第四十四話 ロファの街(二)
ロファのギルドを出たフレディアたちは、ルナと神様の情報を集めるために、街の酒場で話を聞きました。
カーナがお酒を飲んでいた中年のおじさんに声をかけると・・・。
「なに?赤い髪で、茶色の目をした20歳ぐらいの女の子を知らないかって?」
「何言ってんだ!それじゃあバズエルにさらわれて行方不明の王女様じゃないか!」
「こっちが教えて欲しいよ!」
と、切れられてしまいました。
フレディアが大ジョッキでビールを飲んでいた女性に声をかけると・・・。
「あなた達、ロファの王妃様が動物の姿になったって知っている?」
「王様も気のどくよね。王女様の次は王妃様だなんて・・・」
「かわいそうで、もう飲まずにいられないわ!」
「マスター!ビールお代わり!!」
そういうとお代わりしたビールを、グイグイ飲んでいました。
カーナが、カウンターでウイスキーを飲んでいた若い男に声をかけました。
「王妃様を元の姿に戻した人には、な~んでも望みの物をくれるんだって!」
「よし!俺が気合で王女様を元に戻して、酒をタダにしてもらうぞ!」
「明日から毎日飲み放題だ~!」
「・・・・・・」
カーナはセレノス様の事が心配なので、頑張って隣でお酒を飲んでいるお爺さんに声をかけてみました。
「あの~、二本足で立って、言葉を話すネコを見かけませんでしたか?」
「なんじゃと?二本足で立って話すネコじゃと?」
「ぶわっ、はっ、はっ、はっ・・・。あんたもう酔っぱらっとるのか?」
「若いのにやるのう!!ぶわっ、はっ、はっ、はっ・・・」
「・・・・・・」
「カナちゃん、もう酔っぱらいから話を聞くのはやめとこうか・・・」
「あい・・・」
酒場を出たフレディアたちは、家の前に立っていた子供に話をしてみました。
「お姉ちゃんたち、白い竜って知ってる?」
(あっ!ラスカン峠の宿屋で言っていた話ね・・・)
「うん、知ってるよ!」
「本当?ねぇ、白い竜の正体を教えてよ」
「ええっ!白い竜の正体?そ、それは・・・。何だっけ、カナちゃん?」
「フレディア、あなた本当は知らないんでしょ?」
「ごめんね、あたしたちも知らないの」
「な~んだ、知らないのか。」
「あのね!僕が生まれた時、白い竜が空に現れたんだ」
「だから近いうちに、きっと良くない事が起きるって、お爺ちゃんが言ってた」
「えっ?どうして白い竜が現れると、良くない事が起きるの?」
「知らないよ!だけど前に現れた時、邪教の神殿が復活したって言ってたよ!」
気になったフレディアは、子供に頼んでお爺ちゃんの所へ連れて行ってもらいました。
「わしの孫が生まれた時、また空に白い竜が現れおった!」
「白い竜は悪い事が起こる前触れと、昔から伝えられておっての・・・」
「ロファの王女様が生まれた時も、この白い竜が現れおったのじゃ」
「恐ろしい事が起こらねばよいがのぉ・・・」
結局白い竜の正体は分からないままでしたが、フレディアたちの探索は続きます。
次は宿屋で話を聞くことにしました。
カーナが、宿屋のラウンジでくつろいでいるおじさんに、恐る恐る声をかけました。
「あの~・・・」
「二本足で立って、言葉を話すネコを見かけませんでしたか?」
「なに!しゃべるネコだと?」
「は、はい・・・」
「なんだ!君たちもしゃべるネコのショーを観に来たのかね?」
「えっ!ご存じなんですか?」
「ネコのライブショーは、街のライブハウスで一日に二回やっているよ!」
「あ、ありがとうございます!」
カーナは大喜びで、おじさんにお礼を言いました。
(ラ、ライブショー・・・)
(あの神様、ほんとに何をやってるのよ・・・)
フレディアは思わずヨロケそうになりましたが、気を取り直して厨房で働いていたコックさんに話を聞きました。
「いまお城じゃ、偉い学者や賢者様を集めているそうだが・・・」
「確か、行方不明の王女様が生まれた時にも、こういう事があったな・・・」
と、その当時の事を思い出して話してくれました。
(ん?なんか引っかかるわね・・・)
フレディアは少し気になったようですが、カーナが早くライブハウスに行こうと急かすので、考えるのを止めて出発しました。
ショーの開演は午後5時からだというのに、すでにライブハウスの前には、大勢の人が並んでいました。
「どうするカナちゃん、開演にはまだ3時間もあるよ」
「とりあえず、ここにいる人たちの話を聞いてみようか?」
そういう訳で、ライブハウスに並んでいる人たちの話を聞いて回りました。
親子連れの紳士に話を聞くと・・・。
「娘がどうしてもこのショーを観たいと申しましてな・・・」
わざわざ馬車を飛ばして、遠くから観に来たそうです。
若い女の子のグループは・・・。
「歌って踊るネコを観ないと、友達の会話に入れないの!すごく面白いんだって!」
と、とても楽しみにしていました。
お年寄りの人に話を聞いてみると・・・。
「わしも、もう歳じゃからのぉ・・・」
「冥土の土産に、歌って踊るネコを観ておこうと思いましてな~」
と、おっしゃっておりました。
そして一番前に並んでいた人に話を聞くと、いい席を取るために朝から並んでいるそうです。
開演まで3時間もあるので、フレディアたちは情報収集を再開しました。
今度はお城の近くにある、立派なお屋敷の人に話を聞きました。
相手は貴族なので、失礼のないようカーナが代表で話を聞くとこになりました。
「なに!?赤い髪で、茶色の目をした20歳ぐらいの女の子を捜している?それじゃ、まるで行方不明になったマーガレット王女ではないか!」
「おじさん、王女様の事を何か知っていますか?」
「うおっほん!勿論だとも!我が家は王家ゆかりの、由緒正しき家柄だからな!」
(あっ!由緒正しき家柄って、カナちゃんと一緒だ!)
「ふぅ~~~ん・・・。ねえ、ねえ、王女様って、一体どんな女の子だったの?」
「ちょっと、フレディア!言葉遣いが悪いわよ!」
カーナがたしなめますが、フレディアはマイペースです。
「うむ、マーガレット王女様はなぁ・・・」
「ん~~~。とても無口なお方だったなぁ・・・」
「だけど、とても優しいお方で、誰からも愛されておった」
「王女様があんなことになってしまわれるなんて・・・」
おじさんは、とても残念そうな顔をしています。
お屋敷で務めるメイドさんにも話を聞きました。
「あなた達、ライブハウスでやっている、歌って踊るニャンコショーはもう観た?」
「私、明日お友達と一緒に観に行くの!」
そう言ってルンルン気分で仕事をしていましたが、それを聞いたカーナは、少しへこんでしまいました。
そして街で最後に訪れたのは教会です。
教会ではお年寄りが集まって、井戸端会議を行っていました。
「みんな聞いたか?ミントの町の人々は、邪神の呪いでスズメにされてしまったそうだ!」
「ほぉ~~~っ・・・」
「それでな、どこかへ飛んで行ってしもうて、町にはだ~れもおらぬそうじゃ!」
「「「恐ろしや、恐ろしや~~!げに、まっこと恐ろしや・・・」」」
「わしの聞いた話ではのぉ・・。ミントの町の人々は、邪神の呪いでみんなミミズにされてしもうたそうじゃ!」
「ほぉ~~~っ・・・」
「それでな、みんなスズメに食べられてしもうたそうじゃぞ!」
「「「恐ろしや、恐ろしや~~!げに、まっこと恐ろしや・・・」」」
「私の聞いた話ではな・・・。ミントの町の人々は、邪神の呪いで、みんなナメクジにされてしまったそうですよ」
「ほぉ~~~っ・・・」
「それで、ナメクジになった自分の姿を見て嘆き悲しんだため、涙で体が解けて消えてしまったそうですよ」
「「「恐ろしや、恐ろしや~~!げに、まっこと恐ろしや・・・。」」」
「もう、みんなメチャクチャ言っているわ・・・」
カーナはそう言って呆れかえり、フレディアは両手を合わせて「恐ろしや、怖ろしや」と念仏を唱えています。
教会に来ていた別のお爺さんとお婆さんに話を聞くと・・・。
「王女様が生まれた時にも、白い竜が現れたのじゃ!きっと邪神の仕業に違いないわい!」
「王女様がお生まれになったとき、王様は偉い賢者様をお城に呼び、白い竜の魔除けをしてもらったそうですよ」
そう話してくれました。
別のお爺さんとお婆さんの話しでは・・・。
「お城の学者は、白い竜の正体はホウキだと言うておった!あの学者はアホじゃ!」
「姿を変えられるなら、わたしゃ、ピチピチの娘の姿に変えて欲しいわ」
などと言っています。
最後に教会のシスターと神父様の話を聞きました。
「近ごろよからぬ噂が流れていますが、そのような噂に惑わされてはなりません」
「白い竜は、単なる言い伝えに過ぎないと、お城の学者様はおっしゃっています」
「邪教の神殿は、はるか古の時代に神々が封印した神殿です」
「とても我らの手に負える代物ではありません。くれぐれも近づかないように」
と、おっしゃっていました。
そして教会を出たフレディアたちは、王妃様の姿を元に戻すため、お城へと向かいました。




