」
「それとこれ、お二人がお店に来たらって、ベゼルとクロマから頼まれていたのよ」
そう言うと、大きなチーズの塊を二人に渡しました。
喜んでいる二人を見て、ルナがハンクに何か言っているようです。
「・・・・・・・・」
「あぁ、二人ともこの町の人気者だな!」
「俺の暮らしていた村とは大違いだ。まぁ、もうあそこへは戻らないがな・・・」
食事が終わると、眠そうにしているフレディアの手を引っ張って、ギルドへと向かいました。
フレディア達を見ると、フローラが慌ててギルドマスターの執務室へ案内しました。
「おぉ!お前たち、よくやってくれたな!本部から通達があったぞ!」
ギルドマスターのパルコスが、嬉しそうに書面を見せてくれました。
「あのね、ギルドマスター!ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
上機嫌でお茶を飲んでいるパルコスに、フレディアが言いました。
「おぉ、何だ?言ってくれ!」
「このバッチAランクに替えてくんない?」
ブ~~~ッ!
お茶を吹き出したギルドマスターが、慌てて理由を聞きます。
「おい!それはどういう意味だ?」
「だって、このバッチ誰も知らないから、自慢できないもん!」
(こ、子供かこいつらは?!)
「バカもん!本部から直々授与されたものを、わしが勝手に替えたらどえらい事になるわい!」
「わしは間違いなくギルマスを辞めさせられるか、下手をするとクビだよ、クビ!!」
「絶対にダメだ!!」
「「え~~~っ」」
「え~じゃない!!」
フレディアとギルマスが言い合いをしている所へ、お茶とお菓子を用意したフローラがやって来ました。
「フレディアちゃん、この方たちが新しいチームの仲間なの?」
「そだよ!」
「じゃあ、後でチームの登録の変更をお願いしますね!」
「ラジャー!」
ベゼルとクロマがギルドを辞退したので、新たにハンクとルナがチームライトブリーズのメンバーになりました。
ルナはギルド員ではありませんが、Sランク冒険者が三人もいるチームなので、もう何でもオッケーみたいですね。
結局バッチの交換は聞き入れられず、フレディア達が不服そうに執務室から出ると、こちらを見て手を振る一団がありました。
「よ~っ!ライトブリーズ!」
「すげえな!Sランク冒険者の集団かよ!」
声をかけて来たのは、チームムーンライトのリーダーのマウロとコローニでした。
見るとマウロはCランクからBランクへ昇格していました。
他のメンバーもフレディア達を満面の笑みで迎えてくれています。
Sランク冒険者と言われたフレディアとカーナは、嬉しそうにググっと胸をそらせて、虹色に輝くバッチを見せびらかしています。つい今しがたまで、交換してくれと駄々をこねていたのは何だったのでしょう?
ムーンライトとライトブリーズがギルドの喫茶室で話をしていると、受付のフローラがやって来ました。
「ライトブリーズとムーンライトの皆さんは、明日の朝ギルドマスターの所まで来てくださいね、ギルドマスターからの辞令があるそうですよ」
「辞令ってなに?」
辞令の意味が分からないフレディアが聞きました。
「たぶん、カラカラ砂漠へ行く話じゃないかな?」
「私の勘では、ライトブリーズのお供にムーンライトを選んだんじゃないのかな?」
「フレディアちゃん達だけじゃ、道中危なっかしいから・・・」
そう言うと、フローラはクスクスと笑いました。
「あ~っ、それ分かるわ・・・」
シラが頷き、他のムーンライトのメンバーも全員納得しているようです。
フレディアは意味が分からず、首を傾げていますが・・・。
翌朝ギルドマスターが辞令を発表しました。
「ムーンライトは、ライトブリーズの任務に同行して、カラカラ砂漠に行ってくれ!」
「出発は急で悪いが、明日の朝だ!」
「何しろこの任務には国の存亡がかかっているからな!」
そう言うと、ムーンライトに旅費として2000ゴールドを、そしてライトブリーズに1万2000ゴールドを渡しました。
1万ゴールドは、前にギルドに渡したヨルムンガンドなどの魔物の代金だそうです。
ミントの町からカラカラ砂漠にあるカルカラッサの町までは、およそ二ヶ月の長旅です。
フレディアとカーナ、そしてルナも一緒になってお菓子をいっぱい買い込んでいます。
その後モモちゃんのレストランへ行って、お弁当をいっぱい作ってもらいました。
大急ぎで旅の準備をした一行は、翌朝馬車に乗ってカラカラ砂漠へと旅立ちました。




