第四十九話 牛になった王妃様の治療(二)
ローゼスは二人の元へ駆け寄ると、真っ先に尋ねました。
「き、君たちは本当に、ギルドの冒険者なのかね?」
「そだよ!」
フレディアが嬉しそうに胸の銀バッチを指でつまんで見せました。
「そのようだが、どこのギルドなのかね?」
「ミントの町だよ」
「ミント。あぁ、パルコスの所か・・・」
(あっ!そう言えば、とんでもない奴が二人入ったと言っていたな!)
(という事は、この二人がそのとんでもない奴か?!)
ローゼスの額から汗がツ~~と流れ落ちます。
「で、君たち、本当に大丈夫なんだろうな?」
「まさか、面白半分で来たって事は無いだろうな?」
「もっちのロンよ!」
カーナが親指を立てて返事をします。
ローゼスは不安そうにチラチラと大臣の方を見ますが、ここは二人に任すしかないと判断したようです。
「大臣。この子たちは大丈夫だと言っておりますが・・・」
「はぁ?何を言っておるのだ!相手は子供なのだぞ!!」
「わたしたちは子供じゃないよ!」
怒鳴る大臣にフレディアが反発すると、カーナもすぐに言い返します。
「そうですよ!この姿は仮の姿、あたしたちは天使なんですからね!」
「なんと!天使じゃと?!」
これまで一言も声を出さなかった王様が、初めて言葉を口にしました。
その様子を見た大臣は、天使という言葉に興味を示した王様を、無下にはできないと考え、二人に対しては丁寧に話をする事にしました。
「あ~~。君たちは、わしをからかっておるのかね?見ての通り、いま我が国は重大な危機に直面しておるのだ!」
「キャハハ!知ってるよ!」
「だから、あたしたちが来たんじゃないですか~」
「あ、あのな・・・。これは国の存亡に関わる大事なことなのだ」
「君たちの相手をしている暇など・・・」
「!!」
「あ~~~。ちなみに天使さんたち、存亡って意味がわかるかな?」
「えっ!?そんぼう・・・の意味?」
「キャハハ!知ってるよ!!」
「木で作った攻撃用の武器のことだよ!ね、カナちゃん!!」
「え~~~っ!それはそんぼうじゃなくて、こんぼうでしょ?!」
「キャハハ!!そうでした!!」
「!!」
「あ!わかった!!ぐっと、我慢する事よね!!」
「それは、しんぼうでしょ!!」
「フレディア、本当に存亡の意味知っているの?」
「キャハハ!冗談、冗談!」
「存亡の意味は、国が存在し続けるか、滅びるかって意味だよね」
ガ~~~ン!
「えっ!そうなの?」
「そんぼうって・・・。お金が無くて困っている人の事でしょ?!」
「カナちゃん、それはびんぼうでしょ!」
「あっ!そうでした!」
「「キャ~~~ッハッ、ハッ、ハッ!!」」
(こ、こいつら、わしをおちょくっておるのではないだろうな?)
(とにかく、もう、さっさと終わらせてしまおう)
「あ~~~。とにかくだ・・・。今、君たちの相手をしておる暇はないのだよ」
「悪いが、帰ってもらおう」
「え~~~っ!そんな~~~!!」
「あたしたちのこと、天使だってぜんぜん信じていないでしょ!!」
「「ぶ~~~~!ぶ~~~~!!」」
二人がギャースカ文句を言っていると、王様が大臣に声をかけました。
「まぁ、まぁ、大臣!」
「せっかく来た者を、むげに帰す事もなかろう。試しにやらせてみてはどうかな?」
「は、はぁ・・・。王様がそうおっしゃるのでしたら・・・」
王様に言われ、大臣はしぶしぶ二人に向き直りました。
「あ~~~。王様が試してみよと、おっしゃっておる!」
「手短に済ませるようにな!」
「キャハハ!ラジャー!!」
「フレディア、がんばれ~!!」
フレディアはトコトコと玉座の前まで進みました。
その様子を見ていたギルドマスターのローゼスは、目をつむって何やら一心にお祈りを始めています。
「王様、はじめまして!」
「うむ、よろしく頼んだよ」
「それじゃ、いくよ!」
「それっ!」
フレディアは王妃様の前へ行くと、妖精の杖を取り出し、杖に魔力を送り込みました。
すると杖にはめ込まれている宝玉が光だし、暖かい緑の光が牛になった王妃様を包みます。
キュイ~~~ン!
ほんの数秒で光は消えました。
そして、そこに現れたのは、元の姿に戻った王妃様でした。
「「「おお~~~~~~~っ!!!」」」
その場にいた全員が驚きの声を上げています。
大臣は驚きのあまり、大きく開けた口をパクパクさせていますし、ギルドマスターのローゼスは、涙を流して感激していました。
驚いた王様は、フレディアに声をかけました。
「いや、これは驚いた!まさか本当に治すとは!!」
「フレディアと申したな。そちの使ったその杖は、一体何じゃな?」
「これは妖精の杖といって、力の杖の魔力を打ち消す事が出来る杖です」
「何と!力の杖の魔力を打ち消す事が出来る杖とな!?」
「ふ~~む・・・。そのような杖があったとは・・・」
「フレディアよ!その杖をわしに見せてはくれぬか?」
「はい」
フレディアは言われるまま、王様に妖精の杖を渡しました。
「おぉ!これが妖精の杖・・・」
その時です、部屋の外から大声で衛兵と言い争う声が聞こえ、何者かが乱入してきました。




