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第五話 ミントの町(三)

冒険者ギルドは、大勢の人で賑わっていました。

壁に張り出された依頼書を見る冒険者や、狩った魔物の素材を持ち込む冒険者などで溢れかえっています。

中には買ったばかりの剣を自慢している冒険者や、ただ椅子に座ってボ~っとしている冒険者もいます。


「わたし、冒険者ギルドに入るの初めてなのよね・・・」


フレディアは、このお仕事に少し興味があるようで、壁に貼り出された依頼書を、熱心に眺めています。


依頼書は、その難易度別に、上はSランクから下はEランクまで、色んな依頼があります。

低いランクの依頼では、迷子ネコの捜索や、荷物運びの人員募集などもありますが、最もポピュラーなのが、薬草の採取や、薬の調合用の素材集めなどです。

そしてランクを問わず、最も多いのは魔物の討伐依頼です。畑を荒らす魔物の駆除や、森に巣食う魔物の駆除など。中には賞金額が2000ゴールドという、Bランクの魔物の討伐依頼もありました。

だいたい宿屋の宿泊料金が、一泊二食付きで7ゴールドほどなので、かなりの高額依頼ですね。


でも一番高い位置にあるSランクの依頼書は、ロファ国王から出されているマーガレット王女の捜索依頼です。


一通り依頼書を見たフレディアは、お目当てのベゼルを捜しますが、どこを捜してもそれらしき冒険者は見当たりませんでした。


おそらく受けた依頼を達成するため、どこかへ出掛けているのか。もしくはレベル上げと素材集めを兼ねた狩りに出掛けているのかもしれません。


急に暇になってしまったフレディアは、しばらくつまらなそうに床に転がっていた石コロを蹴ったりしていましたが、部屋の隅で人目を避けてコソコソと話をしている二人の男が気になったのか、そちらへ様子を見に行きました。



「あんたBランク冒険者のバルガンの旦那だろ?」


頬に傷のある目つきの鋭い男が、大きな剣を背中に掛けた厳つい男に話しかけました。


「そうだが、あんたは?」


「俺の名はジョルダン。俺もBランクの冒険者なんだがよ・・」

「ところであんた、腕に自信を持っているようだが、この町の東にあるジーノの村に、『すごい奴』がいるのを知っているかい?」


「ジーノだと?あそこは鉱山の村じゃないか!だが、あそこはもう閉山したって聞いたが、まだ人が住んでいたのか?」


「あぁ、今じゃすっかりひなびちまってるがな・・・」


「そんなへんぴな所に腕の立つ野郎がいるなんて信じられないぜ!本当に強いんだろうな?」


「へっ、へっ、へっ・・・。強いってもんじゃねえよ!何しろ野獣だからな!!」


「なに?人間じゃないのか!?貴様、この俺をからかっているのか!なめた真似をしていると、この大刀の錆にするぞ!!」


「まぁ、まぁ、だんな!話は最後まで聞くもんだ」


「確かにその男は野獣だが、人間でもある!つまり、半獣半人ってやつだ」


「なに?!半分獣で、半分人間だと?」


「あぁ、おそらく狼とのハーフだと思うが、体は大きく、恐ろしいパワーと獣の素早さを併せ持っていやがる」


「う~~~む。で、そいつの首にはいくら懸賞金がかかっているんだ?」


「懸賞金はかかっちゃいねえ!だが噂じゃ『王家の石』を持っているらしい・・・」


「なに!『王家の石』だと?」

「行方不明になった、王女の持っていたあの宝石か?!」


「しっ!声がでけえよ旦那!」


「どうだい、バルガンの旦那?もしその野郎が王女を連れていれば、賞金は俺たちの物になる」


「たとえ王女がいなくても、王家の石が手に入りゃ、一生遊んで暮らせるだけの金になるぜ!」


「う~~む・・・。で、そいつは一体何者なんだ?」


「そいつは鉱山で働いているんだが、廃坑から湧き出る魔物を討伐するため、ギルドが会員になってくれるよう頼み込んだそうだ」


「ランクは俺たちと同じBだが、おそらく実力はそれ以上だと噂されている」


「うむ、確かにそいつは手ごわいな・・・」


「あぁ、だから俺はあんたを誘ったんだ。いくら相手が強いといっても、Bランクの俺と旦那が手を組めば、十分に勝算はあるってもんだぜ」


「ふっ、ふっ、ふっ・・・。いいだろう!その話、のったぜ!!」



何やら胡散臭い話をしていますが、あまり興味のない話だったため、フレディアは話の途中で居眠りをしてしまいました。

そして男たちが立ち上がった物音で、フレディアは目を覚ましました。



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