表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/116

第五十話 乱入者

「おい、こら!!貴様ら勝手に入ってはならん!!」


「うるせえ!!」


ドン!


制止する衛兵を突き飛ばして、何者かが乱入してきました。


「騒々しい、何事だ!!」


異変に気付いた大臣が兵士に問い(ただ)します。


「はっ!この者たちが、王様に会わせろと、強引に押し通ろうとしましたので!」


乱入してきた者を見た瞬間、ハンクの顔色が変わりました。


「チッ!!こいつらは!!」


「お前たちは何者だ!ここを何処と心得る!!」


「お~~~っ、ほっ、ほっ、ほっ・・・」


「大臣、わたくし達は怪しい者ではありませんわ!」


優雅に笑いながら、貴族風の婦人が進み出てきました。


「お前はエルゼのババア!!」


「ハンク待って!ここで暴れたらまずいから!」


婦人を見たハンクは、殴りかかろうとしましたが、フレディアとカーナに止められました。


「ほっ、ほっ、ほっ・・・。わたくし達は、大切なお方をここへお連れしたのです」


「なに?大切なお方だと!?」


婦人の言葉に、大臣は衛兵に捕縛の命令を出すのを止めました。


「さっ!こちらへお連れしなさい!」


「!!!」


「「あ~~っ!!ルナ!!」」


ジョルダンとバルガンが、ルナを連れて現れました。


「お~~~っ、ほっ、ほっ、ほっ!」


「なにを隠そう、このお方こそ12年前に行方不明になられた・・・」


「ウオ~~~ッ!!!もう我慢ならん!!」


ハンクは一声吠えると、フレディアとカーナの腕を振りほどき、夫人の前にいた四人の兵士を放り投げて、無法者たちに襲い掛かりました。


「うわっ!!ハ、ハンク!!て、てめえなぜここに!!」


「貴様ら、もう許さん!覚悟しろよ!!」


「「どひゃ~~~~~っ!」」


ハンクが二人の男に殴りかかろうとしたその時でした。


「騒々し!!いったい何事じゃ!!!」


(りん)とした声を発したのは、何と!ロファ国の王様でした。


「こ、これは?!」


大臣は自分の目をこすって、何度も確認していますが、それは紛れもない王様でした。


「「「ええっ!?王様がもう一人!?」」」


その場にいた全員が、まるで狐につままれた様な顔で、二人の王様を見比べています。


「ありゃ?これ、どういう事なの?」


「王様って、二人もいる訳ないわよね?」


フレディアとカーナも、お互い顔を見合わせて驚いています。


後から現れた王様が、玉座の間へ進んで来ました。


「これは、いったい何の騒ぎじゃ!」


「!!!」


「おぉ!!后よ、その姿は!!?」


後から現れた王様は、元の姿に戻った王妃様を見て驚いています。


「まぁ!!これはどうした事でしょう!?王が二人もいるなんて!?」


「な、何じゃと?わしが二人じゃと?」


王妃様に言われ、後から現れた王様は、目の前に自分とうり二つの王様がいる事に気付きました。


「「な、な、なんじゃ!これは一体どういう事じゃ!!」」


二人の王様は、まったく同じ事を言っています。


「あわわ・・・。一体どちらが本物なのだ?」


大臣はどちらの王様が本物なのか見分けが付かず、オロオロしています。



「あ!そうだ、妖精の杖を使えば!!」


ニセの王様を見分ける方法を思いついたフレディアは、王様に杖を返してくれるよう言いました。


「王様!ちょっと、その杖を返してくれませんか?」


「おぉ!そうであった!この杖はそちの物であったな?!」



「ふっ、ふっ、ふっ・・・。だが、わしはこの杖が気に入っておるのじゃ」


「この杖は、わしがいただく事にするぞ!」


「えっ!」


「貴様!王ではないな!!」


ジョルダンの胸ぐらをつかまえて、殴りかかろうとしていたハンクが叫びました。

その声を聞いた大臣と兵士たちが、慌てて後から現れた王様を庇います。


「お、お前は何者だ!!」


大臣の問いに、最初からいた王様が答えました。


「ふっ、ふっ、ふっ・・・。わしの本当の姿を、この妖精の杖を使って見せてやろう」


そう言うと、男は杖に魔力を送り込みました。

すると杖にはめ込まれている宝玉が光だし、暖かい緑の光が男の姿を包みます。


キュイ~~~ン!


ほんの数秒で光は消えました。

そして、そこに現れたのは・・・。


銀色の髪に、青い瞳をした見目麗(みめうるわ)しい容姿に、金色の美しい魔法の刺繡(ししゅう)のされた青のローブをまとい、そして背中には黒い翼が生えています。


「き、貴様はバズエル!!」


本物の王様が叫びました。


「バズエル!?」


フレディアとカーナが驚いています。

大臣は驚きのあまり、腰を抜かしてしまいました。


「ふっ、ふっ、ふっ・・・。久しぶりだな王よ!」


「12年ぶりに帰って来てやったのだ!もう少し嬉しそうな顔をしてもらいたいものだな・・・」


「お、おのれバズエル!」


全員が堕天使バスエルの登場に気を取られている隙に、ルナが夫人を突き飛ばし、ハンクの胸に飛び込みました。

ハンクはルナを守るため、しっかりと抱きしめながら、バズエルを鋭い目で睨んでいます。



「さて、そこの天使のお二人には、礼を言わねばならんな」


「何しろ、力の杖を使う私にとって、一番厄介な妖精の杖を進呈していただいたのだからな」


「あげたんじゃ、ありません!!」


「杖を返せ!」


カーナとフレディアは、プンプン怒って文句を言います。


「まぁ、まぁ、そう怒るな!私たちは同じ天使同士じゃないか。仲良くやろうぜ!」


「何を言っているのですか!早く二つの杖を返して、おとなしく自首しなさい!!」

「でないと、セレノス様に()らしめてもらいますよ!!」


カーナがバズエルに脅しをかけますが、バズエルはそれを笑い飛ばしました。


「は~~っ、はっ、はっ、はっ・・・」


「セレノスだと!?あんな老いぼれに何が出来る!!」


「お前たち、一体何が楽しくて、あんな身勝手な神に仕えているのだ?」


「天使が神様にお仕えするのは当たり前でしょ!」


セレノス様をバカにされたカーナが、泣きそうな顔で言い返します。


「まさか、まじめに神に仕えて修行すれば、いずれ自分たちも神になれると信じているのじゃないだろうな?」


「そ、そうよ!まじめ修行すれば、きっと立派な神様になれるわ!」


今度はフレディアが怒って言い返します。


(だま)されるなフレディア!それは、神が天使を利用するための口実にすぎないのだ!」


「口実?」


「そうだ!神の力は絶対ではない!神は、天使の持つ力を恐れているのだ!だからうまい事を言って、我らを利用しているのだ!」


「・・・・・」


「フレディア、私に協力しろ!愚かな人間どもをねじ伏せ、我ら天使が神に代わってこの世界を支配するのだ!!」



「フ、フレディア・・・」


すぐに返事をしないフレディアを心配して、カーナが声をかけました。

するとフレディアは、右目の下まぶたを指で引き下げて言いました。


「あっかん、べー!!」



「くっ!それが答えか!!ならば、こうしてくれる!!」


そう言うなり、バズエルは力の杖をフレディアたちに向けて振るいました。


「よけろフレディア、カーナ!!」


そう叫ぶと、ハンクは二人を突き飛ばし、ルナを抱えて飛び退きます。


バズエルの放った杖の魔力は、フレディア達の後ろにいた夫人と二人の無法者に直撃し、三人はネズミの姿に変ってしまいました。


「「「チュ~~~~ッ!!」」」



「ちっ!外したか!」


「まぁ、いい!ダグダルムの神殿はまもなく復活する!この国は滅びたのも同然だ」


「わっ、はっ、はっ、はっ・・・・」


そう言うと、バズエルはコウモリに姿を変え、城の窓を突き破って飛び去りました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ