第四十一話 ロファの街へ
「え~~~~っ!」
「そ、それじゃ、ここの皆とロファの街へ行っちゃったの?」
「どうしょう、フレディア!」
カーナは青い顔をしてフレディアに尋ねました。
「信じられない行動を取るわね・・・。あなたの神様・・・」
「うえ~~~ん!」
カーナはとうとう泣き出してしまいました。
「そうだ!!オレはこんな所でグズグズしてられねえんだ!!」
「早くシンバの兄貴たちの所に行かねえと!!」
そう言うとドッヂは急いで外へ出て行きました。
が、また直ぐに慌てて戻って来ました。
「ロファの街って、町を出てどっちの方向へ行けばいいんだ?」
「うへっ、うへっ、うへっ・・・。実は、このオレ様はロファの街へはまだ行ったことがねえんだ!!」
「おめえら、どうせそのネコを捜しにロファの街まで行くんだろ?」
「何だったら、このオレ様が連れて行ってやってもいいぜ!!」
「ロファの街へ行く途中の峠越えは、魔物がたくさん出て危険だって話だからな」
「うへっ、うへっ、うへっ・・・・」
「あんたがそばにいる方が、危険だと思うけど・・・」
「だけど、力だけはありそうね?」
「どうするカナちゃん? ロファの街までこの変な人を連れて行く?」
「え~~~っ!この人をですか~?」
カーナは露骨に嫌な顔をしています。
「大丈夫かな?この人、ちょっと変態っぽいし・・・」
「いきなりあたしたちを襲って来たりしないかな?」
「あっ!それは絶対大丈夫!!わたしが保証するわ!!」
「えっ?絶対に大丈夫って・・・。どうしてそんな事が分かるの?」
「だってこの人、女の子に興味がないっていうか・・・」
「シンバっていう人以外には、ぜんぜん興味がないから!」
「すご~い、フレディア!!さすがに愛のキューピットね!!」
「見ただけでそんな事まで分かっちゃうんだね!!」
「あたし、フレディアの事、ほんと尊敬しちゃうわ!」
「キャハハ! ま、まあね!!」
(わたしがやったなんて、口が裂けても言えないわ・・・)
と言う訳で、ドッヂを連れて行く事になりました。
「わたしたちに迷惑をかけないのなら、一緒に連れて行ってあげる!」
「おっ!そうか、じゃあ一緒に行ってやるぜ!」
「けどよ、おめえらオレ様に惚れるなよ!なにしろ、オレ様にはシンバの兄貴っていう愛しい人がいるんだからな!」
「うへっ、うへっ、うへっ・・・・・」
(あぁ、頭がズキズキしてきたわ・・・)
ミントの町からロファの街までは、徒歩で十日ほどかかる長旅になります。
そのため、フレディアたちは旅費を作るため、ギルドへ魔物を換金しに行きました。
そしてギルドの前まで来ると、フレディアはドッヂにここで待つように言いました。
「あんたが来ると面倒だから、中に入っちゃダメよ!」
「うへへ・・・。Bランクのオレ様が中に入りゃ、もてなさない訳にいかねえからな!」
「時間の無駄って言いたいんだろ?それぐらい分かっているぜ!」
「うへっ、うへっ、うへっ」
「はい、はい、じゃあ、そこで待っててね!」
フレディアとカーナがギルドに入ると、中にいた冒険者が全員で大声を上げました。
「「「あ~~~~~~っ!居た!!」」」
「ギョッ!」
驚くフレディアたちの所へ、ギルドマスターのパルコスが猛ダッシュで駆け寄ります。
「お、お前たち、一体どこに居たのだ?!」
「えっ?ど、どこって・・・」
「ギルドの冒険者を総動員して捜していたんだぞ!」
「あ、あたしたち、何かやっちゃいました?」
不安そうに聞くカーナに、ギルドマスターが捜していた理由を説明してくれました。
何でも王様の后までもが、動物の姿に変わってしまったらしく、それでいま国中におふれを出して、元の姿に戻す事の出来る者を捜しているそうです。
そんな時、フレディアとカーナが、動物と入れ替わった人たちを治して回っていると言う噂を聞き、ギルド全員で二人を捜していたのでした。
「で、その噂は本当なのだろうな?」
「あぃ」
「そうか!では、そう言う訳だ!お前たち急いでロファ国王の所へ行ってくれ!」
それを聞いたカーナは、ホッと胸をなでおろして返事をしました。
「分かりました!あたしたちも、ちょうどロファの街まで行く所だったんです」
「それで、旅費が無いから、狩った魔物を換金してもらおうと思って、ここに来ました」
「よし!分かった!」
「すぐに換金するから狩った魔物を出してくれ」
「ラジャー!」
フレディアはギルマスの言葉を聞くと、魔法のマジックアイテムに手を突っ込み、中から魔物を引っ張り出し始めました。
「えっ!ちょっとフレディア、それは!!」
カーナが止める間もなく、巨大なヨルムンガンドの頭がニュッと出てきました。
「うわっ!待て、待て、待て、待て~~~!!!」
ギルドマスターが大声で怒鳴りますが、もう手遅れです。
魔法のマジックアイテムから出て来たヨルムンガンドは、ホールを埋め尽くす勢いで流れ出てきました。
「「「うわ~~~っ!!」」」
「「「きゃ~~~っ!!」」」
「「「ひえ~~~っ!!」」」
部屋の中にいた冒険者たちは、悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らしたように逃げ出します。
中には逃げ遅れて押しつぶされそうになっている冒険者もいて、もうホールの中はパニック状態となりました。
「こら~~っ!早くそれを仕舞わんか~!!」
ギルマスに怒鳴られたフレディアは、慌ててヨルムンガンドを魔法のマジックアイテムの中に戻しました。
「お、お前ら!一体なんちゅう物を狩ってきたんじゃ~!!」
「ギルドをつぶす気か~!!」
ギルドマスターは、頭から湯気を出し、カンカンになって怒っています。
フレディアは慌てて魔法のマジックアイテムの中に隠れようとしましたが、カーナに服を掴まれ逃げそこなっています。
ひっくりこけているフレディアを見て、ギルドマスターはこめかみを指で押さえながら、大きくため息をつきました。
「とにかく、それは倉庫の方へ預けてくれ、清算は後からしておくから!」
そう言うとギルドマスターは、カーナに1000ゴールドを渡しました。
「それと、これを俺の責任で渡しておく」
「この方がお前たちの旅もやりやすくなるだろう」
そう言うと、二人にBランクのバッチと認定証をくれました。
バッチの色は同じ銀色ですが、二人は大喜びでさっそく胸に着けています。
「それと、ちょっと気になったのだが・・・」
「ギルドの外にいるのはドッヂの野郎だろ?お前たちがチームに入れたのか?」
「違います!ちょっとロファの街まで連れて行くだけです!」
カーナが即座に答えました。よほど仲間と思われるのが嫌なのでしょう。
「そうか、あいつはBランクの冒険者だが、頭のネジが一本緩んでいるからな・・・」
「とにかく気を付けて行くんだな!」
「まぁ、お前たちなら大丈夫だろうけど・・・」
「キャハハ!」
「ラ、ラジャー!」
(ネジが一本緩んでいるって・・・。わたしがその緩んだネジをぶっ飛ばしちゃった!?)
(こりゃ、たいへんだわ・・・)
ギルドを出たフレディアたちは、旅に必要な物をどっさり買い込みました。
買い物中は、ドッヂにアメ玉を渡すと大人しくしていたので、ゆっくりと買い物が出来たようです。
そして町の外へ出ようとした所で、誰か向こうからこちらに手を振る人がいる事に気付きました。
よく見ると、何と!それはハンクでした。




