第五十二話 セレノス様の奥の手
「親父!!」
「おぉ!お前たち!!」
「「「親分、長い間のお努め、ご苦労様でした!!」」」
ダーク一家の面々が、一斉に頭を下げました。
「みんな世話をかけたな!」
アネゴはフレディアたちを見て、驚いた顔で言いました。
「あんた達、やるね~!まさか、本当に親父を助けてくれるとは思わなかったよ!」
「キャハハ!」
アネゴとフレディアたちが話をしている間を、一匹のネコが偉そうに歩いて来ました。
それを見た大臣は・・・。
「むっ!な、何だこの汚いネコは!!二本足で立って歩くとは、生意気なネコだな!」
「おい、衛兵!この汚いネコを・・・」
「セレノス様!!」
そう叫ぶと、カーナは嬉しそうにセレノス様の所へ駆け寄りました。
「なに!!セレノス様!!?」
「ええっ!!」
ネコの姿を見た王様は驚いていますが、追い出そうとした大臣は、顔が真っ青になっています。
「チャオ!!」
セレノス様は、王様の前まで来ると、右手を上げて挨拶しました。
王様は信じられないと言った顔で、セレノス様を見ています。
「こ、このお方がセレノス様?!」
「うひゃ、ひゃ、ひゃ・・・。王よ、これは世を忍ぶ仮の姿じゃ!気にするでない!」
「おぉ、なるほど!神様は、容易には本当のお姿を見せぬと言う訳ですな!!」
王様が良い方に解釈して納得している横で、フレディアはジト目でセレノス様を見ながらつぶやいています。
「世を忍ぶ、仮の姿ね・・・。わたし、本当の姿がどんなだったか、忘れちゃった・・・」
ギクッ!
「うひゃ、ひゃ・・・。フ、フレディアは、相変わらず冗談がきついのぉ!」
セレノス様は、頭をかきながらフレディアの方へ振り返りました。
「しかし、わしもそろそろネコの姿には飽きて来たところじゃ!」
「元の姿に戻るぞ!フレディア、妖精の杖をくれ!!」
「ないよ!」
「おぉ、そうか!」
「えっ?」
「さっき、バズエルに取られちゃいました!」
「・・・・・・・」
「うひゃ、ひゃ、ひゃ。また、また~。冗談ばっかり!」
「セレノス様、それ本当なんです!王様に化けたバズエルに盗まれちゃったんです!」
ガ~~~ン!!
「な、な、な、なんと!!バスエルに取られたとな!?」
カーナに言われたセレノス様は、ものすごく狼狽えています。
「あわわわ・・・・。何という事じゃ!!それは、ひじょ~~にまずい!!」
「長い間変身したままの姿だと、妖精の杖の力では、元に戻れなくなってしまう!!」
「ちょっと、フレディア。セレノス様、真剣に慌てているみたいなんだけど?」
「本当ね~。これはちょっと予想外だったわ・・・」
二人がコソコソと話していると、セレノス様の切羽詰まった声が聞こえてきました。
「フレディア!カーナ!!こうなっては一刻の猶予もならん!!」
「急いでバズエルから妖精の杖を取り戻すのじゃ!!」
「取り戻すって・・・。一体どうやって?」
「うひゃ、ひゃ、ひゃ!仕方がないのぉ。では、最後の奥の手を使うとするか!!」
「!!!」
「ほらね!カナちゃん!わたしの言った通りでしょ?!」
「ほんとだ!すごいフレディア!あたしフレディアの事、尊敬しちゃうわ!」
「神様、奥の手ってなに?」
カーナはフレディアの予測通りになった事に驚き、フレディはどんな手段があるのか、楽しみで仕方ありません。
「うむ、よいか!力の杖と妖精の杖は、お互い相反する力を持っておる!」
「だから、長い時間二つの杖を一緒に持つことは出来ぬのじゃ!」
「うん、うん、それで?」
「じゃから、バズエルは必ず力の杖の方を手に持ち、妖精の杖を近くに置いておるはず!」
「うん、うん、それで?」
「その杖を一気に盗むのじゃ!!」
「えっ?で、でもバズエルに見つかったら?」
「かまわん!一人や二人の犠牲はやむを得ぬ!ここは突撃あるのみじゃ!!」
「名付けて、『当たって砕ける玉砕戦法』じゃ!!」
「「はぁ~~~~?!」」
「そんなの、ぜんぜん奥の手じゃないじゃない!!」
フレディアとセレノス様がギャーギャーと言い争いをしていると、後ろで話を聞いていたダークが、フレディアに話しかけました。
「遥か昔、ダグダルムの邪教徒と戦ったヤーンの国には、魔力を跳ね返す宝玉があったと、仲間から聞いたことがあるのだが・・・」
「えっ?本当!?」
「おぉ、そうじゃ!『イーヴ』の魔石を忘れておった!!」




