第五十一話 釈放されたダーク
「あぁ、何という事だ!12年前にダグダルム神殿と共に滅びたはずのバズエルが、再び舞い戻って来るとは!」
「しかも、バズエルの魔力を打ち消す事の出来る、妖精の杖まで奪われてしまうなんて!」
大臣が悔しそうに拳を握り締めて言いました。
「なに、妖精の杖とな?」
「はい王様、王妃様のお姿を元に戻した杖の事でございます」
「おぉ、そうじゃ!!そう言えば、バスエルが話しかけておった娘たち・・・」
「あの者たちは一体・・・」
「はっ!あの娘たちは天使・・・だそうです」
「なに!?て、天使とな?!!」
その天使二人とルナとハンクは、わんわん泣いている、姿をネズミに変えられた三人を慰めていました。
「あ~ぁ・・・。よりによって、ネズミなんかに変えられちゃうなんて、最悪よね!」
しゃがんでネズミたちを見ていたフレディアが、ため息を漏らします。
「ほ~んと!ウサギさんとか、ネコさんなら良かったのにね~」
カーナも同情しています。
「でも、ミミズやナメクジじゃなくて良かったね!!」
「そうね!ミミズなら、スズメに食べられちゃうし・・・」
「ナメクジなら、そんなに泣いたら自分の涙で溶けちゃうよ!」
「「キャハハ!」」
フレディアとカーナは面白がっているのか、同情しているのかよく分かりません。
だけどハンクの言葉は、ネズミたちを脅すのには十分でした。
「だが、腹をすかしたネコには気を付けた方がいい。パクっと食われちまうからな!」
「「キャハハ・・・」」
大笑いしているフレディアたちを、大臣が呼びに来ました。
「あ~~~。天使さんたち、王様がお呼びです。どうぞ、こちらへ」
フレディアとカーナは連れ立って、王様の前まで進みました。
「そなた達が王妃の姿を元に戻してくれたそうじゃな。礼を言うぞ」
「ところで、そなた達は天使と聞くが、それはまことであろうか?」
「はい!わたしは、技術と創作の神様に仕えるフレディアと申します」
「あたしは、風の神セレノス様にお仕えするカーナと申します」
「セレノス!?確かその名は、先ほどバズエルが口にしていた・・・」
「はい、12年前にダグダルムの神殿を封印した神様です!」
カーナがググっと胸を張って答えます。
「な、なんと!!そうであったか!!」
「それで神様は、そなた達をここへお遣わしになったのじゃな?!」
「バズエルの魔の手から、我らをお救い下さるために!!」
王様は椅子から身を乗り出して、二人に尋ねました。
「う~ん。説明するとややこしいけど、結果的にはそうなるのよね・・・」
フレディアが首を傾げながらつぶやきます。
「でも、ちょっと違う点は、その前に王様にダーク一家からセレノス様を取り戻してもらう予定だったのよね・・・。でないと、元の姿に戻せないから」
カーナも腕を組み、人差し指を頬に当てて悩んでいます。
「だけど、さっきバスエルに杖を取られちゃいました!キャハハ・・・」
「どうしょう、フレディア!こまったね!!」
「大丈夫だよ、カナちゃん!セレノス様の事だから、きっと・・・」
『うひゃ、ひゃ、ひゃ!仕方がないのぉ!では、最後の奥の手を使うとするか!!』
「なんて事になるに決まっているわ!」
「そ、そうかな~・・・」
さすがのカーナも、今度ばかりはフレディアのように楽観的にはなれません。
「とにかく、セレノス様を自由の身にしなくちゃ!」
フレディアはここまでカーナとおしゃべりをして、王様に質問されていたことをやっと思い出しました。
「あっ!そうだった!!」
「あの~王様・・・。お願いがあるのですけど・・・」
「おぉ、わしに頼みとは何んじゃな?そなた達の頼みなら、何でも聞くぞ!ささ、遠慮せずに申してみよ!」
「あの、実は・・・」
「何と!ダークを釈放して欲しいと?」
「はい!それと街のライブハウスにいるダーク一家もここへ呼んでください」
「うむ、分かった!!大臣、早速手配いたせ!!」
「はっ!」
しばらくすると、兵士に連れられてダークがやって来ました。
「ダークよ!牢獄での務め、長い間ご苦労であった。そちは今日より晴れて自由の身じゃ。
これからは心を入れ替え、まっとうな道を歩むように!」
「はい!牢獄での暮らしは、もうコリゴリです。二度とバカな事はいたしません」
「ですが、王様・・・。私はどうしても、王様にお聞きしたい事が一つあります」
「わしに聞きたい事?」
「はい!7年間、牢獄の中で悩みに悩みぬいた疑問でございます」
「よろしい、ダークよ申してみよ!」
「7年前・・・。私は賞金欲しさに、6人の娘を王女に仕立て、王様の前に差し出しました。
どの娘も、捜査願いに書かれていたように、赤い髪で茶色の瞳をした、王女にそっくりの娘たちでした」
「ところが!王様は娘たちに、たった一言!何の変哲もない、ごくありきたりの質問をされただけで、すぐに偽物と見破ってしまわれました!」
「覚えておるぞ、ダーク。今まで、会見に訪れた多くの者たちにしてきた質問じゃ」
「確かあの時・・・」
「名前はマーガレット。年齢は12歳の女の子・・・。そう質問したはず・・・」
「そうです。あの時なされた王様の質問は、どこにでもあるような、ありきたりの質問でした」
「だが、どうして、そのような質問で嘘を見破れたのか?私はこの7年間、考え抜きました。そして、一つの結論を出しました!」
「結論とな?わしが、どうやってそちの嘘を見破ったのかが分かったと言うのだな?」
「そうです!」
「申してみよ!」
「王様は質問の答えなど、どうでも良かったのです。おそらく王女は・・・」
「うむ、王女は?!」
「質問に答えることの出来ないお方なのです!つまり・・・」
「言葉を話せない!声の出せないお方なのです!!」
「!!!」
フレディア達は一斉にルナを見ました。
「なるほど。声が出ないのであれば、わしの質問に答えた者は王女ではない・・・」
「そういう事だな、ダーク!」
「はい!王様、この老人のたっての願い!ぜひともご返答を!!」
「ダークよ・・・。王女が無事我らの元へ戻ったとき、すべてが明らかにされるであろう」
「その時が来れば、お前の元に使いを出そう」
「それでよいな?」
「は、はっ!もうし訳ございません、王女様は未だ行方不明のまま・・・」
「王様の心中を察せず、無礼な発言。どうかお許しください」
ちょうどこの時、兵士が王様の元へ報告に来ました。
「ただ今、ダーク一家が参りました!」
「うむ、すぐにここへ通しなさい」




